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第十三話 クラウンタルト エイト&アーサー編

【アイリス視点】


セレスティア「まぁ、素敵ですね!応援しますよ!」


ーーーーーえ?


どういう意味?



ま、まさか......私じゃ相手にならないということ.......?


うぅ........私だってわかってるけど............




ーーーーーん?


アイリス「セ、セレスティアさん.......?

その鶏をどうするつもりですか.......?」




セレスティアさんは当然のように答える。



セレスティア「少量の鶏むね肉を生クリームやグラニュー糖と共にフードプロセッサーでペースト状にするんです。それでチーズクリームなどちょっと味にクセがあって固いクリームと混ぜようかなと思って。」




ーーーーいや、なんで鶏肉を?



アイリス「と、鶏を入れるんですか.........?」



セレスティア「いや......私もどうかなと思うのですが.........私がタルトをあげる相手は筋肉にこだわりがある方でして......」




エ、エイトさんって鍛えてるの!?


初耳だったわ......


でも......そうよね。


鍛えてなかったらあんな動きできないし........


わ、私も鶏むね肉入れてみようかなぁ.........




そう思い鶏むね肉に触れた瞬間、セレスティアさんがすごい速さでこちらにやって来た。



セレスティア「ア、アアアアイリスさん......?

何故むね肉を.........?」



アイリス「え、私も真似してみようかなって......」



セレスティア「絶対やめた方がいいですよ!?多分エイトさん、そういうタイプじゃないし.....」



ーーーーえ?


でもさっき筋肉にこだわりがあるって.........


ハッ.......!まさかこれは......恋の妨害!?


エイトさんが私に取られると思って焦ってるの........?


でも負けないわ.....!


私だってエイトさんのこと好きなんだから!




料理長「ーーーーー私も......エイトくんに鶏むね肉はやめた方がいいと思うよ.....?」




そ、そうですよねっ.......!


勝手に盛り上がっちゃって恥ずかしいわ....!!



【第三者視点】

ーーーー一方その頃。


厨房へ行くセレスティアの跡をつけたルシウスと、鍛錬の合間に風呂に入りに来たカストルは厨房の様子をこっそり見ていた。



ルシウス「あ、兄上......!これって......」



カストル「ルシウスよ!クラウンタルトとは何じゃ?

何やら我がユースティティア家に伝わる秘伝の菓子に似ているが........」



ルシウスは呆れてため息をつく。



ルシウス「知らないんですか?

あれ、プエルグラトゥス王国では女性が好きな男性に渡す習慣があるんですよ。」



カストル「なるほど......無論、セレスティア嬢がタルトをあげる相手とは、



ーーーーー我が弟アーサーじゃろうな。」



ルシウス「........そこは察するんですね。」



カストルは皇帝国内でも特殊な立ち位置である。


無論戦場では前線に出るが、観察力が鋭く地頭もいいので軍を指揮することも多い。


故に、彼は人間の感情に聡い。


ーーーーただし常識は壊滅的であるが。



カストル「察するも何も、実にわかりやすかったぞ?

アーサーと話す時は我らと話す時より声が高くなっとったし、アーサーと偶然目が合った時には乙女のように顔を赤らめておったしな。」



ルシウス「それ以前に、何キロの離れた本邸からこの別館まで毎日歩いて来てる時点で確定じゃないですか.....」



カストル「いや、それくらいは散歩の域じゃろう。」



ルシウス「どこがですか!!」



もう一度言う。


この男、頭は切れるが常識はない。




そしてーーーーー




ガウェイン「何じゃ?」



マルクス「鶏肉のいい匂いがするな!」



風呂から上がった皇子二人がやって来た。

いや、何で来た?



カストル「マルクス兄者!!ガウェイン兄者!!

アーサーの奴がセレスティア嬢に好かれておると言う話をしてたのじゃ!!」



マルクス「詳しく聞かせろ、カストル!!」


ガウェイン「面白くなってきたのぅ!!」



“面白くなってきたのぅ”じゃねぇよ!!

風呂上がって早々に厨房に行くの何なの!?





そして、四人の皇子が揃ったということは当然ーーーーー



アーサー「ガウェイン兄者ーーーーー!!マルクス兄者ーーーーーーー!!カストル兄者ーーーーーー!!ルシウスーーーーーー!!!厨房に何かあるのかーーーーーー!?!?!?」



ギクゥッ!!



