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第二十五話 オフィーリアの初恋1

王宮の一室にて。



そこには、アーサーが座っていた。



そう、以前のパーティでのレオンハルトの態度に対する謝罪である。



本当はダリオスも招待されたが、ダリオスは政務が忙しく既に帰国していたため、アーサーだけが来訪した。



彼は魔王をも凌ぐ覇気を纏い、用意された席に重々しく鎮座していた。



胸を張り、顎を引いている。


尊大さを感じさせぬ姿勢で国王達一行を真っ直ぐ見据える瞳には、一切感情が見えない。


怒りも、苛立ちも、嫌悪も........だが、遠慮や申し訳なさも見えない。


国王達の謝罪を一蹴するのか、それとも「いやいや頭を上げてください」と笑って言い出すのか、どちらに転ぶか全く読めない。


だがその瞳は、凍てつくような冷たさと刃のような鋭さ、そして底知れぬ威圧感を感じさせる。


気を抜けば首が刎ねられそうな錯覚を覚えるほど凄まじいプレッシャーが、国王達の両肩に重くのしかかる。


呼吸が乱れ、こめかみに汗が滲む。


指先が小刻みに震え、歯がカチカチと音を立てる。




一歩間違えれば国が滅ぶーーーーーそんな重苦しい緊迫感の中、国王オーレリアンが口を開く。




オーレリアン「こ、この度はッ..........」




保護者一行「「「「大変申し訳ございませんでした!!!」」」」



それぞれ自分の息子の頭をガッと押さえつけながら、見事に土下座をする王太子一味の保護者たち。

息子達はもがいているが、なかなかどうして、歳を感じさせぬ腕力の強さ。



オーレリアン「愚息の大変見苦しい愚行で皇太子殿下のお目を汚してしまい!!

心より!!心よりお詫び申し上げます!!」



エルリック「それどころか照明を操作して皇太子殿下達を霞ませようなど甚だ図々しい!!」



ロドリック「愚息がッ......大変な無礼をッ.........!!」



サミュエル「ず、図々しい願いであることは百も承知!!

ですが......何卒!!

何卒お慈悲を!!!」



オーレリアン「せ、せめて私の!!

私の首一つでご勘弁頂きたい!!

む、息子とこの国の民達だけは!!

どうかお救いくださいませ!!」



相変わらずビビられてるねぇ.........


舞踏会でアーサーがちょっと不機嫌になっただけでこの有様。


もはや芸術である。


やはりマッスル皇帝国はデカかった。


しばらく、アーサーは無言で床で土下座する国王達を見下ろした。


その瞳には、相変わらず感情が見えない。


しばらくして、アーサーは静かに口を開いた。




アーサー「ーーーーー面を上げよ。

座れ。」



その言葉を合図に、国王達はゆっくり立ち上がり、息子達は解放される。


ーーーーーその瞬間、4人は勢いよく立ち上がった。




レオンハルト「皇太子だからと偉そうに!!」



リチャード「俺たちの方が歳上なんだぞ!!」



イザーク「あなたはまず目上の人に対するーーーーー」



アーサー「ーーーーー黙れ。誰が喋って良いと言った?」




その声は、舞踏会でアーサーがレオンハルトに忠告(?)した時よりも遥かに低く、遥かに冷たく、そして恐ろしかった。


その瞳から、死神の如き凄まじい殺気が放たれる。



アーサー「我はフォルティトゥード・イプサ・ユースティティア皇帝国の皇太子であるぞ。

分を弁えよ。

次同じ過ちを犯したら不敬罪に処す。」



レオンハルト「ア、アリアに謝...........ヒッ!!」





俯き、拳を震わせたレオンハルトが顔を上げた瞬間ーーーーーーアーサーと目が合う。



魔王すらも遥かに超える威圧感と底知れぬ恐ろしさを宿した深緋色の瞳を、まともに見てしまったのだ。


そのままレオンハルトは白目を向き、泡を吹きながら倒れた。


.........まぁ、実はこれが普通の反応なんだよね。



国王達を見据え、アーサーは静かに、そして冷たい声で言った。



アーサー「安心せよ。

此度の件、そこまで気にしてはおらん。

其方らの謝罪を受け入れようぞ。」




うん....そうなんだよね。


本当はそこまで怒ってないんだよね。



オーレリアン「お、おぉ!!

あ、ありがとうございます!!

殿下の寛大な御心に心より感謝申し上げます!!」



嬉しそう.......


今日も国家滅亡免れて良かったね。




アーサー「ただ.......ひとつだけ訂正がある。」



その言葉を聞いた瞬間、国王の顔は再び恐怖に染まった。


震える声で、国王は恐る恐る聞く。



オーレリアン「て、訂正とは..........?」



アーサー「其方の息子は、オフィーリア嬢が其方の息子を好いた故にアリア嬢を虐げたと言っていたな。


だが、そもそもオフィーリア嬢は.........





ーーーーー我が兄カストル第三皇子を好いておるのだぞ?」



な..........なんだと!?


あの鈍感主人公(アーサー)が......恋愛を理解した!?






