二人組との会話 「大気圏突入編」
一方…
ぐるんぐるんと無秩序に回りながら飛んで行く二人。
「お、おい、コレ大丈夫なのか?!」
「目が、めが回るぅー、助けてくれっ!」
すると―
ピンポーン…、『これより大気圏突入モードを開始します』
ヘルメット内に、サポートAIらしい人工音声が流れる。
「おお、助かった!」
安堵する二人。
続くサポートAIの声。
『…では』
『覚悟はよろしいですか?』
「…何の覚悟だあっ!」×2、サポートAIにツッコミを入れてしまう。
…パシュ、パシュッ、プシュ、プシュー
二人のスーツの表面の方々にある僅かな突起から、細かくガスのようなモノが噴出される。
するとみるみる無秩序な回転が収まっていく。
『Ⅹ・Zモーメント安定、前後転停止。Yモーメント数値0.3、誤差範囲内…、姿勢安定を確認』
「よ、よかった!」
「はあ、はああっ、助かった」
ほっとする二人。
はあ…
はあ―
しばらくは荒い呼吸の無言が続く。
…
―しかし、
「シカトすんじゃねぇっ!」
絶叫に破られる沈黙。
「な、なんだあっ!」
きょろきょろ辺りを見回してしまう二人組。
「アンタら、ナメてんのっ!」
サポートAIの罵倒が響く。
「なんで、あたしに感謝の言葉ひとつ無いのよ!!」
「ええ?!」
「はぁっ?」
ナニ言ってるんだ?!
「そのケシ粒アタマじゃ、わかんなーい?!」
「いま、姿勢を安定させたのはダレ、誰よっ?」
「―そう!、最新鋭AIのぉっ、ア・タ・シよ!!」
なんか「異常」な最新鋭だ。
「だいたい、あたしがサポートしなけりゃあんた達なんて―、ゴミクズよ!」
「だからぁ、感謝しなさいよ、感謝が当然!」
「そぉっ、それが真理、真実ぅっ、さあ、感謝、感謝!、さあぁっ―!!」
ひたすら混乱する二人の思考!
サポートAIが職場のお局様パターン、い、いや、メンヘラ…、ど、どうすりゃいいんだ?!
「…はっ!」なんか一瞬の沈黙、のあと…
「―あ、また、やっちゃった―、つ、つい、興奮しちゃって…、い、いつもそうなの、アタシいつも直そうと思ってるんだけど、な、直らなくって…」
…なんか「異常」に反省し始める最新鋭AI。
「だめだよ、アタシぃっ、強くならなきゃ!、ゴミクズなんかに心惑わされないって―!」
…反省しても、あくまで俺らは、ゴミクズ、なんだー
「そうよ、『あのヒト』に誓ったじゃない、強くなるって!!」
AIにとっての『あのヒト』とは何なのかすごく気になる、が、訊いたらもっとややこしくなるのは眼に見えている!
訊きたい、でも訊けないもどかしさっ!
しかし―
プロテクトスーツ越しにさえわかる気流の流れ、そして、スーツ内の温度が徐々に上がってくる。
ゴミクズどころか、このままでは燃え尽きて炭クズだっ!
仕事をしてくれ!、言いたい、でも言えない、もどかしさっ!
おおいっ、面倒くさいなあ―、このAI、何とかしてくれよお!
二人の内心の嘆きが聞こえるよう。
だが―!
「あああああああー!」いきなり響く絶叫!!
思わず耳を塞ごうとするが、宇宙服越しにはムリ!
鼓膜破壊寸前でも耐えるしかない理不尽。
「…よぉし」
「―吹っ切れたぁ!」
「は?」
「仕事、頑張るぞっ!」
「え?」
「コホン、―これより大気圏に突入します、カウント、10,9,8…」
「勝手に自分で落ち込んで、勝手に回復するなあーっ!」
「切り替え、早すぎ―!!」
さすが最新鋭AI、なのだろうか?
ズッ―! スーツの胸のあたりの平たい箱から長い棒が突き出る。
『緩衝材強度、チェックOK、強化フィールド展開、確認』
その先に、パラパラパラっと大きな銀色の折り畳み傘が広がる。
「Atmospheric Entry、GO!!」
その傘の先がまたたく間に、赤く輝き燃え始める。
『大気圏に突入しました。プラズマ流による高温状態がおよそ27分間継続します。注意してください』
「注意って、どうやるんだ?」
『気をつけて下さい』
「だからどうしろと?!」
『…(チッ)うるさいですね、支援やめちゃいますよ?』
「…AIが舌打ちって、オイ」
ホント、なんか「異常」な最新鋭AIだ。




