第三十七話 アイリスとセレスティア
アーサー「いやいやいやいや、待て待て待て待て!!!!」
セレスティア「冒険者になるって............それは流石に無理があるのでは!?!?」
アーサーとセレスティアが慌てた様子で反対する。
それもそうだ。
プエルグラトゥス王国の王侯貴族は男尊女卑の思想が根強く、ヴァレンティア家などの例外を除き、基本的に女性が前に出て戦うことは良しとされていない。
政務や軍務などの仕事も主に男性しか採用されず、女性は官僚になることはできない。
冒険者など以ての外。
策謀渦巻く貴族社会で名誉は命。
決して目立った行動をしてはならない。
これは別に初代国王がそう定めたわけではないのだが、時代と共に貴族社会の腐敗が進んでこうなった。
ーーーーーーーーだが二人が心配しているのはそこじゃない。
ぶっちゃけ冒険者業で傷つく名誉程度ユースティティア皇族の皇太子とヴァレンティア家の力でねじ伏せられる。
セレスティア「はっきり言いますけれど、あなた回復しかできないのですよね!?
冒険者パーティが減ってきているこのご時世、一人で戦えない人間が冒険者業でどうやって生き抜くつもりです!?」
アーサー「俺のパーティだって今や魔界遠征騎士団第二部隊に所属する立派な軍人だぞ!!」
セレスティア「待ってください!!
なんでそんなことになってるんですか!?」
強烈なツッコミ。
やっぱりこれが無きゃね。
にしても..........アーサーが発言するまでちゃんとアイリスにツッコんでたのに、アーサーのせいでグダグダに..................
アーサーは平然と答える。
アーサー「え...........前に言わなかったか?
ウチの軍で鍛え直してるって。」
セレスティア「まさかそのまま正式に入隊したんですか!?」
いや........そりゃビックリするわ。
なんで軍に所属してんだよ。
アーサー「いやぁ...........アイツらも最初は嫌がってたけど今はやる気満々でなぁ〜」
セレスティア「そういう問題じゃありません!!」
やっぱりこのコンビいいよね。
そうこうしているうちにアイリスが困惑した様子でセレスティアに問う。
アイリス「え...........セレスティア様とエイトさんは......パーティ組んでいないのですか?」
セレスティア「一時的に臨時パーティは組みましたけど........もう解散してますよ!
ここへは偶然会ったから一緒に依頼を受けて来ただけです!!」
そうだよね。
どうせ君はこの後エイトじゃなくてアーサーと組みたいんだもんね。
エイトとパーティ組む可能性低いもんね。
いやぁ.............恋だねぇ。
アーサー「おいおいセレスティア、お前だってダンジョン攻略とか依頼の受注とかどうするんだよ?
エクリプスを攻略したとは言え、エクリプスの首を持ち帰れなかったお前はSランクの魔物討伐任務を受けられない。
エイトと組んで支援魔術の恩恵に預かりながら功績を出してギルドの信用を取り戻すのが無難じゃないか?」
エクリプス戦のクリア条件はいくつかある。
エクリプス戦の制限時間はジャスト2時間。
それまでに2回以上攻撃を当てれば制限時間終了後にエクリプスに讃えられ秘宝を受け取ることができる。
その前にエクリプスが戦闘続行困難になるほどの攻撃を与えるか、エクリプスを絶体絶命の状況に追い込むかのどちらかの条件を満たせばその時点で戦闘は終了、エクリプスは降参し、エクリプスから秘宝を受け取ることができる。
無論、エクリプスを殺しても85層クリアが認められ、秘宝はクリア者に強制的に取り付けられる。
だがしかし、エクリプスは降参までの判断が速すぎるのでエクリプスを殺すには一撃で絶命させることが必要となる。
エクリプス戦の攻略時間は、冒険者がSランク昇格試験の受験を受注した時点でエイトもストーキングに使ってた映像魔術にてモニタリングされるので誤魔化しは効かない。
Sランク昇格試験の真の合格条件は、5分以内............誤差も含めて実質5分20秒以内にエクリプス戦を制することである。
この条件を満たした冒険者にはエクリプスの秘宝を所有し、武具であれば装備することが可能になる。
これが、冒険者には明かされない、ギルド職員のみが知る裏ルール。
当初は普通にSランク昇格試験要項の張り紙にも普通に書かれていたのだが、エクリプスはあまりに強すぎてどんな天才もエクリプスの鎧にヒビを入れるだけで精一杯。
それに違和感を抱いたギルド側が真の条件をクリアした冒険者に探りを入れたところ全員が、世界最強の戦闘民族の国フォルティトゥード・イプサ・ユースティティア皇帝国の皇族だったことが判明。
またお前らか!!!
