家族の怪しい会話
「待たせたの」
DKのテーブルの椅子にちょこんと座る乳児、その前に暖かいミルクが満たされた大きなマグカップが、ドン、と置かれる。
待ちかねたように両手で持つ赤ん坊。そのモミジのような小さな手には、マグカップはまるで大ぶりのバケツのよう。
しかし構わず乳児は口をつけ…
ごきゅ、ごきゅ、ごく、ごく、ごきゅん―
豪快に飲み干して行く。
プハーッ!
『うまいっ、五臓六腑にしみわたるうっ』
何回も同じセリフは言いたくないが、本当に赤ん坊らしくない!
テーブルのはす向かいに腰かけている「男」は呆れかえりつつコーヒーカップを口元に運ぶ。
「牛乳をよくそんなに美味しそうに飲めますね」
ミルクが大嫌いという嗜好が透けて見える発言。
しかし男の横で狐耳が笑い揺れる。
「何を言っておる、今のは牛乳などではないぞ」
「わらわの『母乳』じゃ」
―ブッ!
思わずコーヒーを吹き出す男。
「何を慌てておる、さてはおぬしも飲みたかったのかや?」
苦笑の後の、冷たすぎる目線。
「…やらんぞ」
ごまかすように、布巾を取りテーブルを拭いていく男。
一方、「子供」は―
『おお、力が漲ってくる、さすがママの母乳!』
腕に筋肉が盛り上がり、力こぶを作って見せる。
「ほほほ、頼もしいのう」
手を叩いてほめたたえるママ。
乳児がマッチョなんて、本当に赤ん坊らしくな…、ふう…
男はもう言うのが馬鹿馬鹿しくなり、止めた。
「ふふふ、この態度と言いざま、まさしくおぬしそっくりではないかや」
そ、そう言われれば、そうかもしれないが―、
展開の速さに理解が追い付かない男、だが、ふと思った疑問。
「そういえば、『無限の可能性』を、秘めているんだ、よな?」
うなずく子供。
「ならば、極端な話、世界を滅ぼすような『最終兵器』にでも、なる事が出来る、とか?」
『うん、できるよ』
あっさり肯定する。
『まあでも、《最終兵器子供》になるには、これからよっぽど経験値をつんで、生命力を蓄積しないと、地球を滅ぼすことはむずかしいね』
いや、滅ぼして欲しくないんですが…
「残念ながら今のこのレベルで兵器化しても、うーん、一都市を壊滅できるかどうかかな、ははは」
乳児が、どうやって都市を壊滅させるのだろう?
変なところが気になってしまう男。




