夏休みの会話の続き 「結界」の正体編
「…シロンさんの言う通りですよ、訳が分からない」
「もしかして、周囲の人形を全滅させるのが、目的?」
「でも、一体何のために、そんな回りくどい事を―」
首を傾げる「男」。
「わざと弱い手下、人形を敵に壊させて…」
「そして敵の油断を誘い、反撃、という流れじゃが?」
腑に落ちないママ。
「でもー」
「やられた人形の、残った力を合わせてもー」
「『攻撃力10000,HP30000のキャラ』、なんかになるカナー?」
シロンの当然の疑問。
「うむ、何か手品のタネが、二つも三つも要るであろう」
「そうですね」
うなづく三人。
「ほっほ、では…、その『手品のタネ」お教えしまひょ」
そして、翁は「男」の方を見る。
「では、お頼みもうします」
「え、い、いや私は何も…」うろたえる「男」。
「あの『冥子』はこの数年、外国に足繫く出かけておるそうやが…」
「何をしに行っているか、御存知でっしゃろか?」続く翁の問い。
「いや、残念ながら」首を振る。
「おぬしでも、分からぬのかや?」ママが尋ねる。
「世界中に悪い友人が一杯いるであろうに」
「いや、だからこそなんですよ、今回は」
「男」の否定文に問いかけるママ。
「どういう事じゃ?」
「ヤバイ仕事や裏社会でも、物と人の流れがあれば、何らかの情報は必ず伝わってきます」
「でも、彼女に関してはそれがほとんど無い」
腕を組んでしみじみ言う「男」。
「…、まあ、ここまでとなると、考えられるのは、ほぼ一つなんですがね」
「ふん、それは何じゃ?」
「『軍事』ですよ」
あまり見ない真面目な顔。
「それは、ある意味人の生き死にに関わる、一番非道な分野です」
「国家という人間の団体が、一番隠したい『秘部』であり『恥部』ですからね」
「そんなものにあの『冥子』が関わっておると?」
ママの問いに答える「男」。
「そうでないと、この情報の少なさは、考えられないんです」
「…そう、それですわ」
「わしが、貴方さんに話を振った訳は…」
いきなり言われて驚く。
「どういうことです?」
「あと一言、わしが話せば、皆さんにも合点が行きまっしゃろ」
「…そんで」溜息でもつきそうな声色。
「冗談でも言わな、話を続けられん、と言うた意味もな―」
「あの、一体?」息を呑む「男」。
「自作の人形を操る、それが『冥子』の当初の『異能』やった」
「しかし、おそらく数十年前、それ以上の『異能』を手に入れた」
「それは―」
息を吸い、言葉を探すような翁。
「人を人形にし、人形を人にする『異能』や」
座は静まり返る。
「一言でいえば、人間から心を奪い、それを人形に移すんや―」
無表情で続ける翁。
「つまり、心を失った人間が一人と、心を持った人形が一つ、出来上がる」
一瞬ののち、三つの叫びが同時に上がる。
「…え、その人形を、まさか?」
「わざと、壊させると?!」
「…そして、その人間を、兵士に?」
「そう『冥子』の『人形 結界』の…」
「周囲の人形たちは『それ』なのや」
「そして心を奪われた者の行く末も…」
「秘密裏に売り渡し―、戦場に駆り出され、言うがままの『鉄砲玉』ですか」
「男」の叫び。
「それを平然と提供するのですね、『冥子』っ!」
「ワケ、分わかんないまま、人形に封じ込められて、自由を奪われて…」シロンがうめく。
「そして―、知らぬ間に、理不尽に殺され…」吐き捨てるように言う「男」。
「さらにその痛み、怨念までも、弄ばれ、利用される」声を落として言うママ。
「そうや、それが最後に出てくる『攻撃力10000,HP30000のキャラ』の正体や」
「こんな外道は他に居まへんやろ」




