すごく怪しい客と「男」の会話
ドガッ、ドゴォンー、
邪魔な部屋の壁を打ち砕き、男の倒れ伏す部屋に歩を進める巨体。
のしのしと動かぬ男に近づく大猿妖。
しかしその時、アーマーの頭部に赤い警告灯のようなモノがピカリと光り、男の身体がびくりと動く。
首を振りながら、ゆっくり起き上がる男。スーツからの緊急警告でもあったようだ。
やがて顔をおおう鉄仮面がゆっくり左に開き、血がにじむ男の唇が笑う。
「ふう、非常装置の作動は問題ないですが…」
「耐衝撃性能にはやや、難あり、でしょうか」
立ち上がろうとして、よろめき膝をつく。
胸を押さえる。
「ふ、肋骨が何本か逝ったようですね」
仕方ないように、どかり、とあぐらをかきぼやく。
「開発室にはちゃんと言っておかないといけませんね」
しかし男の言葉など無視して近づく巨体。…そんな未来は存在しない、といわんばかりに。
男は、ふと、右手を伸ばし手のひらをかざして言う。
「…もう止めませんか」
「なんだ、命乞いか?」
「死なせたくないのです」
「フン、やっぱり命乞いか、『死にたくな…』、うん?」
巨体は首をひねる。言い間違いか、と思うように…
「なんだその、『死なせたくない』というのは?」
「言葉通りですよ、このままいけばあなたの命は、終わります」
一瞬キョトンとした後の猿顔の大爆笑。
「ふ、ふはははっ、何を言いだすかと思えば!」
「その言い方…何か、お前には、一発逆転の切り札でもあるとでも言いたげだな?」
「はい」
真顔で頷く男。
しかしかえってあざ笑うような猿顔。
「ほっ、面白い、そんなものがあるなら見せてみろ」
男のスーツのベルトの左辺りのポケットが開く、収納されていた長い銃身の拳銃のようなものを取り出す。
一瞬キョトンとした後、意地悪くニヤリと笑う。
「言っておきますが、これを使えば―、あなたは真黒な、絶望と後悔のうちに、その人生、いや『猿生』を終えることになりますが、いいのですね?」
「ごたくをぬかすな、やって見ろ!」
苛立って詰め寄ろうとする大猿妖。
ドバシュッー!
男の手の拳銃のようなモノが火を噴く。
「―ム?!」
チクリとした痛み。巨猿は己の左ひざ下を見つめた。なにか太い針のようなモノが刺さっている。
「小賢しいわっ、フンッ!」
気合を込めると脚の筋肉が盛り上がり、カラン、と針が脚よりはじき出される。
「狙い損ねか…、いや、この針の形、フン、毒物か?」
「見くびるな!、分かる分かるぞ、この身体、九尾の命を得た身体!どんな毒でも効かん!!」
のしのしと男の目の前に近づく巨体。
「最後の手段さえ空振ったようだな」
「捻りつぶされる覚悟は、できとるか、うん?」
かまうことなく男はまるで独り言のようにつぶやく。
『玃猿』さん、あなたは不思議に思いませんでしたか?
ママの居るところがすぐに分かったのは偶然としても…
…私が、こんなパワードアーマーをすでに用意できていたことは、偶然ですかね?
何を訳のわからないことを!
お前がくたばる事に変わりは、ない!
それでも続く男の言葉。
私はあなた達が来ることを、数日前から知っていたのですよ。
何故だと思います?
あなたを後押ししている「組織」からタレコミ、があったのですよ。
だからこのように事前の準備ができたのです。
驚愕の表情が一瞬浮かぶが、すぐに―
ふ、ふふふ、危うく惑わされるところだった
口先三寸の虚言、そんなもの、信じられるか!
振り上げた右手に力をこめる。
拳が更に巨大化する!
ひねりつぶしてやる!!




