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第二十四話 舞踏会編9

戦闘終了後


天井は吹っ飛び、壁はヒビが入っている。


地面はほとんど土が掘り返され、ルシウスの《アトミック・ノヴァ》によって誰も踏み入ることができないマグマ地帯と化していた。



アーサーが宮廷魔術師団を一瞥すると、誰1人動きはしなかった。



それを見たアーサーとルシウスは前に出て、魔術を展開する。




アーサー・ルシウス「「ーーーー《タイム・リヴァース》。」」



その瞬間、地面のマグマが小さくなっていく。


瓦礫が浮かび上がり、壁、そして天井が直っていく。



《タイム・リヴァース》。


対象物の時を巻き戻す魔術。


かつての大魔術師が世界を滅亡の機器から救うため使った大魔術。




だがしかしーーーーーユースティティア皇族は壊れた建物の修復や落ちた食べ物を食べるためなど、軽いことに使っている。


スタミナが無限だからやりたい放題だ。




サミュエル「ま、まさか伝説の大魔法をこの目で見る日が来ようとは.........」



コイツはサミュエル・ノワ・クロムウェル。

あの王太子一味の1人の父親で、五大公爵家の1つクロムウェル家の当主。

プエルグラトゥス王国の宮廷魔術師団師団長でもある。


断罪劇の時、皇帝ダリオスと皇太子アーサーの存在に気づき、死を覚悟した1人でもある。



イグニス「人生何が起こるか分かりませんね、父上!」




クロムウェル公爵家長男で次期当主。

同じく王太子一味のうちの一人の兄だが、兄弟とは思えないほどしっかり者である。



そうこうしているうちに修復が終わった。



オーレリアン「こ、皇太子殿下、ルシウス殿下、わわ、わざわざ会場の修復をしていただき恐悦至極に存じます!

我らの技術では時空魔術を扱えぬ故に皇族の皆様の手を煩わせてしまい、大変申し訳ございません!

わ、私もサミュエルも自らの不甲斐なさを恥じるばかりでございます!!」



サミュエル「えぇ!!それはもう!!

我らの力が及ばず、大変申し訳ございません!!

自らの研究不足を悔いる思いでございます!!」



..............増えた。



アーサーはオーレリアンを一瞥する。


その瞳に感情は見えない。


怒りも、喜びも、落胆も......何一つ見えない。


だが、眼光は刃のように鋭く、瞳の奥は凍てつくような冷徹さと、魔神すらも凌ぐ圧倒的な威圧感を孕んでいた。


波ひとつない水面のような、穏やかで静謐なその面持ちのアーサーは、触れることすら憚られる神聖さすら感じる圧倒的な覇気を放っている。


マントを翻し、ゆっくり歩きながら、


皇族としての威厳を感じる壮麗な声で告げる。



アーサー「構わぬ。この程度我らにとっては手間ですらない。

部屋の修復が終わった故、俺は部屋に戻る。



ーーーー後は任せたぞ。」



本当に誰だお前。



オーレリアン「はい!お任せ下さい!!」



君、一応国王なんだよね?



今回は魔神襲撃や断罪トラブルのせいでまともにパーティできなかったということで、後日舞踏会が再度開かれた。




そして、断罪劇も再度行われた。




大階段の中央にレオンハルトがアリアを抱きしめて、目の前に佇むオフィーリアを睨む。


その周囲に、3人ほど男がいた。



レオンハルト「魔神襲撃があったからと言ってお前の罪が消えるわけじゃないぞオフィーリア!!


