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第十六話 舞踏会編1

アーサー「ーーーーー舞踏会??」


肉を頬張りながらアーサーは不思議そうに首を傾げる。

お前な、それ10皿目だぞ。



ガウェイン「うむ!!三日後の舞踏会に儂らも参加するようじゃ!!」



カストル「親父殿から通達があったのじゃ!!」



アーサーは面倒くさそうに顔を顰めた。



アーサー「えぇ........面倒だなぁ。

女子どもが急に群がって来て道を阻むから苦手なんだよ.......」



まぁ......その顔じゃあねぇ.........

そりゃ女の子が放っておかないでしょうよ。



ルシウス「兄上は見目が麗しいですからねぇ.......」




そう、アーサーは美青年である。

生まれた瞬間から天使のように可愛らしく、そのまま順当に美青年に育ったアーサーは、昔から女性に人気だった。



ーーーしかし、本人はそんなこと全く気にしていない。




アーサー「外見がなんだと言うのだ!!男は筋肉で語るものだろう!!!」



ガウェイン「そのとォォォォォォォォり!!!」



カストル「そう!!力こそ真理であり!!勝利こそ正義なのじゃ!!」



マルクス「男の価値は、戦場に出た瞬間に決まるもの!!」



.............うん。まぁ君たちはそうだよね。

そう言うと思った。




ルシウス「兄上たちのそれは!!他国では非常識なんです!!!」



ルシウス......君は本当に頑張ってる。

もう本当に偉いよ。

そのまま素直なままでいてくれ。



その後は鍛錬である。

コイツらずっと鍛錬してるな.........




セレスティア「ーーーーーお疲れ様です。」



アーサー「おぉセレスティア!!お前なんか毎日来るな!!」



だからさ、君に会いに来てるんだよ。

本当によく気づかないね。



セレスティア「べ、別に!!散歩のついでで来ただけですからね!」



散歩の距離じゃないけどね。



アーサー「まぁそれもそうだな!!」


何でだよ。




一方、ルシウス達は遠くからその様子を眺めていた。


ルシウス「.........全然気づきませんね、兄上。」



ガウェイン「まぁあやつに女心は難しいじゃろう。」



お前が言うな。

次の瞬間ーーーーーアーサー達が即座に右を見る。

そこにはギデオンがいた。



アーサーはニヤっと笑う。

その顔に、先程の脳筋ピュア皇子の面影はなかった。



アーサー「お前.......中々やるな。」



ギデオンは深々と頭を下げる。



ギデオン「恐縮でございます。」



両者の間に沈黙が流れる。

アーサーは眉ひとつ動かさず、ギデオンを見下ろした。

しばらくしてから、アーサーは静かに問いかけた。



アーサー「お前がここに来るとは珍しいな。何用だ。」







ギデオンは、ゆっくり顔を上げた。

そして重々しく口を開く。



ギデオン「ーーーーーダリオス皇帝陛下がいらっしゃいます。」




そして四十分後ーーー


夥しい数の馬車がシルヴェール家の前に止まった。


その馬車は全てを塗りつぶすような深い漆黒だった。


繊細で美しい金の装飾が施され、扉の部分には剣を持った男の顔が描かれている。

それはーーーーかの帝国の紋章だった。




馬車が止まったのを合図に、使用人たちが一斉に跪く。


全員指の先まで力が入る。


指先が僅かに震え、呼吸が荒くなる。


まるでかつての大災・魔王アポカリプスを相手にしているかのような、凄まじい緊迫感が彼らを襲った。


使用人一同、そして馬車の前で跪いているエルリックも、自身の体が鉛のように重くなる錯覚を覚える。


この場でただ普通に立っているのは、五人だけである。





扉が開き、一人の男がシルヴェール邸の前に降り立った。


皇族の証たる純粋な漆黒の髪は前も横も短く切り揃えられているが、襟足だけが異常に長い。


長く細い三つ編みが、風に乗せられゆらゆらと揺れる。


その瞳は全てを燃やし尽くす炎を思わせる鮮烈で強烈な赤い瞳だが、瞳の奥にはまるで森の中にひっそりと建てられた図書館の空気のような静謐さを宿している。


その瞳は自信に満ち溢れ、公爵であるエルリックを前にしても威風堂々たる佇まいでそこに立っている。


全身は漆黒の甲冑に包まれており、血を思わせる鮮やかな真紅のマントがはためいている。


その姿は鬼神の如く。




エルリックが絞り出すように声を出す。



エルリック「よ、ようこそおいでくださいました.......

ダ、ダリオス皇帝陛下........。」



そう、彼の名はダリオス・フォルティトゥード・ユースティティア。

フォルティトゥード・イプサ・ユースティティア皇帝国の467代目の皇帝である。



ダリオス「うむ!!久しいなエルリックよ!!

そして我が息子たちよ!!!息災だったか!!!」



彼が声を出した瞬間、空気が激しく揺れる。

全員が吹き飛ばされないよう必死に踏ん張ってる中、四人だけ涼しい顔をしていた。

どんだけ声デカいんだよ。



マルクス「兄者、コイツらは何故(なにゆえ)踏ん張っておるのじゃ?体に(おもり)でもつけておるのか?」



ガウェイン「うーむ........わからん!!!」



カストル「我らには何も起きないな。

どうなっておるのじゃ?」



アーサー「兄者兄者、ルシウスも何やら頑張ってるぞ?

