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第二十三話 舞踏会編8




ルシウス「ーーーーーーハァァァァァァァァァァァ!!!!」



先程の状態から更に力む。


黄金の光が、膨張し始めた。


体から溢れ出る神力が、凄まじい衝撃波と共に黄金の炎となって燃え上がる。


その炎は遥か上空にまで伸び、やがて炎の先端が見えなくなった。




ジャック「な........何だ.......その力........!!

先程のクソ生意気な皇太子より余程強いじゃないか.......!!」



お前は何を勘違いしてるんだ。



ルシウスは首を横に振り、ジャックを見据えて言った。




ルシウス「それはそうです。

兄上は、飛び回る蝿を振り払う程僅かにしか力んでおられなかった。

全力ではない.......それどころか、ほとんど力は出していなかったはず。」




そう、ジャックの想像以上にアーサーは本気じゃなかった。


水道の蛇口で例えるならば、ルシウスの神力の解放の仕方は、力一杯全力で、蛇口が動かなくなるまでぐるぐる回して最大水圧でジョバジョバ出してる感じである。


一方でアーサーは水滴が一滴垂れるか垂れないかの絶妙なライン......もはやそこまで調整する方が難易度高いだろとツッコミたくなるほど、微妙にしか蛇口を動かしてないというイメージである。



流石にこれに負けたら、ルシウスがあまりにも可哀想だ。



ルシウス「それでも、兄上の神力は僕なんかよりずっと強大です。

僕の神力には魔神を一瞬で消し飛ばすほどの力はないし、神力の量を繊細にコントロールすることもできない。

でも........お前達を倒すには十分だ!!」




カッコいいぞルシウス!!


お前今、過去最大に輝いてるぞ!!




ジャック「ほざけェェェェェェェェェェ!!!」




そう叫ぶと共に........黒い鎧の人が飛び出した。


あ、君が戦うわけじゃないのね。




ルシウス「ーーーー《ファイアー・ボール》!!」




ーーーーーゴゥッ!!


火属性の初級魔術でお馴染みファイアーボール。


本来であれば、魔神どころか魔王に対してすらクソほどの役にも立たない程度の威力しかないこともお馴染みファイアーボール。


ところが.........






ーーーーーーードォォォォォォォォンッ!!!


突如、耳を劈くような轟音と共に眩い光が会場を包み込む。




目を開けるとーーーーーー床にドデカい穴が空いていた。




魔神は........避けてるね!




ジャック「な、何だその威力!!」



まぁこれは驚くよね。





二階席にてーーーーー



アーサー「そんな強いか?アレ。」



アーサーはキョトンとしていた。


その瞳はただただ純粋で、本当にジャックが何に驚いているのかわかっていない様子だった。



ダリオス「弱い方じゃないか?

俺がルシウスくらいの時は、あのファイアー・ボールで魔族の国の王都を焦土にしたものだ。」



アーサー「俺も1歳の時、魔界全体を焼き尽くしたしな。」




ガウェイン「うむ!!儂も冒険者なりたての頃は威力を間違えてダンジョンのモンスターを一層分ごとまるまる消滅させたものじゃな!!」




アーサー「あー、あるあるだね!!」


マルクス「儂も身に覚えがあるぞ!」


カストル「なんじゃ!!儂だけではなかったのか!!」



ちょっと人外共は黙ってて。



じゃ、コイツらのイカれたあるある話はともかく。



一階ではーーーー



ジャック「な.......何だその威力!?」




ジャックは狼狽する。


額には汗が滲み、呼吸が浅い。


その瞳には、恐怖が滲んでいた。





ルシウス「舐めないでください。

僕はソロでSランク冒険者まで上り詰めた魔術師です。

それ相応の実力はあります!」




今までSランクになった冒険者は、セレスティア以外全員“断罪騎士エクリプス”を倒している。


それはルシウスも例外ではない。


魔術師は通常、肉体を鍛えていることが少ない故にモンスターの攻撃を引きつける盾役などが必要であるため、魔術師がソロで戦うことは自殺行為だと言われている。


そんな中でコイツは、85層のボス“断罪騎士エクリプス”をソロで倒してSランクに昇格した唯一の魔術師である。


そう、兄に比べたら凡才なだけで、コイツは普通に天才なのである。


もうコイツが宮廷魔術師になればいいのでは?というレベルである。




ルシウス「《フレイム・アロー》!!」




その直後、無数の紅蓮の閃光が流星群のように魔神を襲う。


そのスピードと手数に圧倒され、魔神は全て避けきれず鎧にヒビが入る。




その様子に、ロドリックは驚愕した。



ロドリック「あ、アレが《フレイム・アロー》.......だと?

ば、馬鹿な......あれはまるで中級魔術フレイム・バレッドより遥かに手数が多いぞ......!!」



そう、フレイム・アローは本来一度に一つしか撃ち出せない。


連射はできるが、同時にいくつも撃ち出すことはできない。


できないのだが.........コイツの魔術の師匠はアーサーである。


そう、生後8ヶ月で全ての魔術師の頂点に立った、あのアーサーである。




ジャック「馬鹿な.....!!