俺はお前との婚約をーーーー」




アーサー「ーーーー下がれ。」




その時、刃のように鋭く、そして永久凍土の如く冷たい声が会場全体の空気を重々しく揺らした。


レオンハルトを見下すアーサーの目は一切温度がなく、瞳の奥はこの世のものとは思えないほどの冷たさを孕み、どこまでも昏かった。



アーサーの顔を見るレオンハルトの顔は、強ばっていた。


眉が垂れ、瞳は涙で滲み、口元が震え、歯がカチカチ鳴っている。


おっと、足も震えてる。


セレスティアの連撃をも超える素晴らしいスピードだ。



しばらくした後、レオンハルトは口を開いた。


だが、その声はあまりに小さく、弱々しかった。


アーサーを指差す手は段々下がり、アーサーと目すら合わせていない。


顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃだった。


うーん......ダメだこりゃ。


その状態で、レオンハルトは言う。



レオンハルト「い、いいいいくら皇太子だからと言って.......わ、わわわ私の真実の愛を.........じゃ、じゃじゃじゃ邪魔するなんて.......しょ、少々横暴ーーーー」




アーサー「何が横暴か、言ってみろ。」



その声はあまりに低く、静かで、そして鋭かった。


だがしかし同時に底知れない迫力があり、レオンハルト達は、豪雪地帯の凄まじい冷気が背中を撫でたかのような寒気を覚えた。


その瞳には微かに殺意が滲んでいる。


アーサー本人は少々苛立っているだけなので、その殺意は本当に僅か。


本当に僅かだがーーーー



アーサー「ここは祝いの場なり。

婚約云々の話は別の場所で話せば良いだろう?

つまらぬ話で我を煩わせるなど甚だーーーー」



ルシウス「兄上.....兄上!」



アーサー「なんだルシウス、俺は今怒って........」



ルシウス「..........もう気絶してますよ、レオンハルト様。」



ーーーーその僅かな殺気は、ただでさえ人生で味わったことの無い恐怖を覚えたレオンハルト達を気絶させるには十分すぎた。



口から泡を吹き、顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃ。

............あ、漏らしてる。



うん、イケメンが台無しだね!!




アーサー「..........なんでコイツ倒れてるんだ?」



ルシウス「兄上が気絶させたんですよ!?」



アーサーは、先程とはまるで別人のようにキョトンとした様子だった。


アーサーは、別人のように子供っぽく言う。



アーサー「えー!?うっそだーー!!

俺軽く説教しただけだぞ?

公衆の面前で婚約破棄するなんて、マナー違反だろ?」



そう、コイツはただちょっと軽く叱っただけのつもりである。


それだけでよくあそこまでの威圧感出せるね。


多分魔王も威圧できるよお前。


気絶したレオンハルトたちはその後回収され、オフィーリアも控え室に戻って行った。



ここで、楽団の演奏が流れ始めた。




アーサー「お、そろそろ降りなきゃだな。」



ルシウス「踊る予定があるんですか!?!?」



ルシウスが信じられないものを見るような目でアーサーを見る。

気持ちはすごくよくわかる。



アーサー「あぁ、実はーーーー」




ユリウス「セレスティア・エペ・ヴァレンティア公爵令嬢、麗しき姫君よ!

どうか私に貴方と一曲踊る名誉を頂きたい!!」



アーサーが見ると、中央にセレスティアとセレスティアの前に跪き手を差し伸べるユリウスがいた。



セレスティア「えっと........」



セレスティアは困惑していた。


まぁプエルグラトゥス王国より国力がある大国の王太子からの申し出とか断りにくいよな。


アーサーは、一瞬で真顔に戻った。



大階段を降りながら、静かで、そして鋭い声で空気を震わせた。



アーサー「済まんな、ローゼンブルグの倅よ。

セレスティアには既に先約がある。」



その瞳は相変わらず冷たかった。

刃の如き鋭い眼光を持つ深緋色の双眸がユリウスを捉える。


だが、ユリウスは戦意を失わなかった。


レオンハルトより勇気あるね~




ユリウス「くっ.......フォルティトゥード・イプサ・ユースティティア皇帝国の皇太子とは.....厄介な相手が恋敵になってしまったものだ.....」



アーサー「む?お前なにか勘違いーーーー」



ユリウス「だが!!セレスティア嬢だけは譲れない!!俺を蹴落とすつもりなら迎え撃ーーーー」



アーサー「違うぞ?ユリウスよ。」



アーサーは平然と言う。


コイツ.....今ユリウスいいこと言おうとしてたのに........



