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第二十話 舞踏会編5

ーーーーアーサー入場直前



アーサー「.............む?」



アーサーは違和感を覚えた。


そう、照明が暗かったのだ。


辺りは闇に包まれており何も見えなかったが、視界の隅に一筋の光がよぎる。


光の方を見たら、白と青を基調とし、繊細な金の刺繍が施された立派な礼服に身を包んだ男が立っていた。


一方その頃、会場にいるロドリックは冷や汗を流した。


そう、その側に自分の息子がいて、無実の令嬢を責め立てるという派手なイベントを起こしていたのだ。


ロドリック(マズイ.......照明が......照明が王太子殿下達を目立たせてしまってる!!

これではダリオス皇帝陛下達のお姿が........)


ロドリックは聴衆達をかき分けて進み、使用人に問いただした。


ロドリック「オ、オイ!!何故照明を落とした!?」


照明係A「え?えっと.......レオンハルト殿下達が......そのようにと........」


ロドリックは一瞬、頭が真っ白になった。


呼吸すらできぬほどの圧迫感を感じる。


今から世界が滅んでしまう錯覚を覚えるほど、どこまでも深く暗い絶望がロドリックを襲った。



ロドリック(こ、このままでは......我が国が滅びてしまう........!!)







ちなみにーーーーアーサー達は王太子達の演説を聞いていた。


だが、アーサーはものの数秒で話の本筋を理解し、そして興味を失った。



アーサー「なんだ.......決闘ではないのか.......。

実につまらん。」



そしてアーサーが飽き飽きしたところに、ロドリックが血相を変えて走ってきた。




ロドリック「ももも申し訳ありません!!!

ウチの馬鹿息子どもが勝手に照明を変えるよう指示を出していたらしく!!

すぐに戻させますのでしばしお待ちを!!



ーーーーオイ、照明を戻せ!!」



照明係達「「はい!!直ちに!!」」




ーーーーカッ!!


アーサー「おぉ!!明るくなったな親父殿!!」


ダリオス「うむ!!これで周囲がよく見える!!」



そしてロドリックが中に入る。



ロドリック「ーーーー鎮まれェェェェェい!!!」



ロドリック、今日一番の大声である。


ロドリックは必死だった。


今ここで空気を戻さなければ。


レオンハルト達に向いた関心を全てこちらに寄せなければ。


ーーーーー場合によっては世界が滅亡するかもしれない。


そう、今この時こそ、人類の存亡を懸けた大一番だったのである。


その後アーサー達の入場を告げるエルリックも、同じく一歩間違えれば国ごと滅ぶという途轍もない緊迫感の中、頑張って声を張っていた。




エルリック「フォルティトゥード・イプサ・ユースティティア皇帝国第467代皇帝ーーーー」



ダリオス「お、出番だなアーサーよ。」



アーサー「よーし!!行くぞ!!」





ーーーーーアーサーが入場した瞬間、周囲は静寂に包まれた。


彼らの目の前を歩く少年は、絶世の美貌を持っていた。


触れれば容易く壊れてしまいそうなほど儚く繊細で、神々しく、だがどこか恐ろしさすら感じられた。


そしてその美貌とは裏腹に、魔王の如き恐ろしさと女神アストライアの如き神々しさを併せ持つ、凄まじい覇気を纏っていた。


かつて魔神を討ち取った英雄アレキサンダー帝を彷彿とさせるその圧倒的な威圧感を前に、もはやそれ以外のものなど目には入らなかった。


だが、その後ろを歩く皇帝もまた、目を奪われるほどの存在感があった。


ダリオスは若々しかった。


肌には皺ひとつなく、髪には白髪一本もない。


ヒゲも全く生えていない。


どこからどう見てもただのゴツい若造であった、だがしかし、声をかけることすら憚られるほどの神聖な雰囲気を纏っていた。


足取りは力強く、堂々としており、戦神へファイストスを彷彿とさせるほどの凄まじい覇気を纏っていた。


誰もが無意識のうちに跪き、皇帝を迎えた。


ただ歩いているだけで、神々を前にしたかのような荘厳な空気が会場全体に広がった。




二階席へ続く大階段を登る最中、ふと、黒く長いまつ毛の間から覗く深緋色の双眸に、セレスティアの瞳が映り込む。


ーーーーその刹那、セレスティアの心臓が大きく跳ねる。


ほんの一瞬の出来事だった。


だが、普段とは違い皇太子としての威厳を纏うアーサーの姿に、セレスティアは自分の顔が熱を帯びる感覚を覚えた。




セレスティア(...........ズルい。)





