3〜いざ到着!〜
――夢を見ていた。
『美央ちゃん』
その中で私は中学生で。
『大好きだよ、美央ちゃん』
同い年の稔くんと、同じ制服同士で下校デートをするなんていう、有り得ない夢を……――。
「――お、美央」
遠くから聞こえる、私を呼ぶ声。
「ん〜私も……大好きぃ……」
まだ甘い夢の中にいる私を揺さ振るのは……。
「美央起きて!着いたよ!」
「うにゃ!?」
目を覚ますとそこには咲子の顔が。
そして私は思い出す。
約二時間前に、おにいちゃんの運転する車で私と咲子と稔くんの四人で、おじさん達の運営する民宿に向かっていたことを――。
どうやらいつの間にか私は寝てしまったらしい。
「あ、ごめん」
慌ててヨダレなんか出てないか確かめる。
後ろではおにいちゃんと稔くんが荷物を下ろしていた。
も、もしかしなくても……稔くんに寝顔見られたよね!?
うぅ、恥ずかしいっ。
「咲子〜私変な顔してなかったぁ?」
どんな夢を見ていたのかもう忘れてしまったが、何だかすごく幸せな夢だった気がする。
絞まりのない顔で寝ていたような気がして、顔を赤らめながら咲子に聞いた。
「可愛い寝顔だったよ」
咲子はニコッと笑ってそう言う。
うう、咲子、本当のことを言ってぇ〜。
しかしいつまでも車の中にいるわけにもいかないので、私はとりあえず車を出た。
すると少しだけ肌寒くなった空気に、潮の匂いを感じた。
「わぁ……」
後ろを振り返ると海が見えた。
キラキラ光る水面が、とても綺麗。
前方にはおじさんたちの経営する民宿がどでんと経っていた。
築十五年の、一見したら少し大きいだけの普通の家にしか見えない民宿だ。
おじさんとおばさんが、ニコニコと私に駆け寄ってきた。
「やぁ美央ちゃん久しぶり、大きくなったね」
「豊おじさん、久しぶりです」
豊おじさんは相変わらずただでさえ細い目をますます細めて笑っている。お母さんの弟なんだけど、やっぱ全然似てないなぁ。
そんな豊おじさんの後ろでは、おばさんが荷物を運ぶおにいちゃんと稔くんに声をかけていた。
「荷物は二階に運んでね。一応男の子と女の子で部屋は分けてあるから」
「はーい」
稔くんは元気良く返事をして荷物を持ち上げた。
うわ、稔くんって結構力持ちなんだなぁ……。
あんな大きい荷物を、片手で持っちゃって。
そんな風に稔くんを見ていたら、何だかドキドキしてしまった。
別に、この旅行で稔くんとどうこう……なんて思ってはいないけど、やっぱり期待してしまう。
できれば……。
この二泊三日で、稔くんと素敵な思い出を作れたらいいなぁ……なんて、思ってしまう。
「美央、ぼさっとしてないで手伝えよ」
そんな良からぬことを考えている私の頭を、ポンッとおにいちゃんが叩いた。
「いったーい!分かってるわよぅ」
もう、おにいちゃんたら乱暴なんだから!
でも、稔くんを好きになるまでは私かなりのおにいちゃんっ子だったのになぁ。
今では稔くんのことばっか考えてる。
――恋愛って、不思議。
なんてことを考えながら、私もいそいそと荷物運びに加わった。
明日泳ぐから、今日は海に行く予定はないけど、皆で買ってきた花火を浜辺ででもしようかな……。
そんなことをウキウキと、考えていた。