四人の皇子の間には緊張が走る。




ルシウス(ーーーー分かってますよね!?カストル兄上!マルクス兄上!ガウェイン兄上!!)


ガウェイン(無論じゃ!ルシウス!!)


マルクス(ここで口を滑らすほど儂らは無神経ではない!!)


カストル(絶対にアーサーを厨房に近づけてはならん!!)




カストル「ア、アーサー!!お主、どうしてこんなところに!?」



セレスティア(アーサー!?!?)



厨房にいたセレスティアが振り返る。

厨房の入り口には、筋骨隆々としたガタイのいい男達がたむろしていた。

そう、ユースティティア皇族である。



セレスティア(最悪........絶対アーサーには見られたくないのに........)



アーサー「特に理由はないけど........お?

おーいセレスティアーーーー!!何やってるんだーーーーー!?」



そう言ってアーサーは両手をブンブン振りながら厨房の中を覗き込んだ。

何やってんのお前ェェェェェェェェェェェ!?!?




セレスティア(最悪です.......よりにもよって一番見られたくない人に........!!)



ガウェイン「アアアアアーサー!!!」


ガウェインがすかさずアーサーの前に立ちはだかる。

だがしかしアーサーはそんな兄達の思いなど知る由もない。



アーサー「?何やってるんだ兄者?」



カストル「ア、アーサーよ!!プロテインを忘れておるのではないか!?」



アーサー「そうだった!風呂上がりのプロテインを飲まなきゃ!!」



カストル「さぁ兄と共に行こうではないか!!」



そう言ってユースティティア皇族達はゾロゾロと厨房から離れていった。

グッジョブカストル!!

偉いぞカストル!!

お前がMVPだ!!





ーーーーーそして、決戦の時はやって来る。


【アイリス視点】


うぅ.......このタルト、どうしましょう........


作ったはいいけど渡す機会がないわ..........


廊下を歩きながらそんなことを考えているとーーーーー





エイト「アイリスさん!」



ーーーーエイトさんが来た。


エイトさん!?


こ、こんなタイミングで来るなんて.....ど、どうしましょう!?


まだ心の準備が全然できてないわ!!


と、とにかく一旦作戦立てなきゃ!!(※タルト渡すだけだよね?)



そう思い踵を返したところーーーーーヒルダに止められた。


ヒルダ「お嬢様、これはチャンスです。

ここでタルトを渡してしまいましょう。」



アイリス「そ、そんなこと言ったって.......!」


無理よ......どうやって渡すか全然考えてないもの!


ドレスも普段着で髪飾りだってつけてない。


髪型は料理の邪魔にならないよう、無造作に束ねただけ。


こんな状態でエイトさんに会うなんて恥ずかしいわ...........!



でも、ヒルダは譲らず、私の背中を押してエイトさんと向き直らせた。


エ、エイトさんの顔が近いわっ.......!



やっぱりエイトさんはカッコいい(※尚、エイトはフツメンである)。


消炭色の髪は絹のように滑らかで、日の光を受けて淡く輝いている(※諸説あり)。


スチールブルーの瞳はガラスのように澄んでいて、見る者全てを惹きつける(※以下略)。



どうしよう.......緊張して来たわっ.........!



エイト「いや〜、こんなところで会えるなんて奇遇ですね!」


アイリス「え、えっと......そ、そうですね.........」



どうしよう......緊張するわ!


な、何か言わないと.........!



エイト「あれ?アイリスさん.....後ろに何か隠してます?」



バ、バレてしまったわ.......!


ど、どうしましょう..........



タルトのことがバレてあたふたしていると、ヒルダがタルトを取り上げてしまった。


な、なんで........!?



ヒルダ「実はお嬢様がエイト様にとタルトをお作りになったのです。

是非召し上がってくださいませ。」



えぇ!?今渡すの!?!?(※逆にいつ渡すの?)


は、早すぎないかしら......


エイトさんがタルトを眺めている。


うぅ......やっぱり迷惑だったかしら.......?


い、今気づいたけれど、出会ったばかりの相手にこんな告白まがいなことして良かったのかしら.....?


も、もしかして引かれるんじゃーーーーー



エイト「わぁ!美味しそうですね!ありがたくいただきます!!」



ーーーーあれ?


よ、喜んでくれた........?


