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第十話 剣鬼と剣姫

【第三者視点】

ーーーー裏庭にて。


アルトリウス「ハァァァァァァァァ!!」


マルクス「セァァァァァァァ!!!!」




ーーーーガキィンッ!!




金属音が鳴り響いた。


そして二人は消える。



ガキキキキキキキキキキキキキキキッ!!


剣と剣がぶつかる音が鋭く鳴り響き、空気を重く揺らす。


その剣の速さは雷の如く。

剣と剣がぶつかる時に生じる衝撃波は、全てを飲み込む竜巻の如く。



男達は野太い声を上げながら、目にも留まらぬ速さで超高速戦闘を繰り広げる。



マルクス「どうしたァァァァァァァァァ!!!!

そんなものかァァァァァァァァァ!!!」



アルトリウス「まだまだァァァァァァァァァ!!!」



地面を蹴る。


その衝撃で、大量の土が天を突き刺す。


普通なら屋敷の者が飛び出してもおかしくない轟音。


だが誰も来ない。


別館の人間は、もう慣れた。


二人の男は土埃に包まれた。



ーーーーーその刹那。




アルトリウス「ァァァァァァァァァアアアアッ!!!」



マルクス「オラァァァァァァァァァ!!!」



二人の男の雄叫びを合図に、土埃は儚く消えた。


見えるのは無数の銀閃と、幾重にも重なる火花のみ。



今日もシルヴェール家の別館の裏庭では、激しい剣戟が繰り広げられる。



アルトリウス「ふぅ.......いい汗かいたな!!マルクス兄者!!」



マルクス「うむ!!やはり食後の鍛錬は最高じゃ!!」



その時、後ろから凛とした声が響く。



セレスティア「全く......食後にすぐ剣を握るなど何を考えているのです?」


アルトリウス「おぉ!!セレスティア!!」



セレスティアはため息をついた。


セレスティア「全く......少しは皇族としての自覚を持ってください。



ーーーーー()()()()殿()()。」



そう、彼の名はアーサー・フォルティトゥード・ユースティティア。

フォルティトゥード・イプサ・ユースティティア皇帝国の第四皇子である。

アルトリウスとは、彼が冒険者をするときの偽名である。



アーサーは肩を竦めた。


アーサー「おいおいセレスティア、お前もわかってるだろ?

これが俺たちユースティティア皇族なんだ。」


そう言ってアーサーは笑った。

セレスティアは少し拗ねた。


セレスティア「そもそも!いるならいると言ってください!」



アーサー「無茶を言うな、セレスティア。

そもそも俺はお前がいることすら知らなかったんだぞ?」



???「ーーーーー兄上、少し無神経ですよ。」


そう言うと、一人の少年がやって来た。

漆黒の髪は少し目にかかるほど長く、その瞳は翡翠のように鮮やかな緑色。

肌は白く、マルクスやアーサーとは違い腕も細く華奢である。

彼の名はルシウス・フォルティトゥード・ユースティティア。

皇帝国の第五皇子にしてアーサーの弟である。



アーサー「おぉルシウス!お前も鍛錬するがいい!」



そう言ってアーサーは剣を取った。

そしてルシウスに近づき剣を渡そうとする。



ルシウス「しません!それより兄上、使用人の方が“昼食の準備ができた”とのことです。」



アーサー「そうか!!セレスティア!!お前も食うか!?!?」



セレスティアは顔を顰めた。



セレスティア「相変わらず声が大きいですね.......いいでしょう!

私も聞きたいことがたっぷりありますから!」


アーサー「オイオイ何を聞くんだよ........」








ーーーーーーそして襲撃の夜。


皇子四人「セァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」


四人の男の雄叫びと共に、旋風が巻き起こる。


その風は周囲にある全てを飲み込み、その場にいた数百人ほどの襲撃者達はなす術なく吹っ飛ばされた。




そして、漆黒の髪と黄金の瞳を持つ大男が剣を掲げて叫ぶ。


ガウェイン「良いか!!!弟達よ!!

今こそ我らユースティティアの力を見せる時が来た!!!」



他三人「オォォォ!!!」



ガウェイン「我らの剣は如何なるものをも切り裂き!!!

我らの拳は如何なるものをも打ち砕く!!!

我らの血肉は、絶対不滅の刃なり!!!

行くぞ、弟達よ!!!

