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閑話 黒幕

【????視点】


ーーーーーー忌々しい........本当に忌々しいわあの娘..........!!



16年前、アイリスが生まれる以前はプエルグラトゥス王国の公爵家は四つだけだった。


剣術、軍務、経済、そしてーーーー外交。


四つの分野それぞれにおいて頂点に立つ四つの家は敬意を込めて四大公爵家と呼ばれた。


ヴァルディエール家とシルヴェール家は、共に侯爵家。


だが、ヴァルディエール家はその昔、サルムンド王国のヴィータ姫の兄....フェリクス第三王子と婚約者であった伯爵令嬢との間にできた子供を祖先とする家だった。


そう、ヴァルディエール一族はサルムンド王家の血を引いており、プエルグラトゥス王国ディレクトゥス王家とは遠縁の親戚だったのだ。


更に言えば、広大な大地を持つヴァルディエール家は農業が盛んであり、その財力は経済の中心であるオルセリア公爵家に迫る勢いであり、今も尚衰えていない。


更に防具の製造業が盛んであり、フォルティトゥード・イプサ・ユースティティア皇帝国に次ぐ軍事力を誇るギルガメス大帝国から注文が入ることもある。


(※まぁ.......無論ギルガメス大帝国の皇族達もユースティティア皇族の前では、絶対怒らせちゃいけない上司の機嫌を損ねないよう必死に取り繕う限界サラリーマンと化すんですけどね。)



対してシルヴェール家は元サルムンド王国の平民からの成り上がりで取り分け優れた分野はない。


血筋も、権威の強さも、財力も........圧倒的にヴァルディエール家の方が上だった。


ヴァルディエール家が公爵家になる日が近いと、誰もが思っていた。


私も、ヴァルディエール家は公爵家になるものだと信じて疑わなかった。



ーーーーだが、16年前に全てが変わった。





ーーーーーーーーーーーーー


私は貧しかった。


スラム街で生まれ、貴族達から侮蔑の目を向けられ虐げられ続ける日々。


だがしかしーーーある日、突然目の前に身なりのいい男性が現れた。


彼が言うには、こう言うことだった。


母は元々村娘だった。


地元では有名な美人で、家族の愛にも恵まれ、裕福な家で育った。


婚約者もいて、互いに愛し合っていたらしい。


だが結婚前夜、母はミルズ子爵であった彼の父親に見初められた。


婚約者と無理矢理引き離され、屋敷に閉じ込められ、使用人として働かされた。


その最中、私を身籠った。


私は望まれない子供だった。


ミルズ子爵を憎んでいた母は、その男と同じ色の瞳を持った、物心つく前の幼い私をスラム街に打ち捨てて去った。


そんな母は今は恋人と駆け落ちし、もうミルズ子爵家にはいないらしい。


私はミルズ子爵家に引き取られた。


だがーーー私に対するミルズ子爵家の人間の眼差しは冷たかった。


私を「穢れた血」と罵り、暴力を振るい、使用人のように働かせた。


理不尽だと思った。


ただ貴族の婚外子として生まれただけで自分を虐げる使用人達や家族も、ただミルズ子爵の子供だったと言うだけで私を捨てて自分だけ幸せになった母も、憎くて憎くて仕方なかった。


だから復讐しようと誓った。


誰よりも高い地位に昇って、あわよくば自分の娘を王太子妃にし、プエルグラトゥス王国で最も強大な権威を持ち、自分を嘲笑った全ての人間を、今度は私がこき使ってやろうと思った。


その後私は、当時はヴァルディエール侯爵家の次期当主であったベリアル・ヴァルディエール侯爵令息に求婚され、そしてヴァルディエール侯爵夫人となった。


ヴァルディエール侯爵家はサルムンド王族の系譜となる由緒正しき名門貴族。


これはチャンスだと思った。


そして.......遂に娘を産んだ。


眩い光を湛える太陽の如き黄金の髪に、薔薇のように美しく鮮やかな真紅の瞳を持つ女の子だった。


ヴァルディエール侯爵家は順調に影響力を強め、公爵家一歩手前まで行った。


このまま四大公爵家と肩を並べる家格になれば、ラフレシアが王太子妃争いに参加するのも夢ではない。


私は歓喜した。


それなのにーーーーー




なんの取り柄もなくパッとしないシルヴェール家が、ヴァルディエール家より何もかも格下のシルヴェール家が、突然公爵家になった。



予言の救世主たる“癒しの巫女”が生まれたというだけで、ヴァルディエール家を差し置いて公爵となったのだ。



(※いや......まぁ.......シルヴェール家が出世した時期とアイリスが生まれた時期が重なっただけですけどね。平たく言うと、“癒しの巫女”の誕生に第歓喜したエルリックがものすごーく調子が良くなって、その状態で外交を頑張った結果ダリオス皇帝に気に入られ、その功績で公爵になったんですよね。


安心してください、ちゃんと実力です。)



許さない......


あの娘だけは絶対に許さない.........!


私の計画を、復讐を、全て壊したあの娘だけは、絶対に.......絶対に許さない....!!



だから私は自分が持つ全ての財産を注ぎ込み、世界最凶の暗殺者組織“深紅の天秤”にアイリス暗殺の依頼を出した。


深紅の天秤の精鋭メンバー800人と数十人の構成員が出動した。


絶対に殺せると思った。


失敗しようがないと。


それなのに、800名の精鋭は20名まで数を減らした上に、アイリスを殺すことすらできなかった。


訳がわからなかった。


頭が理解を拒否した。


一人一人がAランク冒険者を屠るほどの実力を持った精鋭メンバーを壊滅に追いやった人間が、何故かシルヴェール邸にいたとのことだった。


だが、私はこんなことでは諦めない。


どんな手を使ってでも、必ずアイリスを殺す。






そうーーーーーーたとえ人間を辞めることになったとしても。

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