敵幹部との会話 最終編
「もう分かっていますよね。私がここに現れたのは偶然ではない」
「この車に当りをつけてきたのですよ」
笑顔が消え『denn』に指をさす「男」
「本当の『窓の能力』の持ち主はあなたのお姉さん」
「しかしその人は行方不明」
「そしてあなたが行くところ、この車がある」
ふ、と復活するにやけ顔。
「本当はね、いつあなたに撃ち殺されるかヒヤヒヤしてたのですよ」
「でもさすがに、あなたにとって、大事なこの車に傷でもつけることはできなかった」
後ろを振り返り、車を見返す。
「九尾狐を威嚇、牽制するための強力な拳銃、それが見事に裏目に出ましたね」
「さて―」
再度消える笑い、そして問い詰める。
「普通ならお姉さんがあなたに協力し『異能』を提供している、と考えられますが…」
「こんな軽トラックの後部、それも冷凍冷蔵車のこんなスペースに、いらっしゃるんですか?」
首を振る「男」
「いや、この中に居る、いや、『有る』と言った方が良いでしょう」
「きさま!」『denn』の叫び。
「あなたは実の姉を、身内を売った、いや―」思わず一歩踏み出す「男」。
「そ、それ以上、言うな!」
うろたえる悪の幹部。
「いえ、言わせていただきますよ、『異能』だけを売る事は、どういう事かを分かって、あなたはお姉さんを―!」
叫び進み出る「男」
「…掛ったな!」
言うと『denn』は、ばっと、車の方に身を投げ出す。
そう、「男」が前に進み出た分、後ろの車との距離が開く。
そしていま位置的に、マグナムの銃口は車に向いていない、「男」だけを狙える!
「くたばれ!」
思い切りトリガーを引く!
―カチン!
響いたのはマヌケな空音のみ。
「―な!」
驚いて立ち上がる『denn』
「不発?!」
「いえ、違いますよ」
「男」が手を開く。そこから零れ落ちる一発の弾丸。
「あなたはどうしても、私を車から遠ざけたかった」
「だから私が少しでも車から離れたら、ふふ、これ幸いと攻撃をしかけた…」
「…私の『異能』の事など忘れてね」
「…すみませんが、掛かったのは、あなたですよ」
「攻撃力、派手さはゼロ。見た目は本当にしょぼい『異能』です」
「でも私は気に入っているんですよ」
本当に気に障るにやけ顔だ。
「思ったより凄いでしょ、二、三mの範囲の物をどうにでもできるなんてね」
「このように優秀なあなたを出し抜けるんですからね」
「さあ、勝負はついた様ですね」
「一緒に来てもらいましょうか」
言葉も出ず、打ちひしがれたような『denn』はわずかに顔を上げるだけ。
「私のスポンサーがあなたに随分、興味を持っていましてね」
「ああ、ご心配なく。解剖されたり…」
「脳髄を取り出されて分析される事はないですから、ね」
「では―」
そう言い、歩み寄る「男」
―ピピピ!
いきなり響くアラート!
上を見上げる、そして…
…「男」は、ばっ、と手を上げる。
上から落ちてくるワイヤーを掴む。浮き上がるその身体。
―ブゥン!
と、今居た駐車場全体が光を放つ、そう「田」の模様に!
―ガッシャアン!
破壊音と共に、駐車場に会ったモノは全て消え失せた。
数秒遅れたら、「男」も巻き添えだったろう。
「容赦なしですね」ため息をつく。




