第二十七話 オフィーリアの初恋3
オフィーリアとカストルの出会いから1年後ーーーーー
プエルグラトゥス王国の王宮で、実に10年振りとなる舞踏会が開かれた。
表向きの目的はただのパーティ。
裏の目的は王太子の婚約者探し。
だが本当の目的は、
ーーーーーー皇太子教育を終えたアーサーの完璧皇太子っぷりを自慢したいというダリオス皇帝のご機嫌を取るためである。
それ以上でも以下でもない。
無論ダリオスがオーレリアンに舞踏会を開くよう指示した訳ではない。
ダリオス「いやー、うちのアーサーはどこに出しても恥ずかしくない立派な皇子でな!もっと大っぴらに見せびらかしたいくらいだ!!アーハッハッハ!!!」
この何気ない一言だけで舞踏会の開催が決まったのだ。
ほんと.......つくづくマッスル皇帝国のデカさを思い知らされる。
会場の規模、装飾、大きなシャンデリア.......何もかもが公爵邸や他家で開かれるパーティとは格が違いすぎた。
初めての王宮での舞踏会に、オフィーリアの弟や妹達は胸が踊っていた。
だがーーーーオフィーリアだけが悲しそうな顔をしていた。
オフィーリア(7歳)(はぁ........あの時私を助けてくれたカストルって人、きっと貴族じゃないわね.........。
だって、貴族の人たちは剣術の鍛錬を厳しく禁止しているもの。
今回の王太子妃争い、五大公爵家のうち一つオルセリア家の令嬢である私は参加させられる。
.......公爵令嬢として、オルセリア家の人間として、家のために行動しなければいけなくなる前に、もう一度カストル様に会いたかった.........)
叶わぬ恋、か。
泣かせるねぇ............
ジュースを飲みながらそんなことを考えているとーーーーー
エルリック「ーーーープエルグラトゥス王国!
国王オーレリアン・グラディオ・ディレクトゥス!
王太子レオンハルト・グラディオ・ディレクトゥスご入場!!」
その声を合図に、 会場の扉が重々しく開く。
国王オーレリアン・グラディオ・ディレクトゥス。
王太子レオンハルト・グラディオ・ディレクトゥス。
プエルグラトゥス王国を代表する2人だ。
それに続き、5人の令嬢が玉座へ近づく。
シルヴェール公爵家アイリス令嬢、
ヴァレンティア公爵家セレスティア令嬢、
クロムウェル公爵家のリリスティアーナ令嬢、
ノスフェラトゥ公爵家のベアトリクス令嬢。
そしてーーーーー私。
何の因果か、五家全てに王太子と歳が近い令嬢がいた。
理由はともかく、プエルグラトゥス王国の国王の玉座は通常とは異なり、大階段から対象的な位置にある。
だがーーーーーーー
アイリス(7歳)「あ、ああああのっ........!
そ、その.........し、ししシルヴェール公爵家のーーーー」
レオンハルト(6歳)「チッ.......聞こえねぇんだけど?」
オフィーリア(7歳)(アイリス嬢の言葉を遮った挙句睨みつけた!?)
そう、レオンハルトはアーサー以上のくそがき
セレスティア(5歳)「国王陛下、王太子殿下にご挨拶申し上げます。
私はヴァレンティア公爵家のーーーー」
レオンハルト(6歳)「フン!!剣なんか握る野蛮な女に興味はない!!」
オフィーリア(7歳)(幼い身でありながら国家防衛のために尽力してくださってる素晴らしいご令嬢でしょう!?)
オフィーリアって恋すると盲目なだけで普通に子供離れしてんだよなぁ........
オフィーリア(何あの子!!態度悪すぎじゃない!!
あの時、カストル様に散々嫌な態度を取ってたアーサーって子よりムカつく!!)
そりゃ.....アーサーは甘やかされて育っただけのただの天使だから..........本家本元の糞ガキとはわけが違うから.......
オフィーリア(7歳)(心無しか......顔もあの子より憎たらしい........)
それは顔面偏差値の格差だね!
全然気のせいじゃないね!!
そして、ついにオフィーリアが挨拶する番となった。
屈辱と憎しみをグッと抑えつつ、7歳にしては見事なカーテシーをしながら、怒りを堪えた声で挨拶をする。
オフィーリア(7歳)「お初にお目にかかります。
私の名はオフィーリア・ド・オルセリア。
オルセリア公爵家の娘です。
王太子殿下におかれましてはご機嫌麗しゅう..........」
レオンハルトは不貞腐れた顔で吐き捨てた。
レオンハルト(6歳)「ハッ.........父上には挨拶しないんだな。
公爵家の娘とは言え、俺に気に入られようと必死に媚びを売るその醜悪な態度は他の令嬢と変わらないな。」
うわっ.......イタい...........
6歳児にして完成されてる........
オフィーリア(7歳)(..........コ ロ ス)
この時のオフィーリアの目は、おそらくガチの暗殺者よりもスゥッと肝が冷えるような悍ましい殺意を秘めていた。
その圧は、皇太子モードのアーサーに迫る。
そう。
この時のオフィーリアは人生最大レベルでブチ切れていた。
その時。
ロドリック「静粛にッ!!!」
突如、優雅な舞踏会会場に似合わぬ怒号が空気を切り裂く。
エルリック「フォルティトゥード・イプサ・ユースティティア皇帝国より来訪!!
第467代皇帝ダリオス・フォルティトゥード・ユースティティア陛下!!
皇位継承権一位!!
第四皇子アーサー・フォルティトゥード・ユースティティア殿下の御成である!!