皇帝国の底力を思い知らせてやるのだ!!!」



他三人「オォォォォォォォォォォ!!!!」



そのあまりの声量に、セレスティアは両手で耳を覆いながらため息をついた。



セレスティア「ハァ.......相変わらず暑苦しいですねぇ.......」



ルシウス「僕も.....この声の大きさには参ってます.......」



すると四人の皇子のうち一人が、襲撃者とは違う服を着た黒ずくめの男から何かを聞いた。

その皇子は、深い漆黒の髪と燃え盛る炎のようなオレンジ色の瞳を持っていた。


カストル「ガウェイン兄者!!暗部からの報告によると、どうやら本邸が襲撃されてるようじゃ!!」



ガウェイン「何ィ!?!?」



そう、襲撃者達の本命はアイリスがいる本邸である。


“本邸から別館までは数キロメートル離れているため、本来であれば彼らが移動する間に目的は達成できる。

だが、かの帝国は軍事大国故に、皇子達が参戦すると厄介なので足止めしておいた方がいいだろう。”


そう考えた襲撃者達は、たった五人しかいない皇子を確実に葬るには多すぎるほどの人員を投入した。



必ず葬れる.......



ーーーーーはずだった。


まさか彼らも、たった四人の皇子達相手に全滅するとは思わなかっただろう。



セレスティア「ほ、本邸は大丈夫なのですか!?

エイトさんも来てるんです!それに、アイリスさんも!!」



アーサー「カストル兄者!!本邸には俺の知り合いがいるようだ!!」


カストル「何ィ!?戦えるのか!?」



アーサー「.................................戦えは、する!!!」



カストル「よォォォォォォォォォォし!!!

援護に向かってやれアーサァァァァァァァァァ!!!」



アーサー「御意!!!」



アーサーとセレスティアは窓から飛び出し、

突風を起こしながら移動する。


セレスティア(無事でいてください.......エイトさん......アイリスさんっ........!!)


数キロもある距離をたった数秒で踏破し、ついに本邸に着いた。

だが、本邸の入り口には数十人の襲撃者が屯していた。

セレスティアは地面を強く蹴り、魔力を解放した。

空中で体を回転させる。



セレスティア「ーーーーー《聖閃連牙(セイクリッドラッシュ)》!!!」



眩い閃光を伴って、白銀の雨が突風と共に降り注ぐ。

その白銀の閃光は襲撃者達を貫き、周囲にいた人間まで吹き飛ばされた。


セレスティアとアーサーはそのまま襲撃者の間を駆け抜け、本邸の中に入った。


その中にも、夥しい数の襲撃者達がいた。

シルヴェール家の私兵が戦っているので、巻き込むことはできない。



アーサー「ハッハァーーーーー!!今度は俺の番だな!!!




ーーーーーーーーセイヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」



ーーーーーその刹那。

次の瞬間には襲撃者達の首は斬られていた。

剣筋を見ることすら許されない防御不能の斬撃。

滑らかな曲線を描いて揺らめく黄金の閃光が見えた頃には、もう襲撃者の首は吹っ飛んでいた。



セレスティア(いつものことながら.......やっぱりムカつきます......)



アーサーはセレスティアの方を振り返る。



アーサー「よォォォォォしセレスティア!!!

二階に行くぞ!!」



セレスティア「ーーーーーはい!!」




ーーーーそして現在。


【エイト視点】


襲撃者A「ーーーーーどうやら、テメェの悪運もここまでのようだな。」



そう言って、襲撃者は大剣を高く持ち上げる。


クソッ.......立てよッ........僕.......!


僕がやられたら........誰がアイリスさんを守るんだよッ........!!


時計を見る。


.........もう、襲撃者達と戦い始めてから10分も経ってる........


遠くから、剣戟の音が聞こえる。


やっぱり.....襲撃者は、他にもいたんだ。


みんな......きっと自分のことで手一杯で、僕たちを助ける余裕なんてない.......


だから.......僕が守り抜かなきゃいけないのにっ........


もう......意識がっ...........!



襲撃者A「ーーーーーー死ね。」


襲撃者の大剣が、僕の頭上に迫ってくる。


............もう........ここまでかッ......!!


僕は目を瞑った。



アイリス「ーーーーーーエイトさぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」






ーーーーードガガガガガガガガガガッ!!!