ユースティティア皇族の席は大階段を上がってすぐ正面にデカデカと置いてある。


壁には帝国の国旗が吊るされており、手前に皇族の席が置かれている。


中央には巨大な玉座が二つ置かれている。


皇帝と皇后の椅子だ。


皇后についてはまた今度詳しく。


生地は真紅を基調とし、金糸や銀糸によって繊細で艶麗な刺繍が施されている。


また、背もたれの周囲や肘置き、椅子の足には純金の装飾で縁取られ、天使の意匠や剣を象ったものなど壮麗で見事な細工が施されている。


そしてその周囲に五つ、その玉座の普通サイズバージョンが置かれている。


ぶっちゃけ、プエルグラトゥス王国の国王達が座る椅子より明らかに凝ってる。


..............ビビられてるねぇ.............。



ダリオスとアーサーが座った後、アーサーと同じような格好をした3人の屈強な皇子達と皇后も椅子に座る。


........ルシウスもいるよ!





そして、周囲に向かってアーサーが例の一言を言い放つ。


アーサー「ーーーー面を上げよ。楽にせい。」



楽にできるわけないね。


威厳しかないね。





すると、奥から一人の男性が入ってくる。


上質なファーがついた絹製の真紅のマントは、無地でありながら光沢が美しく、自然と目を惹かれる存在感がある。


頭に乗せた王冠には繊細な金細工が施されており、大粒の宝石が大量に散りばめられているにも拘らず派手になりすぎず、洗練された美しさを併せ持つ。


服は白と青を基調とし、これまた見事な金の刺繍が施されている。


皇帝ダリオスの荒々しい雰囲気とはまた別の、気品と荘厳さを感じさせる雰囲気の美麗な男性



ーーーーーーであったが、姿勢は全然荘厳じゃなかった。



腰は低く、手を揉み、顔にはニコニコと愛想笑いを浮かべている。


額には汗が滲み、皇帝を見る目には恐怖と焦燥が滲んでいる。



彼の名はオーレリアン・グラディオ・ディレクトゥス。


プエルグラトゥス王国の国王にしてレオンハルトの父親である。




オーレリアン「こ、皇帝陛下、皇后陛下、皇太子殿下!それに皇子殿下達....!これはこれはようこそおいでくださいました。

皆様の大変神々しいお姿を拝見できて、このオーレリアン、至極光栄に存じます。」



臣下かな?



ダリオス「うむ!!ところで肉はあるか!?」



平常運転だなコイツ。



オーレリアン「ももももちろんでございます!!陛下達が肉料理を好むと聞き、この通り山ほど用意いたしました!!」



オーレリアンが食事スペースを指差す。


そこには色とりどりの野菜やパン、麺料理など様々な料理が置かれていた。


その奥に、如何にも立ち入り禁止エリアのように囲まれた、数十人入れそうな広いスペースには、現実離れした大きさの肉が大量に用意されていた。



シャルロッテ「あなた、自重してくださいね?」



ダリオスの妻、皇后シャルロッテが夫を睨む。


無論彼女も戦闘民族だ。



ダリオス「う、うむ.......」



オーレリアン「こ、皇太子殿下、皇子殿下達もお楽しみください!」



アーサーはオーレリアンを一瞥する。


その瞳には感情が見えず、しかし奥には氷河のような冷徹さと、波一つない水面のような静謐さが同居していた。


アーサーは肉料理の方に目を向け、しばらくした後オーレリアンに視線を戻す。


そして、威厳と気品を感じさせる、しかし刃の如く鋭い声で静寂を切り裂いた。




アーサー「うむ。今日この日を迎えられたことを嬉しく思う。善きに計らえ。」



お前、今肉の方を見たな?