何を頑張っているのだ?」




いや......お前らはなんで平気なんだよ。

ちょっとした台風のようなもんだぞ?

やっぱコイツら普通じゃねぇ...........


風が止んだ。


直後ーーーー




ズドドドドドドドド.......


アーサー「親父殿ーーーーーー!!」



アーサーがダリオス皇帝に向かって突進し、抱きついた。

その瞬間、皇帝の顔がへにゃっと緩む。



ダリオス「おぉアーサーよ!!元気にしておったかーーーーーー!?」



甘ったるい声でそう言いながらアーサーに頬擦りするダリオス。

先程の威厳はなんだったのか。

今やただの親バカである。



セレスティアが前に出た。



セレスティア「ご無沙汰しております。ダリオス皇帝陛下。」



ダリオス「うむ!!息子が世話になってるな!!」



フォルティトゥード・イプサ・ユースティティア皇帝国は、遥か昔ーーー神話の時代より滅びを知らない、生きる超古代帝国である。

その歴史の長さは世界随一であり、歴史の重さと軍事力の高さから、他国から尊ばれ、そして同時に恐れられている。

王族ですら下手に出るほど権威ある皇帝の目的は、


ーーーーー息子達の晴れ姿だった。







シルヴェール家本邸の裏庭にてーーーー




マルクス「セァァァァァァァァァァ!!!」



アーサー「ハァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」



ガウェイン「セイァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」



カストル「フンッ!!!」



ガキキキキキキキキキッ!!!



...........四人の皇子は正装を着たまま戦い出した。

もう恒例行事である。



マルクス「うむ!!全然生地が傷ついておらんな!!!」



カストル「しかも動きやすいぞ!!」



アーサー「ありがとう親父殿!!」



四人の皇子は満足げだった。

ユースティティア皇族の正装は、黒と真紅を基調とした軍服である。

袖や襟などには、繊細で美しい金の刺繍が施され、左胸には皇帝国の国章が刻まれている。

皇族としての気品と威厳を感じさせる、上品で華やかな装いであるが、やはりそこはユースティティア皇族仕様。

布は丈夫で軽くて伸縮性が高く、手袋や靴底にも滑り止めがつけられており、実に機能性が高い戦闘服である。



.................舞踏会に行くんだぞ?



腰に下げている剣には柄や鍔、鞘に至るまで美しく洗練された装飾が施され、鍔にある宝石が虹色に輝く。

鳥の翼や天使を象った意匠などが施されているものもあり、目を惹かれる美しさである。



セレスティアは剣を見て、懇願するように聞いた。



セレスティア「こ、腰に下げてる剣は.......儀礼用なんですよね.........?

まさか戦闘用ではありませんよね.........?」



アーサーは不思議そうに首を傾げた。

そして抜き身の剣を掲げこう言った。



アーサー「よく見ろ、セレスティア。刃紋が剣に自然に馴染んでるだろ?

普通に戦闘用の剣だぞ?戦えない剣なんか持っていく意味がないだろ?」



セレスティア「..............」



セレスティアは言葉を失った。

ただただ信じられなものを見るような目で、アーサーを見つめた。

そりゃそうだ。

舞踏会に臨戦態勢で来るバカなんて聞いたことがない。

ルシウスは両手で顔を覆い、申し訳なさそうに呟いた。



ルシウス「.......言いたいことは......わかります.........」



そう、舞踏会に行くときも戦闘の準備は怠らない。

これがユースティティア皇族である。

ルシウス........本当に苦労してるな..........





ーーーーーーーーーー


一方その頃、深紅の天秤はーーーー



ラグナール「魔神はまだ見つからんのか!!」



ドンッ!!


ラグナールが机を叩く。


その振動で食器が落ちて、ガシャンと音を立てて割れた。



リッパー「も、申し訳ありません!!」


クロード「総力を上げて探しているのですが......捜査に難航してしまって.........」



そう、魔神は封印された後、何者かによってその多くが消滅させられてしまっていたのだ。

それ故、今現世に残っている魔神の数は.....元々封印されていた100柱の魔神のうち、僅か3柱しか残っていないのだ。

しかも生き残った魔神が封印されている場所は軒並み魔素濃度が薄かったのだが、そんなことを知らないラグナール達は、より強大な力を持つ魔神を求めて魔素濃度が濃い場所を調べていた。



ラグナール達の間には重い沈黙が流れた。

ユースティティア皇族を抑えるには、もはや魔神に頼る他はない。

しかし、当の魔神はどれだけ探そうと手がかりすら見つからない。



ラグナールは頭を抱えた。




ーーーだが、彼らにはまだ、とある手段が残されていた。



ジャック「ーーーーー魔神を召喚すればいいのでは?」



静かにそう言い放つジャックの口元は、怪しくほくそ笑んでいた。



まぁ見るからに黒幕だよね。


でもごめんジャック......魔神を滅ぼしたのは実は..........

作者です!




遂に魔神が召喚される!?

アーサー達はどうなっちゃうの!?



次回!!「第十七話 舞踏会編2」よろしくお願いします!!

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