故にそれ以降は真の条件は冒険者に伏せられ、どんな状況であっても秘宝を手に入れることさえできれば名目上は合格となり、冒険者カードだけはSランク表記に変えることになっている。
しかし冒険者の生命の保全の観点から、真の条件をクリアしない限りSランク任務の受注は制限される。
セレスティアは2時間全部使い切ってるが..........意外と時間かかったなぁ。
一応言っておくと、セレスティアの実力が大したことがないというわけではない。
Sランクの敷居が理不尽に高すぎるだけである。
セレスティア「甘いですね、冒険者ギルドは厳しいですよ?
支援魔術込みで功績を出したところで信用が得られるわけではありません!
ーーーーーーー私、あなたと組みますから!!」
アーサー「えぇ!?なんで!?」
“なんで”じゃねぇよ!!
いい加減気づけ!!
セレスティア「か、格上の冒険者と組んで知見を広め、真にSランクだと認めてもらうためです!!
AランクとSランク以上とではモンスターのタイプも戦い方も全然違うでしょう?
よ、要は初心に帰って学び直すんです!!」
セレスティアは照れながらそう言った。
でもアーサーと組みたいだけだよね、君。
アーサーは納得いかない様子だった。
アーサー「うーん.............そうか?
まぁいいや。
そう言うわけだ、アイリス。
他の冒険者と共同で任務を受けることもできるが............まぁやればわかるけど正直歓迎されないと思うぞ?」
アイリスは一歩踏み込む。
その瞳は真っ直ぐで純粋だった。
アイリス「それでも............決めたんです。
このままじゃ駄目だって。
このまま家の中に篭って、家族に甘やかされながら過ごしても、私は自分一人で何もできない人間のまま。
それに.......................................私、実はエイトさんのこと好きなんです!」
アーサー「うん知ってる。」
セレスティア「クラウンタルトの件で私も察してました。」
ギデオン「使用人一同、そしてお父上も皆気づいておられましたよ。
もちろん、この私も。」
まさかの即答。
ちなみに驚いているのはエイトだけである。
エイト「ぼ、僕!?
い、いや.........でも僕.......初めてはアーサーさんに...............」
アーサー「やめろ!!それ以上言うな!!!!」
今日イチ恐怖しているアーサー。
うん、マジで気持ちはわかる。
アイリス「わ、分かってるんです.......無謀だって。
エ、エイトさんはセレスティア様が好きなんですよね..........?
わ、め、女神さまみたいに綺麗で........女性らしい雰囲気なのに凛としていて、魔神にも立ち向かえるほど勇敢で..............剣も魔術もすごく強くて............私じゃ、きっと勝ち目はないと思います。
でも私、ここで諦めたくないんです!
そう思えるほどに大好きで..........どうしても振り向いて欲しくて....................
だから決めたんです!
わ、私、戦います!
セレスティア様に勝って、エイトさんを振り向かせてみせます!」
セレスティア「ア、アイリス様........あのーーーーー」
アイリス「わ、私決めたんですから!
何を言われても絶対に譲りません!
あ、相手がセレスティア様でも絶対負けませんから!」
ヒュゥゥゥゥ..............
アイリスが言い切った瞬間、冷たい風が吹く。
全員黙り込み、気まずそうに佇んでいる。
しばらくして、アーサーが口を開いた。
アーサー「あー...............アイリス?
多分セレスティアは..........恋敵じゃないと思うぞ?」
アイリス「........................え?」
セレスティア「というかそもそも.............仮にエイトさんが私を好きでも.........多分エイトさんは根本的にアーサー様命というか..........ま、まぁ恋情とは違うみたいなのでアイリス様がエイトさんを振り向かせる際障害にはならないでしょうけど............................アーサー様、逃げ切ってあげてくださいよ?」
セレスティアはアーサーを見る。
アーサーは困ったように言う。
アーサー「どうだかなぁ............まぁ善処するよ。
そこまで決意が堅いなら........まぁ...........エイトも一応戦えないわけじゃないし二人で冒険者やってみるか?」
そんなこんなで、アイリスは冒険者をすることになった。
いやぁ、まさか公爵家のお嬢様が冒険者になるなんて............ヴァレンティア家だけだと思ってた。
はてさて、どうなることやら。
作者です!
次回、エイト絡まれる!?
そしてエイトの意外な特技とは!
次回!!「第三十八話 社会人エイト」よろしくお願いします!




