親子の初めての会話
寝室のベッドの上に、「それ」は居た。
なんだろう、無理に一言でいうのなら…
「巨大なウズラの卵の、思いっ切りピンボケした写真」―とでもいうのだろうか?
ぼやけた大きな塊、表面の境界は定かでなく、うごめきなのか模様の変化なのかわからない、おかしな動きが見て取れる。
「な、なんですかこれは?」
つい口走る男。
「おや、酷いパパじゃの、自分の子供を『コレ』呼ばわりとは」
目の前のこの存在を、自分の子供と思える「パパ」は、この世には存在するのか?
男はひたすら戸惑う。
「何でこんな姿を?」
「それこそ酷い言いざまじゃの、自分の言うたことを忘れたのかや?」
「『無限の可能性』と言うたであろう」
…た、確かに言いましたが、これと何の関係が?
男はまだまだ戸惑う。
「分からぬか? 『無限の可能性』、それは何にでもなれるという事、それであるがゆえ、今は『何者でもない』という事なのじゃ」
まあ、その通り、あまりにも正体不明すぎる、でも…
「…そ、それでは、どうすれば?」
男の言葉に応えるように、『子供』の表面に白い文字が、メッセージらしきものが浮かび上がってくる。
それは…
『キーワードを入力してください』
…???、男の戸惑いは最高潮に―
「ほれ、子供が求めとるぞ、『方向性』くらいは示せとな」
「ちなみに『キーワード』を示してこの『子』を導いてやれるのは、わらわとお主だけじゃ」
ママは男の耳元にささやく。
「え、そんな単純な…」
「最初の一歩ゆえ、簡略で良いのじゃ」
何となく頷いてしまう男。
「ほれ、行くぞ」
ママと男は、それに、『子供』に手をかざす。
「「赤ん坊」」!!
「Accept!」
何か嬉しそうに『子供』の表面に文字が踊り、「それ」の姿がみるみる変わっていく。
そこには「赤ん坊」がいた。
CMやポスターなどでよく見かける、紙おむつを履いた、いかにも赤ちゃん、典型的な乳児らしい「赤ん坊」!
「赤ん坊」はきょろきょろと一瞬辺りを見回すと、ふ、と含み笑いをして立ち上がる。
『うん、イメージ通りの典型的な乳児だね、ありがとう』
挙動は、全く乳児ではないが―
『初めまして、あなた方の子供です、今後ともよろしくお願いいたします』
深々とお辞儀する。
いや、だから全く乳児じゃないって―!




