転校生?との会話
何か怪しい雰囲気のまま、時は進んで行く。
いや、何が怪しいのかが、分からない、という感じか?
何だか大事なことが、一つではなく二つ三つと抜け落ちている、そんなもどかしさのような…
しかしいつもの退屈な授業の時間は、いつも通り過ぎていく。
…キーンコーン、カーン、コーン
そして昼食の時間、売店でパンやおにぎりでも買うか、あるいはお弁当持参の楽しい時間。
女子連中は各々の机を寄せて、いくつかの塊となり、姦しい会話。
男子は個別か、あるいは四・五人がぼそぼそと会話しながらの昼食。
しかし机を寄せ合っていないのが特徴か。
やかましいほどの昼食時の会話、その隙間に、ちら、と転校生を見るシロン。
他の男子の声かけにいちいち会釈して、持ってきた昼食を広げている。
それは、一個のおにぎり、それも彼の顔程もある…!
…一体、誰が握ったんだ?、というほどの迫力のおにぎりだった。
いや何か、もっと大きな存在が、指先だけでひょいとつまんだような影が見えたような…
ぶるぶると首を振るシロン。
しかし何となくそのまま、何事もなく終業…
…キーンコーン、カーン、コーン
そして、普通に下校時…
いつものように他の女子に囲まれているシロン、
「ねー、ねぇ、いつものやってー」
「いいでしょー?!」
「―モッチロン!」
it's showtime!!
バックパックを背負ったまま、くるりと身体をまわす。
一筋の白いメッシュが入っている肩までのワンレンの黒髪。
その一筋が跳ね上がり、見事に広がる。白いベールに一瞬覆われたようなシロンの頭部にせり上がる白い犬耳。そして背中の下、腰辺りに現れるお茶目な白い巻尾。
「ハァーイ、犬耳女子、シロンだよー」
わーっ、と周囲が拍手する、それからは撮影とインタヴュータイム。
会話、写真、お話、そしてスマホの列…
その時、あの『転校生』がぼそりと言う。
「―あ、ちょっと気になる事があるんだけど」
「なーにぃ?、何でも訊いてよっ」
アイドル気分で、ご機嫌のシロンが、ギャルピで明るく答える。
「じゃ、遠慮なく、えーと…、やっぱシロンは―」
「犬みたいに、乳首が十個あるの?」
一瞬時が止まる、いや、止まらざるを得ない!
…
それを破ったのは当のシロンだった。
つかつかと転校生に歩み寄り―
ガシッ!
その胸倉を掴み上げる!
転校生の足が地上から数センチ浮かび上がるほど!!
「アンタァ、この清純な乙女にナニ訊いてんだ、ああんっ?!」
…その態度の、どこが清純なのだろう?、それに、何でも訊け、った気がするが??
「きょう会ったばかりのアンタに、何で乳首の数や色を訊かれなきゃなんねえんだぁ?!」
…いや、色は訊いてないだろう。
「色なんてどーでもいいだろ。ええっ?!、ピンクで何が悪い!!」
―また、時が止まってしまう。
ピンク…
ピンクなんだ―
渦巻く囁きの声。
シロンの頬が真っ赤に染まっていく。
ばっと転校生を放り投げて、だだだーっと駆け出していく。




