第二十二話 舞踏会編7
※八相の構え:左足が前、右足を後ろにして、顔は正面を向いたまま体を斜めにする。
を相手に向け、剣の鍔が口元のすぐ右に来る位置で、剣と地面が垂直になるよう構える。
............というのが本来の構えですが今回はもう少し速く剣を振れるよう、そのまま剣の鍔が右目より上に来る位置に持っていって、刀の向きは45°後ろに傾ける形にしました。
参考になれば幸いです!
ーーーーーーーー戦闘が始まった。
セレスティアが魔力を解放する。
白銀色の魔力が、空気を重々しく揺らす。
数十メートル上空にいる魔神を睨む黄金の双眸には、戦意はあるものの僅かに恐怖が滲んでいる。
だが、魔神の覇気に気圧されながらもセレスティアは剣を構える。
エイトがセレスティアに支援魔術を施し、セレスティアの魔力が増強される。
セレスティアが踏み込み、その衝撃で地面に亀裂が入る。
セレスティア「ーーーー《天光一閃》!!!」
ーーーー次の瞬間、白銀の閃光が突風を伴って、黒い鎧を着ている魔神の喉を突いた。
岩すらも貫通鋭く一撃。
だがーーーーー魔神には傷一つつかず、剣が折れた。
そのまま蹴られ、壁に強く打ち付けられる。
その衝撃で壁に大きな亀裂が入った。
セレスティア「そん........な.......」
セレスティアの瞳から光が消え、涙で視界が滲む。
その剣は、父ロドリックが5歳の誕生日の時セレスティアに贈ったものだった。
大好きな父から贈られたその剣を、セレスティアは何度も修復しながら大切に使っていた。
誕生日に剣を贈ってくれたことが、まるで父に認められたみたいで嬉しかった。
だが、今その剣は刃の根本から完璧に折れてしまった。
もう、修復しようがない。
その事実が、セレスティアの胸に重くのしかかった。
折れた剣を見ながら涙を流していると、
ーーーーー突如、剣が黄金の光に包まれた。
そしてセレスティアの目の前には、以前のように白銀色の刀身を持つ流麗な細剣が現れた。
だがその剣は、光が当たるとまるで水晶のように透明に光る剣だった。
セレスティア(まさかーーーーーー)
セレスティアはユースティティア皇族の席を見る。
深緋の双眸と黄金の瞳が交差する。
先ほどまで凍てつく冷たさを持っていた瞳は僅かに暖かみを帯びていており、一筋の光を孕んでいた。
そう、アーサーは泣いてるセレスティアを元気付けるために、こっそり魔術を展開して剣をユースティティア製に魔改造したのだ。
その瞳に、過剰な優しさや甘さは見えない。
きっと、アーサーにとってはただ友人を励ます程度の軽い気持ちだったのだろう。
それでも、セレスティアは胸の奥がじんわり暖かくなるような感覚を覚えた。
セレスティアは、アーサーを見て微笑んだ。
アーサーもまた笑みを返す。
セレスティアは剣を拾い、大切そうに胸の前で抱きながら涙を流した。
ーーーーしばらくした後、セレスティアは魔神の方を振り返った。
その瞳には、もう迷いは無かった。
ただただ真っ直ぐな意志を宿した黄金の双眸が魔神を捉える。
一方、二階席では。
アーサー「うむ!!セレスティアが元気になって良かったぞ!!」
アーサーは満足げに頷いた。
うん!やっぱコイツはこうでなくちゃ!!
ルシウス「兄上.........ご自分が何をされたか、分かってますか?」
終始立ったり座ったり忙しいルシウスが、信じられないものを見るような目で問う。
うん、言いたいことはわかるぞ。
だがアーサーはものすごく純粋な瞳で言った。
アーサー「...........?友達の剣を直してやっただけだけど.........?」
その瞳は、本当にただただ純粋だった。
鐚一文の雑念すら無かった。
コイツ........やっぱり鈍感だ........