皆の者!!
伏して控えよ!!」
それを合図に全員会話を止め、大階段のすぐ上に堂々と置かれた玉座の方へ跪く。
足音が、入口の方から聞こえる。
会場の入口から近づき、大階段を登り、そして.......足音が止んだ。
しばらくしてーーーーー
アーサー(6歳)「ーーーーー皆の者、面を上げよ。
楽にせい。」
氷河のように冷たく、そして刃のように鋭い声が、会場の空気を重々しく振動させた。
ただ、声が聞こえただけ。
それなのに、オフィーリアは幼ながらに、まるで魔王を相手にしているかのような凄まじい威圧感を感じた。
体が鉛になったかの如き重圧で、呼吸が苦しくなる。
心臓が早鐘を打つ。
震える身体を抑えながら顔を上げるとーーーーーそこには、深緋色の瞳の少年がいた。
天使の如き純粋さを感じさせる瞳からは、今はただ途方もない底知れぬ恐怖を感じる。
殺意や悪意、或いは敵意すらも滲んでいないのに、ただただ凄まじい威圧感がある。
くるくるとよく変わる表情からは、今はもう何も見えない。
どこからどう見ても、見た目だけはオフィーリアがあの日に会った”アーサー”という少年だった。
だが、雰囲気はどうしても似ても似つかない。
そして、しばらくして他の皇族の面々が貴賓席へと移動して行く。
その中にーーーーーカストルの姿があった。
オフィーリア(7歳)(カストル様......!?)
そして、カストル達が座る。
そして、最初に挨拶をしたのは気品席に座っていた皇族や王族。
その次に挨拶をしたのはやはり五大公爵家だった。
アイリス(6歳)「あ、あの........その........わ、私は........シルヴェール公爵家の..................」
アーサー(6歳)「...........」
アーサーは口を開かない。
ただ、感情の読めぬ目でアイリスを見据える。
エルリック「ア、アイリス!!」
エルリックが小声で、だがもの凄い剣幕で急かす。
アーサー(6歳)「ーーーーー良い、エルリック。」
アーサーが止めた。
その瞬間、オフィーリアの腹の底からグツグツと煮えたぎるマグマのような怒りが上がってくる感覚を覚えた。
オフィーリア(7歳)(アイリス様の言葉を遮るなんてどいつもこいつも!!)
オフィーリア(7歳)「ちょっとーーーーー」
ガッ
オフィーリアの父が彼女の肩を掴んだ。
オフィーリア(7歳)「お、お父様........?」
クリストフ「オフィーリア.......止めろッ.......!!
我が国を滅ぼしたいか!?」
その声は小声でありながら、鬼気迫る剥離があった。
初めて見るほど必死な形相をする父に、オフィーリアは黙りこくった。
貴族の一員として、家が、国が不利になるような行動を取るわけにはいかない。
オフィーリアはグッと怒りを堪えた。
ーーーでもねオフィーリアちゃん、君も人の話は最後まで聞こうか。
アーサー(6歳)「ーーーー久しいなアイリス。
其方の元気そうな顔を見れて我は嬉しく思う。
エルリックも、息災で何よりだ。
今宵は楽しんで参れ。」
アイリス(6歳)「は、はい.........!」
エルリック「殿下からお言葉を賜り至極光栄でございます!!」
お前6歳児だよな?
そしてオフィーリアが挨拶する番が回ってきた。
オフィーリア(7歳)(ハァ........気が重い....)
嫌われたねぇ.......
だが、嫌悪感を押し殺しつつもオフィーリアは見事なカーテシーをみせた。
”意地悪で皇帝だけに挨拶してみよう”.........そんなことを考えたオフィーリアだったが、アーサーの目を見た瞬間そんな考えは消え失せた。
”この男に逆らってはいけない”
ーーーーーーオフィーリアの脳がそう叫んでいるような、圧倒的な威圧感を感じた。
オフィーリア(7歳)「........帝国の偉大なる太陽、そして帝国の小さき太陽にご挨拶申し上げます。
私はオルセリア公爵家のオフィーリア・ド・オルセリアと申します。
殿下、そして陛下の麗しいご尊顔を拝謁できて至極光栄でございます。」
お前7歳児か?
アーサー(6歳)「うむ。一年以来だなオフィーリアよ。
我が兄カストルが世話になった。
積もる話もあるだろう、バルコニーで夜風にでも当たりながら少々話してきたらどうだ?」
アーサー(6歳)(あにじゃの”れんあい“をおうえんするのだ!!)
うん、中身はちゃんと6歳児だね。
安心安心。
カストル(9歳)「アーサーよ、俺は別にオフィーリア嬢と親しいわけではないぞ?
話をしろと言われても彼女も困っておるだろう。」
キング・オブ・鈍感。
もはや芸術の域である。
するとアーサーは急に幼児の顔になった。
瞳には涙が溜まり、そしてーーーーーーーー
アーサー(6歳)「ヤダヤダヤダヤダ!!!お話するのーーーーーー!!!!」
ルシウス(2歳)「あにうえ!!ぎょうぎわるいでちゅよっ!!!」
ーーーーーー駄々を捏ねた。
この頃からすでにルシウスの苦悩が始まる。
その後の会話はまぁ.......そのうち。
作者です!!
オフィーリアとカストルをくっつけようと頑張るアーサーくん!!
時は戻り現在!!
オフィーリアを取り巻く婚約事情はどうなるか!?
次回!!「第二十八話 オフィーリア婚約騒動1」よろしくお願いします!!




