第三十五話 ようこそ地獄へ
フォルティトゥード・イプサ・ユースティティア皇帝国。
かつて北の大地に降り立った戦神へファイストスとその弟達によって興された国。
へファイストスの直系の子孫であるユースティティア皇族が支配し、神話の時代からずっと滅亡を迎えていない生きる超古代帝国である。
神の遺伝子は通常と違い、人間と交わろうと薄まることはない。
正確に言えば一時的に薄まることはあるが、その後神の遺伝子はゆっくりと人間の遺伝子を侵食し、とどのつまり癌細胞のような増え方をする。
肉体には一切害はないが、それ故子宮から出て産声を上げる頃にはもう純粋な神になっている。
これが、ユースティティア皇族含むフォルティトゥード民族が数万年の時を経ても永遠に最強たり得る最大の原因である。
つまりどういうことかと言うと............................................
ザルヴァード「さぁ!!今日も筋肉生活始めるぞ!!!!
とりあえず我が国の国境20周だ!!
行くぞォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」
隊員総員「「「応ッ!!!!!!!!」」」
ーーーーーーーーーーーーフォルティトゥード・イプサ・ユースティティア皇帝国の軍の訓練が人間レベルまで落とされる日は、永遠に来ないということである。
そう、永遠に。
ちなみに爽やかな笑顔で「国境二十周」などと抜かしたこの爽やか筋肉の名前はザルヴァード・アイゼン・アルヴェリオン。
代々騎士(という名の人外戦士)を輩出する剣術の名家アルヴェリオン大公家の長男である。
代々騎士を輩出する家系であること、独自の武術を編み出している、誇り(脳筋根性論)を重視するなどの共通点があるため北のヴァレンティア公爵家と呼ばれてるけど、本当にヴァレンティア公爵家と並べないで欲しい。
代々騎士を輩出する誇り高き剣術の名家と、ただでさえヤバすぎる戦闘民族の中でも頭ひとつ抜けてヤバい戦闘力を持つ人間の姿をした何かを代々輩出する由緒正しき脳筋の名家は別物だろ。
そんなアルヴェリオン家はヴァレンティア家との交流が長く、代々ヴァレンティア公爵家の当主は必死にゴマを擦って使用人のように甲斐甲斐しく接待しているが、歴代アルヴェリオン家当主は「なんでそんなに遠慮がちなんだよ、友達なんだからタメ口で話そうぜ!!」などと、爽やかな笑顔でとんでもない無茶を言う。
フォルティトゥード・イプサ・ユースティティア皇帝国とプエルグラトゥス王国では国力も国の歴史も国際的地位も天と地ほどの差があるのに誰も気にしない。
それがフォルティトゥード民族である。
ザルヴァード「やぁリチャード!!!!久しいな!!!!!
元気だったかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?!?!?」
マジで爽やかなんだよな、爽やかなのになんだこの声量。
拡声器使わないでこれはもう恐怖しか無いんだが。
リチャード「ザ、ザルヴァード大公子殿下........ご無沙汰しております.................。」
なんでアーサーにも食ってかかったリチャードがザルヴァードには敬語を使うかって?
昔ザルヴァードにタメ口を使って、リチャードの父ロドリックにめちゃくちゃこっ酷く怒られたからである。
だが、今リチャードは早くもアーサーに突っかかったこと、そしてクラリスに暴行を加えたことを死ぬほど後悔しつつあった。
ザルヴァード「お前は俺たち戦闘民族とは身体のつくりが違うからな!!!
軽めにしておいたぞ!!!!」
リチャード「か、軽めとは..........?」
リチャードは恐る恐る聞く。
返答を聞く前に、リチャードの脳に凄まじい不安が押し寄せた。
ザルヴァード「皇都20周だ!!!」
ちなみに、マッスル皇帝国はデカい。
皇都だけで一周100kmはあり、国を囲う国境ともなればその100倍は長い。
リチャードは...............................絶句した。
この世の終わりとでも言うかのような愉快な顔をしていた。
その後、リチャードは必死にザルヴァードに頼み込みなんとか500kmで許してもらった。
だがーーーーーーーーーーーー逆に言えば、それ以上は減らしてもらえなかったということである。
走り込みを終えたリチャードは激しい眩暈と喉の痛みを覚えて地面に倒れ込む。
意識は朦朧とし、視界が白黒する。
頭には激しい痛みが絶えず襲ってくる。
脱水症状と熱中症で死にかけたが、
ーーーーーーーーー気づいたら体調が戻っていた。
ザルヴァード「さぁ!!!次は筋トレだ!!!!!
この錘(5000kg)を20個つけてもう一回同じ距離走り込みだ!!!
あ、リチャードはこの一番軽い錘(100kg)でいいぞ!!!」
休憩は、ない。
ちなみにこの後は腹筋・背筋・腕立て伏せ・スクワットその他筋トレ各種5万回ずつ、リチャードは500回ずつやらされた。
リチャードは......................灰になった。
それもそうだ。
と言うか、最初の走り込みの時点で限界だったのだ。
フォルティトゥード・イプサ・ユースティティア皇帝国がある北方地域は魔王城に近いため魔素が濃い。
故に、皇帝国の皇都の外に出ただけでもプエルグラトゥス王国の冒険者ギルドが対応するモンスターとは比較にならないレベルのモンスターがわんさか出る。
国境にも無論出るので、プエルグラトゥス王国の北部のモンスターは主にSランク以上の冒険者ーーーーーーーーーーーその中でもマッスル皇帝国産の歴代脳筋ロイヤルブラザーズしか依頼を受けることはできない。
故に同じSランク冒険者でもSランクだった頃のユースティティア三兄弟とセレスティアとでは受けられる依頼の自由度が桁違いで、実はセレスティアはSランクだがSランク任務は受けられない。
つまり冒険者ギルドでセレスティアは、実質的にAランクの扱いになる。
故に冒険者ギルドでは、”SランクとAランクの間にはDランクとAランクの差異とは比べ物にならないほどの格差がある“と言われているのだ。
格差っていうか......................比べちゃダメじゃね?
そして、そんな人外しか対応できないようなモンスターを狩りながら走るのが皇帝国軍の”走り込み“である。
リチャードには支援魔術が施された。
だが走るのに使う筋肉には支援魔術が施されていないのと、そもそもモンスターを狩りながら走ること自体がイカれてることもありリチャードは何度も三途の川を見ることになった。
ザルヴァード「よし!!次は武術の鍛錬だ!!!
木剣を持て!!」
ザルヴァードがいい笑顔で言う。
リチャードは目に涙を浮かべながら憔悴しきった顔で、プルプル震えた腕を伸ばしながら、掠れた声で言った。
リチャード「きゅ、休憩............は..............」
ザルヴァード「何を言っているんだ?そんなものはないぞ!」
リチャード「そ...............そ、んな.....................」
頑張れリチャード!!!
これがお前の罰だ!!
作者です!!
次回からはエイト&アイリスのターン!!
二人の恋模様はどうなる!?
次回!!「第三十六話 アイリスの決意」よろしくお願いします!!




