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悪口

 日曜日になって、私はおばばにデンワした。ひさしぶりにおばばに会いたくなって、老人ホームの地図をおくってもらった。


「あら真由貴! 久しぶりねぇ!」


 シセツの人にあんないしてもらってへやに入ると、おばばは顔いっぱいにえがおを作った。


「元気だった? 勉強はちゃんとできてる? 何年生になったんだっけ?」


「三年生。勉強はふつう。おばばはどう?」


 私はおばばがいっぱい質問したからたくさん答えた。

それから私も、おばばを真似して聞きかえした。


「そう、真由貴も大きくなったわねぇ。……おばばはね、もう足腰が弱くなってベッドから起き上がれないけど、それなりに元気よ」


 おばばはフフっと顔をしわだらけにしてほほえんだ。

それからまた、たくさんの質問を私にぶつけてくる。


「うん、学校? 今は美玖ちゃんといっぱい遊んでるよ。金曜日に二人でさかあがりのれんしゅうして、やっとできるようになったんだ」


「そう! それはすごいわねぇ! 真由貴が楽しそうでなによりだわぁ」


 私の話を聞くたびに、おばばはニコニコとうなずいた。

私と話をするのがうれしくてうれしくてしかたない。そんなきもちがつたわった。

だから私はいっぱいおばばにおしゃべりすることにした。


「あっ、ねぇおばば。あのね、新しい家族ができたんだよ」


「……は?」


 いきなりおばばの顔がこわくなった。

なにか私のことを嘘つきでも見るような目になっていた。

私はギョッとしたけれど、それでも早く見せたくてランドセルをあける。


「ミケ。公園でひろったんだ。こいつ死にそうだったから、私が世話してやることにしたの」


「あ、ああ……なんだ猫の話だったのね。ちょっと真由貴、びっくりさせないでよ」


 おばばのこわい顔が、またニコニコえがおにもどった。

私はほっとあんしんして、おばばの目の前にミケを持ちあげる。


「ミケはね、おばばと一緒でおばあちゃんなの。もう15さいなんだって。私よりレディ。お母さんにはすててきなさいってしかられちゃったけど、こいつが『たすけて』って鳴いてたから、ぜったい飼うって言ってやったんだ」


「……あら、そう。真由貴、あんたはあの女と違って優しいのね」


「えっ?」


 お母さんの名前をだしたとたん、おばばのニコニコがまた引っこんだ。

はりみたいなとがった目で、私をじっと見つめている。


「いい、真由貴? あんたはあの女のこと信用しちゃダメよ。あんなコナシの女、礼司と結婚させるべきじゃなかったわ」


 いきなりおばばはお母さんの悪口を言った。私はきょとんとしてしまう。


(“コナシ”ってなに?)


 でも聞いちゃいけない気がして、けっきょく私はミケをだいたまま口をとじることにした。


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