夏休みの会話の続き 身勝手な人形編
続く翁の言葉。
「そう、負けた、壊れた手下を幾ら集めても、戦力には成りはしませんやろ」
「そやけどー」息を継ぐ。
「訳が分からぬまま殺された怨念、それを集積できれば…」周囲を見回す。
「人の思念は条件次第では、掛け算の掛け算が見込めまっしゃろ」
「つまり何倍、いや何十倍の効果がある、という事や」
「今になって思えば…」
「男」は続いて言う。
「己の使い捨ての手駒を増やし」指を一本折る。
「言いなりの兵士を量産し闇に売る」二本目の指も折る。
「そしておそらくは、『Dr』、そして『牧場主』への…」
「『素材』の提供も兼ねてますね」三本目の指を折る。
「一石、何鳥なんですか」
「…まったく、狡賢い」溜息をつく。
「そんで、あんたがた、急いだほうがよろしいで」
翁の声に、答える「男」。
「はい、さっきの座敷の人形の爆発から見て…」
「明らかに我々を察知したはず」
「翁様、ありがとうございました」
深々と頭を下げる、それに続くシロン。
ママも渋々、頭を下げる態。
「ああ、あんさん方にはとんだ馳走やったが」
「あんじょう、お気張りやす」
「お菓子、ごっつぉサンでしたっ!」明るいシロンの声。
「世話になったの」最後は微笑みのママ。
…
シロンの泊まるホテルへと、タクシーで向かう三人。
「もう、明日にも接触してくるかもしれません」
「急いで対策を練らないと」焦った声の「男」。
シティホテルの五階、シロンの部屋へ向かう。
「ねえ考えたんだけど」バーのママの姿のママ。
「『人形 結界』なんて相手にしないでさあ―」
そしてにょっきりと出る狐耳。
「わらわがひとっ飛び、結界を飛び越して」
「真ん中の『冥子』を打ち倒せば済むのではないのか?」
ちょっと周りを気にする「男」。
「その『冥子』が本物、ならばいいんですがね」
本物の、言葉にピクリと耳が動く。
「ふん…」エレベーターに乗り込む。
「そうか『人形遣い』、つまり身代わりの可能性大、じゃというか?」
「間違いないでしょうね」ボタンを押し扉が閉まる。
「ヤクザの組を四つ、捻りつぶし、暴走族を三つ、全滅させたといったでしょ」
「幾ら考え無しの無法者でも、そんな無謀な抗争を繰り返しますかね?」
チン、エレベーターの扉が開く。
「つまり、色々戦法を替えても、通じなかった、が正解でしょう」
「…一筋縄ではいかぬかや」
ホテルの部屋の扉を開ける。
入って行くシロン、続くママと「男」。
「とにかく―」
言いかけてぎょっとする。
いきなり、シロンの頭に犬耳が現れ、髪に白い毛がはじけたのだ。
足を止める三人。
部屋のテーブルの上に、
一つの童人形が置いてある!
見る間に、人形の眼が動き、口がカタカタと動く。
「お初に御目にかかります」
「『京終 冥子』でございますわ」
驚きが、部屋の中を支配する。
何とか言葉を絞り出す「男」。
「こ、この国にいない筈じゃ?!」
「貴方様如きに、わたくしの居場所が分かる筈など―」
「有りえません事よ」
冷たい風を正面から浴びせるような、言葉。
「責任を取りなさい」
いきなり言う。
お互いを見るしかない三人。
「私のお人形を爆死させた事を!」
何だか分からなくて、言ってしまうシロンの声。
「いや、アンタが爆死させたんだろっ!」
「貴方様如きの為に、最愛のお人形を失ったこの悲しみ」
「分からないでしょうねっ!」
なんだそれ?
分かるハズねーじゃん。
コミュ障か、コイツは?
戸惑いと、混乱のみんなに更に告げられる言葉は…
「選びなさい」
見事に「何を?」×3、が立ち並ぶ。
「死ぬか」
「殺されるか、を」
余計に、全く、わからない。
ちょっと待て、その選択肢に、何の意味があるんだ?!
三人の思いを合わせたような「男」の問い。
「何で私たちが、あなたに従わないといけないんです?!」
言うが早いか、その時、
ドン!
爆音が響く。
「男」は慌てて窓に駆け寄りカーテンを開く。
向かいのビルの一階下のオフィスと思われる部屋、そこから激しく煙と炎が噴き出ている。
「―!!」 激しく振り向く「男」。
身構える他の二人。
全くゆるぎない人形の声。
「選びなさい」
「死ぬの?」
「殺されるの??」
歩み寄る「男」。
「だから一体何のこ…」
ドォン!!
また爆音が響く。