アーサー「俺は”先約”があると言ったのだ。

セレスティアと俺は1曲目を共にする約束をしていた。

セレスティアが提案し、俺が受け入れた。

それだけの事だ。」



ルシウスは頭を抱えた。


テンプレを知ってる読者からすればお馴染みだろうが、貴族のファーストダンスは基本、婚約者など親密な人間同士で踊り、未婚約者同士であれば場合によってはその場で婚約が決まることがある。


............と、いうことをアーサーは微塵も知らなかった。



セレスティアは告白する時並に勇気を振り絞ったのだが...........まるで友人と外出の約束をするかのようにかる~く了承されてしまった。



”セレスティアから皇太子を誘った。”



その事実に絶望したユリウスは、泣きながらすごすごとどこかへ消えた。






ルシウス「兄上..........」



ルシウスは頭を抱えた。


うん、気持ちは分かる。




そしてダンスが始まった。



セレスティアは深緋色のドレスを身に纏っている。


本人は「このドレスがいいと思っただけです!」などと言ってるが、明らかにアーサーを意識してるね。

黒のレースや装飾まで入ってるもんね。


だが、赤と黒を基調としたドレスと、白銀の髪黄金の瞳の対比が美しく映え、セレスティアの女神の如き美しさを引き立てる。


アーサーと並ぶと正に神話の英雄と女神がその場に佇んでいるかの如く神聖で神々しい光景となり、周囲の視線を釘付けにする。



そんなセレスティアは........途轍もなく緊張していた。


そう、アーサーが近いのである。


心臓が早鐘を打ち、顔が火照る感覚を覚える。


セレスティアはアーサーをチラッと見る。



アーサーは静かで落ち着いた顔で、セレスティアの瞳を見つめている。


深緋色の双眸に、黄金の瞳が映り込む。


ガラスのように透明感があり、眩い光を湛えたその瞳に、セレスティアは魅入ってしまう。


一瞬ーーーーセレスティアの耳から音楽が途絶える。


まるでこの世界に2人しかいないような錯覚に陥る。


嬉しいような、恥ずかしいような複雑な気持ちになる。



セレスティア(あぁ......やっぱり私.....アーサー様のこと.........)



ちなみにアーサーの思考は.....



アーサー(やはり目の向きで大体動きが分かるな!

これは便利だ!

息を合わせて踊らなくちゃセレスティアに怪我をさせてしまうからな!

頑張るぞ!!)



.....................致命的にズレていた。


だがしかし、表情も動きも完璧である。


ほんと、中身以外は完璧な皇太子なんだよな.............良い奴ではあるが。




突然、音楽が止まった。


ダンスが終わったのだ。



アーサー「終わったぞ、セレスティア。」



その声を聞いた瞬間ーーーセレスティアは我に返った。




セレスティア(わ、わわわ私ったらなんてことを!?)



急いでアーサーから離れる。


アーサーはキョトンとした顔で首を傾げる。



アーサー「セレスティア........?


ーーーーーーー!!」



突如、何かに気づいたようにハッと目を見張る。



..............すごく、ものすごく嫌な予感がする。




アーサー「セ、セレスティア!!顔が赤いぞ!?

風邪か!?

待ってろ、今医者を呼ぶからなーーーーー!!」





ーーーーーーーーちっがぁぁぁぁぁぁぁぁう!!!

さぁ~終わりを迎えた舞踏会編!!



そして忘れられがちですがセレスティアとエイトがシルヴェール邸に滞在する日ももう終わり!!


でも実はセレスティアの恋心を察したギデオンが.......?





そういうのは置いておいて一旦次回はオフィーリア回!!


婚約破棄の行方はどうなるか!!



次回!「第二十五話 オフィーリアの初恋1」お楽しみに!!

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