突如、轟音が鋭く鳴り響く。


地面が大きく揺れ、僕は耐えきれず倒れ込んでしまった。


轟音と共に巻き起こる旋風の中に、ほんの一瞬だけ黄金の軌跡が瞬いているように見える。



襲撃者A「な........なんだ!!何が起こった!?」



僕は目を開けた。


すると先程まで僕たちを包囲していた夥しい数の襲撃者達は、大剣を持った男を除いて全員気を失っていた。

全員壁に強くめり込むほど打ち付けられていた。



...............いや、本当に何が起こったの?



目の前の光景を理解できず、床に倒れ込んだままぼうっとしていると、セレスティアさんが駆け寄ってきた。



セレスティア「ーーーーーエイトさん!アイリスさん!

無事ですか!?」



アイリス「わ、私は大丈夫です..........!

でも.......エイトさんがッ..........!!」



セレスティアさんが僕の上半身を抱き上げた。


そして首にそっと指を当てる。




セレスティア「............大丈夫、脈はあります。

とにかく医務室へ!!

外の敵は一掃しておいたので安全ですから!」



アイリス「は、はい!!」



そうして、僕は医務室に運ばれた。


だが部屋を出る前ーーーー漆黒の髪が見えた気がした。



ーーーーーーーー


【アーサー視点】



ーーーーーほう?


この俺の剣を受けて立っていられるとは.......面白い奴よ。


この国に来てから初めて骨のある奴に会ったな。


襲撃者A「.......こちら襲撃B班。い、異常事態が発生した!

救援求む!!


............!?声が........聞こえないッ.......!!

オイ!!陽動A班!!応答せよ!!陽動A班!!!」


..................?


コイツは何をやっているのだ?


いきなり通信機を取り出して叫び出したぞ?


何を焦っている?


強敵ならここに俺がいるというのに。



襲撃者A「...........ッま、まさか.......ぜ......全滅してると.....言うのか.......?


そん........な........バ......バカな............」


男は膝から崩れ落ちた。


...........ふむ、筋肉が疲れたのか?


じゃあまだ戦えるな!!



襲撃者A「う、嘘だ..........べ、別館には800人もの精鋭が向かってるんだぞ.........?


ど、どうやって皇子を守りきったと言うのだ........?


あ、あそこは.........警備が手薄だったはず.........」



ふむ、なるほど!!


800と言えば別館に来ていた奴らの数と一致する!!


どうやらコイツは勘違いをしているようだ!!


アーサー「ハーハッハッハッハッハ!!!

違うぞ襲撃者よ!!

そいつらを倒したのは我らユースティティアの戦士だ!!!」



そう言うと、男は顔を上げた。



襲撃者A「ユース........ティティア........?

ま......まさか.........我ら“深紅の天秤”の上位メンバーが.......全員.....たった五人の皇子に........!?」




おや。まだ何か誤解しているようだな。




アーサー「いやいや、違うぞ襲撃者よ。」



襲撃者A「...........は?」



アーサー「戦ったのは俺と兄者達の四人だ。

我が弟ルシウスは剣など持たん!!」





ーーーーーそう言った瞬間。



襲撃者A「申し訳ありませんでしたァァァァァァァァァ!!!!」



ーーーーズザァァァァァァァァァッ


男はなんの前触れもなく土下座した。



ーーーーーーん?


何故謝る?


意味が分からん。


俺は名を聞いただけだよな?


うーむ...........分からん!!



アーサー「おいセレスティア!!コイツは何故謝ってる!?」



とりあえずセレスティアに聞けば分かるだろ。



セレスティア「当たり前です!!!

あなた達の強さは我が国では異常なんですから!!

それに.......皇帝国の第四皇子は色んな意味で有名ですしね。」



................?


そうなのか?


そう言えば父上が何か言ってた気がする。


..............ダメだ!!思い出せん!!!



セレスティア「とにかく、戦いは終わりました。


このまま帰ってくれるなら、深追いしない方がいいでしょう。」



アーサー「そうだな!!どうせ捕虜は兄者達がなんとかしてくれるだろう!!」



そんなこんなで襲撃事件は終わりを迎えた。




シルヴェール家には再び平穏が訪れた。

作者でーす!

次回はラブコメ回!!


アイリス、エイト、セレスティア、、、、それぞれの恋の行き先は?


次回「第十一話 クラウンタルト アイリス編」よろしくお願いします!

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