オーレリアン「ハハッ!!」



オーレリアンは跪いた。


...........だから、臣下なの?



だがーーーーーーー空気を読まない奴がいた。




アリア「ア、アーサー様ぁ!私ぃ、オフィーリア様にいじめられてーーーーー」




アーサー「下がれ。つまらん話を聞かせるな。」




その声は、刃のように鋭く、そして豪雪に見舞われたかの如く冷たかった。


アーサーはアリアに目を向けることすらなく、興味なさそうに頬杖をつき、左手でしっしと追い払う動作を見せた。


アリアは泣いてレオンハルトに縋る。


レオンハルトはアーサーを睨み、何か言おうとした。


だがーーーーー




レオンハルト「.............ッ!!」



アーサーに睨まれた瞬間、レオンハルトはアーサーに圧倒されて何も言えなくなってしまった。


いや、正確にはアーサーは睨んだつもりはなく、ただつまらなそうに目を向けただけのつもりである。


その瞳は、深緋色の双眸に映るレオンハルトへの関心が一切見えない。


ただ、この世のものとは思えないほどに冷たく、刃の如く鋭く、そしてどこまでも昏かった。


しばらくして、レオンハルトの体は小刻みに震え出し、瞳には涙が滲む。


アーサー的には“仕方ない.....付き合ってやるか”くらいの気持ちだったが、レオンハルトは迷惑そうなアーサーの顔に底知れない恐怖を覚え、縮こまりながらすごすごと大人しく大階段を降りて行った。


そこに、一人の男がやってきた。


セレスティアの長兄ーーーーリチャード君である。



リチャード「貴様!!

よくもアリアを無碍にしたな!!

表に出ろ!!俺が成敗してくれる!!」



そう言ってアーサーに剣を突きつけた。


好きな子を馬鹿にされたと思い、腹が立ったのだろう。


その瞬間、アーサーの瞳に光が宿った。



アーサー(やったーーーーーーー!!!(いくさ)だーーーーーーー!!!!)



これでこそ脳筋皇太子(アーサー)



ただし無表情のまま、静かに席を立つ。


大階段を降りながら、雷の如き速さで剣を抜く。


リチャードを見る目には匠が一生懸けて鍛え上げた刀の如き鋭さと、死そのものを相手にしているかのような凄まじい殺気が宿っていた。


リチャードは、この瞬間。


アーサーに喧嘩を売ったことを死ぬほど後悔した。


その直後ーーーー





ズドドドドドドドド.......



ロドリック「ーーーーこの!!!大馬鹿ものがァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」



グシャッ



鼻が潰れる。


直後、


ーーーーーーードゴォッ!!!



リチャードは蹴り飛ばされた。




ロドリックは、リチャードに怒鳴る。



ロドリック「貴様!!!皇帝陛下御一行がご入場される直前にあのような催しで観衆の目を惹きつけただけに留まらず!!!

何故皇太子殿下に剣を向けた!?

お前は我が国を滅ぼすつもりかッ!!!」



その目はいつになく血走っていた。



アーサーはしょんぼりした。



アーサー「........(いくさ).......やりたかったのだ..........」



通常運転である。



その刹那ーーーーーー



ジャック「ーーーーーなら、その願いを叶えてやろう。」



アーサーが声がする方を振り返る。


そこには、三体の異形の姿があった。


ある一体は体中から誰かの悲鳴が絶え間なく聞こえ、全身が黒い魔力に覆われる。


またある一体は黒い甲冑に身を包み、腰には髑髏を象った装飾が施された禍々しい剣を持っている。


またある一体は実体を持たず、巨大な黒い魔力の塊として浮いていた。




それを見て、アーサーはしばらく沈黙する。


そして、本当に興味なさそうに呟いた。








アーサー「ーーーーーーなんだ........一歳の時に倒したやつらじゃないか.........。

実につまらん。」

さぁ!!



もうなんとなく結果はわかってるであろう魔神戦はさておき!!


とりあえずジャックは何者なのかーーーーー?


次回!!「第二十一話 舞踏会編6」よろしくお願いします!!

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