前代未聞の力を誇る上位魔神が.......魔術師なんぞにッ...........!!」




ルシウス「それを言うなら、僕の魔術の師匠は一歳で上位魔神を瞬殺する魔術を開発した魔術師です。


ーーーーーー《ヘル・オブ・オリジン》!!!」




ーーーーーーゴォォォォォォォォォッ!!


その瞬間、黒い鎧を着た魔神ーーーーーグランヴァルドの鎧の中から突如炎が吹き出した。



グランヴァルド「ギャァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」



鎧の中から断末魔が聞こえる。



《ヘル・オブ・オリジン》。


燃える現象そのものを制御する魔術。


その魔術は魔法・武器・魔力まで燃焼対象になる。





防御不能、回避不能の火属性魔術最凶の魔術である。



しばらく、グランヴァルドは悶え苦しむ。


だがーーーー炎に包まれたまま、グランヴァルドはゆっくり歩き出した。


剣を抜き、構える。




ルシウス「................」




ルシウスは眉ひとつ動かさずグランヴァルドを見る。


しばらくしたのち、諦めたように瞼を閉じた。




ルシウス「...........仕方ありません。



ーーーーー《アトミック・ノヴァ》!!」





一瞬、周囲が静寂に包まれる。


そしてーーーーー太陽の如き眩い純白の光が一瞬で会場を満たす。


セレスティア達は目を瞑ったが、それでも尚眩しい。


だがーーー突如、視界が黒くなる。


セレスティア達がゆっくり目を開けると..........魔神は跡形もなく消滅していた。




ジャックは..................汗すごいね。


目を見開き、口が大きく開いている。


その口をはくはく動かしながら、信じられないものを見る目でルシウスを見た。




ジャック「馬鹿な..........上位魔神が...........倒された.............?」




今更こんなのでびっくりすんなよ。


軽く威嚇しただけで魔神を消し飛ばした奴が奥に座ってるだろ。





ルシウス「.........まだやりますか?」



ルシウスが静かに問う。


その声には、怒りも、喜びも、驕りも、何一つ無い。



ジャック「ま、まだだ......!!

あんな魔術を連発して、貴様の魔力が保つはずがない!!

まだこっちには無傷の一体が残ってーーーーーー」




ルシウス「僕たちユースティティア皇族に魔力の限界はありません。

...........ご存知なかったですか?」




いや........ユースティティア皇族の強さは有名だから、普通はご存知ないはずがないんだが........

まぁ.............ほら......ジャックは魔神だから、人間の常識が........




ジャック「おのれェェェェェェェェェェ!!!」



ジャックの周囲に黒い瘴気が纏わりつく。


その瘴気はもう一体の魔神ーーーーーグラグ=ノグに繋がっていた。




ルシウス「な.......何だ............!?」


ルシウスが動揺を見せた。




やがて、黒い瘴気が会場を満たし、その場にいた全員の視界が暗黒に染まる。



凄まじい突風が吹き荒れる。



やがて黒い瘴気が晴れるとーーーーーーそこには、ジャックと思しき男性がいた。


だが、身体中に人間の顔が埋め込まれており、肌は紫色。


強膜は黒く、虹彩は赤い。


非常に禍々しい見た目だった。


だがーーーーーーーーーうちに秘める魔力は想像を絶する。




ジャック「クックック..........感じる.......感じるぞ!!

力が漲るのを!!

もう貴様なんぞ敵じゃない!!

貴様も、ユースティティア皇族も、全て皆殺しにしてやる!!!」




ジャックは高笑いをした。


ルシウスは、顔を顰めた。



ルシウス「クソッ........!!僕の魔術じゃコイツは..........」





アーサー「ーーーーールシウスよ、下がれ。」



突如、刃のように鋭く、凍てつく氷のように冷たい声が空気を切り裂く。



直後.........






ーーーーーーーカッ!!!




ジャック「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」



ジャックの断末魔と共に、黄金の光が王都全体を包み込む。


その中央には...........アーサーがいた。




アーサーは神力を圧縮し、体の周囲に纏わせた。




アーサー「アーハッハッハ!!!久しぶりに楽しめそうだァーーーーー!!!



ーーーーーーーーん?」




アーサーが辺りを見渡す。


そこにはもう、ジャックの姿はなかった。


アーサーは不思議そう首を傾げる。




アーサー「...............?何が起こった?

ジャックの気配を感じぬぞ?」




ルシウスは呆れたようにため息をつく。



ルシウス「兄上..........あの魔族ならとっくに消滅しましたよ.........。

兄上の神力でね。」






かくして、ラスボス最終決戦はーーーーーー始まる前に終わった。

作者です!


やっと終わりました~魔神戦!!


というわけで次回は普通にラブコメ回!!


舞踏会はまだまだ続く!!



次回!!「第二十四話 舞踏会編9」よろしくお願いします!!

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