アーサー「ところで親父殿、肉食っていいよな?」
ダリオス「むしろ俺が食べたいくらいじゃ!!」
ガウェイン「儂も!!」
マルクス「儂も!!」
カストル「さっきから腹が減って仕方ないのじゃ!!!」
........................平常運転。
ルシウス「食べてる場合じゃないですよねーーーーーーーー!?!?」
ルシウス、君は正しい。
頑張れ。
だが奮闘虚しく、アーサーの魔術によって広間にあった全ての料理がユースティティア皇族の席の前に現れた。
脳筋共5人衆「「「「「食うぞーーーーーーーーーーーー!!!」」」」」
彼らは今日イチはしゃいでいた。
その瞳はまさにお子様ランチを目の前にした幼児のようにキラキラと輝いている。
君たちね.......目の前に魔神がいるんだよ?
一方、一階ホールでは相も変わらず戦闘が続いていた。
セレスティアが高く跳ぶ。
セレスティア「ーーーーー《聖天巡駆》!!!」
その声と共にセレスティアが消える。
直後、魔神の周囲を、無造作に重なった幾重もの白銀の閃光が覆う。
だがーーー魔神の姿が霞む。
一瞬、魔神が数体増えたように見えたあと、セレスティアの剣は全て空振った。
セレスティアの剣の異変に気付いたのか、魔神はセレスティアの刺突攻撃を全て避けたのだ。
だがーーーー続けざまにロドリックが跳躍する。
ロドリック「ーーーーー《断界斬》!!!」
銀色の稲妻が真っ直ぐ魔神に向かって襲いかかる。
凄まじい突風と共に放たれたその一撃は、魔神の肩に直撃した。
ロドリックの剣は一見普通だったので、どうせ大丈夫だと高を括ったのだろう。
魔神はロドリックの攻撃を避けることは無かった。
だがーーーーーー魔神の動きが止まる。
肩の装甲が裂けており、その割れ目の間から紫に近い黒い血が滝のように流れ出た。
魔神が自分の肩を見る。
その目の奥には、僅かに驚愕の色が宿っていた。
だが、すぐに止血しロドリックに向き直る。
予想外の出来事にジャックは狼狽した。
ジャック「な、なんだ.........なんだその剣は!?」
ジャックは悲鳴に近い声を出した。
ロドリック「喋ってる暇などーーーーーないだろう!!!!」
ロドリックはそう叫び、魔神への攻撃を続けた。
すごく現実主義なロドリックに代わり説明すると、あの剣は初代ヴァレンティア家当主であったダグラスという男がアレキサンダーの孫ーーーーー皇帝レオニダスから贈られた剣である。
皇帝レオニダスにとってはただ誕生日だったダグラスのためにちょっとしたプレゼントを贈ったつもりだったのだが、その剣はユースティティア製だった故に先祖代々受け継がれる宝剣となった。
刹那ーーーーロドリックが白銀色の光に包まれる。
八相の構えのまま跳躍し、眩い光が突風と共に魔神に迫る。
ロドリック「ーーーー《聖光七連》!!!」
その瞬間、七つの白銀の光刃が魔神を襲う。
ーーーーーと、思われた。
だが、斬撃は空を切る。
ロドリックが振り返るとーーーーー黒い刃が首元のすぐ右に迫っていた。
ーーーーザンッ!!
セレスティア「お父様ーーーーーーーーー!!!」
セレスティアが絶叫する。
ロドリックは...........生きてはいた。
瞬時に剣で受けたおかげで、魔神の斬撃は動脈まで届いていなかった。
だが、首元を抑えている右手の指の隙間から、赤黒い血が川の水のようにダラダラ流れる。
額には汗が滲み、呼吸すらままならない。
首の痛みで、目元は歪んでいた。
アイリス「わ、私が治します!!」
パァァァ........
白い光が、アイリスとロドリックの周囲を漂う。
だがーーーー
何も起きなかった。
アイリスが目を見開く。
そして、喉の奥から絞り出したかのような、引き攣った声で呟く。
アイリス「な.........んで...........」
“癒しの巫女”の力には制限がある。
そう、死の間際にいる人間は救えぬのだ。
ロドリックは致命傷こそ免れたものの、大量出血により衰弱していた。
エイト「そんな.......アイリスさんですら治せないなんて.........」
誰もが絶望し、心が折れかけた時ーーーー
氷河の如く冷たく、そして鋭い声が空気を切り裂く。
アーサー「ーーーーーー《上級回復》。」
その瞬間、ロドリックの傷が白銀の光に包まれーーーーそして消えた。
何が起きたか、誰も理解できなかった。
回復を司る救世主“癒しの巫女”ですら治せない傷が、一瞬のうちに癒えたのだ。
威厳と豪快さを感じさせる声が静寂を切り裂く。
ダリオス「ふむ、予想以上に苦戦しておるな。
どうやらロドリックらには少しキツい相手のようだ。
なぁ、アーサーよ。」
“少し”じゃないんですよ、気づくの遅くない?
