第三十八話 社会人エイト
アイリスの冒険者登録が済み早数日、エイトとアイリスはパーティを組むことになった。
冒険者パーティには二つ種類がある。
適用期間を決めて一時的に組む臨時パーティと、期限を定めない正規パーティの二つがある。
臨時パーティは特に手続きをする必要はなく、ギルドの職員に組むことを伝えればその場で結成できる。
だが、その代わりパーティとして認められるの適用期間は最大24時間と非常に短く、更に一度組んだら臨時パーティが解消されてから48時間は同じ人間と組めないなどの制約もある。
その代わりマジで手続きが楽すぎるため、現在の冒険者は主に臨時パーティを組んで戦うのが主流。
これが前に言った“冒険者パーティが減ってきている”の実情である。
臨時パーティを組むには正規パーティに所属していないことが前提となるため、ほとんどの冒険者がソロなのである。
正規パーティは逆に書類による手続きによって正式に冒険者パーティとしてギルドに登録されることになる。
冒険者を追放する際は一部例外を除いて原則退職金を渡さなければならない、退職金の金額、パーティを組んでいる間のルールや破った際の罰則など、様々な規則がギルド側で定められている。
ちなみにエイトを追放した際、エイトがマッスル皇帝国の皇太子をめちゃくちゃストーキングするという、法に抵触するほど酷い、しかもストーキングの内容があまりにも一線を越えすぎていたため、エイトが追放される時は退職金とか渡されていない。
それが、この説明が後回しにされた要因の一つである。
ちなみにエイトとアイリスはーーーーーーーーー正規パーティである。
パーティの人数は基本制限はない。
だが.................................現在Sランクまで行ったパーティからストーキングで追放されたエイトと明らかに弱そうなお嬢様のアイリス。
冒険者界隈の二人への風当たりは強かった。
冒険者A「見ろよアイツ.............“赤い獅子”の..........
パーティ組んだってよ。」
冒険者B「よりにもよって回復魔術師かよ...........」
冒険者A「組む相手がいなかったんだろ。
ただでさえ支援魔術師..................それも、パーティから追放された支援魔術師だ。
あんな奴と組みたい人間なんて冒険者なりたての新人だけに決まってる。」
こちらはまだ良識がある方。
エイトを嫌ってもいないし見下してもいないけど、このご時世貴重な正規パーティから“役立たず”の烙印を押されて追放されたエイトに不信感を募らせている方々。
悪意はないので冒険者ギルドの中では、冒険者全体で見ても一握りの善人と思われてもおかしくない。
つまりどういうことかと言うとーーーーーーー平均的にはもっと酷い。
任務の要項が書かれた紙を持って受付に向かうエイトとアイリスを3人の冒険者が囲った。
ニックス「おいおいエイトくんよぉ!!!
ここはお前の居場所じゃないぜ?」
ブラッド「笑わせるぜ、『赤い獅子の金食い虫』がまだ冒険者続けてたとはなァ!」
バジル「聞いたぜ?
この前の依頼、戦ってたのはほとんど“白銀の剣姫”と“赤眼の剣鬼”だったらしいじゃねぇか!!
冒険者ギルド始まって以来の天才“赤眼の剣鬼”に、お前はずっとおんぶに抱っこされたまんまじゃねぇか。」
ニックス「お前にそんな美人勿体ねぇよ!!
俺たちがたっぷり可愛がってやるからさっさと寄越しな!!」
ブラッド「冒険者ギルドにお前の居場所なんかねぇんだよ!!
ついでに冒険者なんかとっとと辞めちまえ!!」
まぁ..............うん。
これが普通。
ちなみに“赤眼の剣鬼”はアルトリウスことアーサーの二つ名である。
普通なら何か返すところだが......................エイトはビジネススマイルを浮かべた。
エイト「いやはや、全くもってその通りですね。
皆様のご指摘痛み入ります。
僕は支援魔術師なので一刻も早く前衛の方と組みたいのですが、僕が至らないばかりに皆さんの信用を失ってしまい、この通り仲間探しに四苦八苦しています。
ですが僕は家の事情で冒険者を辞めるわけにはいかないので、ご容赦ください。
でも依頼を受ける分には問題ありませんよ。
今回の依頼、薬の配達ですから。
それと、正規パーティを組んだ冒険者パーティのメンバーを横取りするのは御法度。
お互いのためにここは何もなかったことにいたしましょう。」
そう、エイトは冒険者業におけるトラブル対応のプロである。
と言うのも、エイトは冒険者になってから今まで冒険者にこのように絡まれなかったことなど一度もなく、数々の修羅場を潜った猛者。
こういう時の対処はお手のもの。
エイト「行きましょう、アイリスさん。」
アイリス「えっ...........でもッ.........!!」
エイト「僕は大丈夫ですから。」
困惑するアイリスに構わず、エイトは彼女の手を引いてその場を去ろうとした。
だがーーーーーーーアイリスはエイトの手を振り払い、ニックス達に向き直る。
アイリス「エ、エイトさんに謝ってくださいッ..........!
エイトさんはあなた達よりずっと強いんですから!!
それに、襲撃の時もちゃんと戦ってました!」
そうなんだよね、3人くらいは倒していたんだよね。
敵の99%以上を倒したのがガウェイン・マルクス・カストル・アーサーの四人、マッスル皇帝国の筋肉ブラザーズ+セレスティアだっただけで。
でもここで騒ぎを起こすのは御法度だぞ〜?
エイト「ア、アイリスさん!?何をッ..........!」
エイトは慌ててアイリスを止めようとするが、アイリスは引かなかった。
アイリス「だ、だって.........こんなの許せませんッ........!
エイトさんだって強いのに...............
エ、エイトさんが戦えば........................」
エイト「.........アイリスさん.........気持ちは嬉しいんですけど........................冒険者同士で戦うのは御法度なんですよ。」
そう、御法度なのである。
Sランク以上の冒険者が評価が下がったパーティにいることができない規則ができる原因となった事件と全く同じ事案が原因。
エイト「昔Cランクパーティのリーダーだった人が、自分が追放した冒険者が立ち上げた当時プエルグラトゥス王国最強だったSランクパーティのメンバー全員を病院送りにしちゃって..............................その時、トラブルが起こった場所一帯が瓦礫だらけになっちゃって........あまりに被害が出すぎたからプエルグラトゥス王国の法律でそう定められたんです。
もし破れば罰則どころの話ではありませんよ!」
ちなみに、Sランクパーティを一網打尽にした男の名はダリオス・フォルティトゥード・ユースティティア。
当時は皇太子だったアーサーの父親である。
マジでどこにでも現れるなユースティティア家。
アイリス「す、すみません.........私、知らなくて..........」
エイト「大丈夫です、知らないことは僕がいくらでも教えますから!さぁ行きましょう!アイリスさん!」
エイトはアイリスを連れながらニックス達に笑いかける。
エイト「申し訳ありません!
この子少々世間知らずでして!
大目に見てやってください!
アハハハハ..............................」
そう言って、エイトは今度こそ受付に向かった。
作者です!
次回はなんと新ヒロイン登場!!
何事もなく無事依頼を終えられるのか〜??
次回!!「第三十九話 アルム村の少女」よろしくお願いします!