よ、良かったわ.....。



アイリス「え、えっと......そ、その......じゃ、じゃあまた後で!」


そう言って私は走り去った。


少しだけ、胸が暖かくなったような気がした。






【第三者視点】


ーーーー一方その頃別館の裏庭では。


マルクス「ハァァァァァァァァ!!!」



アーサー「セァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」



ガウェイン「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」





ーーーーーガキィンッ!!!


今回は三つ巴である。


いやぁ........元気だねぇ.......


そんなこと言ってる間にも戦いは続く。


常人であれば鼓膜が破れるほどの凄まじい轟音が絶えず鳴り響き、常人であれば耐えられず座り込んでしまうほど地面を激しく揺らしている。


彼らの剣戟は速すぎて、もはや常人の目には数百もの火花が絶えず瞬いている様子しか見えないだろう。



ーーーーいや、ドラゴンボールか!!




時は流れ、現在休憩中




ルシウス「ーーーーアーサー兄上。」


アーサー「うん?」


ルシウス「セレスティア様がお見えです。」


アーサー「............なんで俺?」



君に会いに来たんだよ。

あれだけ四六時中一緒にいてよく気づかないね。



アーサー「セレスティアーーーーーー?

俺に何か用かーーーーーーー!?」



そう言ってアーサーはセレスティアのもとに走る。

君ねぇ.......アイリスちゃんに怖がられてるのそういうとこだぞ?

君にとっては軽くランニングしてるくらいなんだろうけど、普通の人から見たら新幹線並の速さで突進されてるようにしか見えないからね!?



セレスティア「べ、別に......この前立ち直らせてくれたお礼をまだしていなかったのを思い出しただけです!!」



アーサー「別に要らんが。」



言い方ァァァァァ!!!


全く......セレスティアさんが昔馴染みじゃなかったら今のでアウトだぞお前!?




セレスティア「いいから!!受け取ってください!!」


そう言ってセレスティアは真っ赤になりながらタルトを押し付ける。



ーーーその瞬間。


アーサー「わーーい!食い物(くいもん)だーーーーーー!!」



ビリビリビリィッ!!


タルトを覆っていた可愛い包装用紙は儚く散った。


秒で破くなよお前.......



セレスティア「全く.....相変わらず食べ物のことになると、子供みたいにはしゃぐんですから.......」



そう言ってセレスティアはクスッと笑う。


はい、完全に惚れてますね。




アーサー「..........む!!美味いな!!鳥ササミの味がする!!」



セレスティア「え、わかるのですか!?大分目立たないと思うのですが.......」



アーサー「ハッハッハーーーー!!俺はプロテインと肉には敏感なのだ!!

このくらいは朝飯前だぞ!!」



尚、女心にはすごく鈍い。



ルシウス「..........アーサー兄上.......」


遠くから見ていたルシウスは、頭を抱えていた。

そりゃそうだ。



カストル「まぁ......アーサーはクラウンタルトの王国側の風習を知らんからな........。」



ガウェイン「仕方あるまい。

毎年アーサーの誕生日にあのタルトを使って、家族で早食い大会を開いていたのじゃからな。」



マルクス「ハッハッハ!!最後の一つをどちらが食べるかで兄者とカストルが揉めておったな!!」



いや家族揃って何やってんだ!

しかし残念なことに......フォルティトゥード・イプサ・ユースティティア皇帝国のクラウンタルトの逸話にはロマンチックさなど欠片もないのである。


クラウンタルトを食べていたらいつの間にか世界を救っていたという史実が後世に伝わった結果、皇帝国では「クラウンタルトを多く食べれば食べるほどかつて世界を救った偉大なる皇帝のように強い戦士になれる」という逸話が広まってしまったのだ。

故にユースティティア皇族の宮殿では、毎年クラウンタルトの早食い大会が開かれ、皇子達がタルトを巡って熾烈な争いを繰り広げている。




カストル「それはいいとして.......あの二人、時間かかりそうじゃな。」



ガウェイン「うむ!!儂らが兄としてサポートしてやらねばな!!」



..........本当に大丈夫だろうか?









だがしかし彼等は知らない。

この日常の裏で、アイリスを葬るため影で動く存在がいることをーーーーー

作者です!


次回は少々シリアス回!!


アイリスを狙う連中とは.......?


次回!!「第十四話 深紅の天秤」よろしくお願いします!


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