それに続き、刃のように鋭く、凛とした声が響き渡った。
アーサー「致し方なし。
ーーーーールシウスよ、彼奴らに加勢せよ。
魔神を討て。」
ルシウスは怪訝な表情を浮かべる。
ルシウス「あ、兄上は行かれないのですか.......?」
アーサーはルシウスに目を向ける。
その瞳には料理に喜んでいた時の幼さはなかった。
ただ氷河の如き冷徹さと、触れることすら憚られるほどの神聖さだけがそこにあった。
アーサーはルシウスを見たまま、静かに、そして冷たく言い放つ。
アーサー「ーーー甘えるな。
貴様もユースティティアの男なら、魔神程度我らの力を借りずとも屠ってみせよ。」
ルシウスは、見たことがない兄の顔に一瞬肩を跳ねさせた。
その瞳には全てを切り裂く刃の如き鋭い眼光が宿っており、しかしどこまでも深く昏い闇を感じさせた。
ただ目が合っただけで、相手を奈落に引き摺り込むほどの力を感じさせる瞳にルシウスは気圧され、咄嗟に目を逸らした。
ルシウス「わ、わかりました.........」
そう言ってルシウスは階段を降りて行った。
アーサー(..........?何故目を逸らしたのだ?
俺の奥に魔神でもいたのか?)
お前のせいだよ。
お前の目と声が怖いんだよ。
ーーーーールシウスが魔神を睨む。
その瞳には恐怖も動揺も微塵もない。
まぁ..............もっと怖いもの見た後だもんね。
ジャックはその目を見て眉間に皺を寄せた。
ジャック「なんだその目は.......小僧のくせに生意気な!!
まさか魔神が怖くないとでも言うのか!!」
その声には苛立ちが滲んでいた。
ルシウスは凡才で、武術に関しても兄達ほど強くはなれなかった。
無論戦闘民族としての肉体の耐久性があるが、まぁ、兄達があんな感じなせいで武術の道からは外れた。
故に、確かに外から見ればなんの覇気も闘気も感じないただの子供だろう。
だがーーーーーーー
ルシウス「あぁそうだ!!
先程の兄上の恐ろしさに比べたら、お前達なんて赤子同然!!
恐るるに値しない!!」
その声には戦意が満ちており、力強かった。
アーサー「オイオイ、実の兄に向かって失礼な。
どう見てもあっちの方が怖いだろ。」
見た目だけはな!!
ルシウス「ハァァァァァァァァァァァ!!!」
ルシウスが声を出すと共に、突風が吹き荒れた。
空気が揺れる。
戦いによって破壊された瓦礫の破片がルシウスを中心に四方八方に吹き飛ばされる。
その衝撃波に、セレスティア達は思わず目を瞑った。
彼らが目を開けた時、黄金の炎がルシウスの周囲で猛々しく燃え上がっていた。
まぁ、当然ルシウスも戦神へファイストスの血は引いてるので神力は使える。
だがしかし、その力は兄アーサーの神力と違い、その場の空間全てを支配するほどの凄まじさはない。
ただ、それでもやはり神の力。
ルシウスの神力は、魔神すら一瞬気圧されるほどの威圧感を放っていた。
ジャック「な.......なんだその力は......!?」
お前なぁ.........本日2回目だぞ?
ルシウス「ーーーーーー僕だってユースティティア皇族だ!!
馬鹿にするなァ!!!」
頑張れルシウス!!
その意気だルシウス!!
ーーーーーーー今ここに、神と神の戦いが幕を開ける!!
作者です!
セレスティア達がピンチのところ、まさかのルシウス参戦!?
果たしてどうなるのか!?
次回!!「第二十三話 舞踏会編8」よろしくお願いします!