ーーーー王宮修練場にて




マルクス「セァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」



カストル「ハァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」





ーーーーーガキキキキキキキキキキキキキィンッ!!!




鋭い轟音が鳴り響く。


周囲には幾つもの火花が同時に現れ、銀閃が幾重にも重なる。


2人が動く衝撃波で巨大な旋風が巻き起こる。


彼らの動きは雷の如く。


軌跡を捉えることすら許されない。


見えるのは、燃え盛る炎のように赤く、そして太陽の如く眩い光を湛える無数の火花のみ。


剣の軌道と2人の動きが目で追えない故に、もはや修練場はいつ叩き切られるか分からない危険地帯と化していた。


なので、誰も立ち寄らない。


無論、修練場を壊さないよう、床から壁に至るまでアーサーが結界を張っているので、マルクス達が全力で戦っても壊れはしない。





ーーーーーだが。



マルクス「ーーーーむ!


カストル!!止まれ!!」




ふとマルクスが背後を振り返る。


同時にカストルも動きを止める。



カストル「どうした兄者?敵襲か?」



普通使用人とかだろ。


王宮に敵襲は滅多にねぇよ。




マルクスが振り返ると修練場の入口のところに少しだけ、月光のように美しい黄金の髪がチラッと見える。


その髪を見て、マルクスは悟った。




マルクス「いや.....あぁ、オフィーリア嬢だな。」



カストル「な、なんでわかったのじゃ....?」



カストルの声には困惑の色が滲んでいた。


うーん......鈍感主人公(アーサー)の兄だねぇ.....



マルクス「なんでってお主.....気づいておらんのか.........?」




カストル「.........?」



ほんとそっくり。


セレスティアのアーサーへの好意には気づいてるところまで含めて完璧。



そうこうしていると、オフィーリアが入口から姿を現した。



カストル「おぉ!!本当にオフィーリア嬢ではないか!!

こんなところにどうしたんじゃ?」



お前.....そりゃどう考えても........




オフィーリアは顔を赤らめながら、小さい声でおずおずと話す。




オフィーリア「あ、あの....わ、私.......こ、国王陛下に呼ばれてて.....み、道に迷ってしまって......その.......き、気づいたらここに..........」




この必死に言い訳する感じ。


セレスティアとはまた違う方向性だ。




カストル「おぉ!!オーレリアン殿なら我が弟アーサーが今会っとるはずじゃ!!

あっちじゃよ。」




カストルはそう言って王宮の一角を指差した。




オフィーリア「あ、あの.........」




オフィーリアは戸惑っている。


そうだよね。


君、本当はカストルに会いに来たんだもんね。




ルシウス「カ、カストル兄上!!

もう少しオフィーリア嬢と話してあげてください!!」



ルシウスが慌てて言う。



カストル「じゃ、じゃが....国王に呼び出されておるのなら急いだ方が.......」




ルシウス「大丈夫ですから!!!」




カストル「む、むぅ......わ、わかったのじゃ......」




ルシウスがあまりにすごい剣幕で捲し立てるので、カストルは少し怯んでしまう。




オフィーリア「あ、あの......カストル殿下はなぜ王宮に.........?」




オフィーリアがおずおずと聞く。


うーん....これまた意外だった。




カストル「あぁ、アーサーの奴がしつこくてな......」





前日のアーサー


アーサー『兄者兄者!!明日一緒に行ってくれるよな!?

な?な?

行くよな!?

ヤダヤダヤダヤダ!!兄者と一緒がいい!!

ひとりで王宮なんて行きたくない!!』





.........駄々っ子かな?


まぁ実際はオフィーリアとカストルをくっつけたい弟心なのだが、カストルは駄々っ子アーサーにメロメロだった。




カストル「あの時のアーサー....妙に必死だったな........」




まぁ.......うん.....必死ではあった。




オフィーリア「あ、あの......その......レ、レモンのはちみつ漬け作ってきたんです....!


その......よ、良かったら........」



カストル「.........?妙に用意がいいな。

なぜ王宮にはちみつ漬けを?」



ルシウス「兄上!!そこに触れたらダメです!!」



マルクス「カストル!!黙って食わんか!!」




双方向から見事なツッコミが。




カストル「まぁいいや.....食えるなら食うだけじゃからな!!」



血を感じる。


カストルははちみつ漬けを素手でむんずと掴み、口へ運ぶ。




カストル「おぉ!!美味いなこれは!!」




その目は幼児のように純粋な輝きを湛えていた。


本当に兄弟そっくり。




カストルの言葉を聞いた瞬間、オフィーリアの瞳がぱぁっと輝く。


その表情は、花が綻ぶような笑顔だった。




オフィーリア「本当ですか....!?

よ、良かった.......」




カストル「お主......夜会の時とは雰囲気が違うな。

もしや腹でも下してたのか?」




ルシウス「兄上!!!」

作者です!!



オフィーリアの初恋は意外な相手!!


さぁこの後どうなる!?


次回「第二十六話 オフィーリアの初恋2」よろしくお願いします!!

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