怪しい客と「男」との会話
そこは何十年前に建てられたマンション。しかしもはや住む人もほとんどなく、バブル期の豪華さも空しいその部屋たち。
灯のついたその一室に、ママは連れ込まれる。
その身体は古びたベッドの上に、どさりと投げ出される。
「ねえ、これ外してくれなーい?」
動かぬ身体を気にも留めないようにママは彼らに話しかける。
「アンタらの好きなことなんでもしてあげてもいいわよ」
「アンタらの気に入らない奴ら、何人か、タダで〆てあげるからさあ、ね、それで手を打ってくんない?」
それには答えず、『玃猿』はギラリと、大ぶりのナイフを光らせる。
「アンタ、そっち系?、痛いのはヤなんだけど」
「言っただろう、我々の勢力拡大の力に、いや『生贄』になってもらうと…」
「なによそれ、言ってるでしょ、アタシの身体でも力でも使ってくれていいから…、ふふ、アタシが欲しいんでしょ?」
「ああ、欲しいさ、ママー」
「ただ欲しいのは、アンタの肝臓と心臓なのさ―」
「はああっ?、何を!!」
「それを食らい、我々の力とする」
「我らは、アンタを糧として、無限に強力になり、人を支配するのだあっ!」
「アンタら、そんなことして、タダで済むと―、あやかしの仁義を踏みにじるつも…」
「そんな甘いこと! だから、人に付け込まれたんだ!!」
―ギラッ!
『玃猿』はナイフ振りかざし、ママの腹部へと―
ガンガンガンー!
その時、部屋の扉を叩く音が響き渡る。
皆がはっとその方向を見やる。
「ママ、ママあ―っ、いるんだろ?!」
「あの男」の声が響く。
「ヒック、ママが知らない男らと車にのってくのを、見っちゃったんだ~」
何か酔っ払いのようなマヌケな声が聞こえる。
ガンガンガンー!
「…ママあぁっ、わ、私と言う男がいながら、別の男とイイコトするなんて―、ゆ、ゆるさないずぉおー」
「あ、あの、バカー!、なんで…」
「あんた!来ちゃダ…、うぐぐ!」
ママの口を必死に塞ぎながら、『玃猿』が顎をしゃくる。手下とおぼしき十匹ほどの猿らしき連中が、部屋のトランクを慌しく開く。
猿の手下どもの手に光る黒光りのモノ、マカロフと呼ばれる拳銃だ。
猿たちが拳銃を構え、玄関辺りに待ち伏せる。
ガンガンガンー!
「…ママあ―!」
音と叫びは続いている。
一匹がうなずき、もう一匹が扉をバン、と開ける。
扉の前の人影に、幾十のピストルの弾が襲い掛かる!
ズキュン、バキュン、ダン、ダ、ダ、ダンー!
―静かになり、黒煙が晴れていく。
そして、
そこにあったのは、男の死体…などではなく、ロボットのような鋼鉄の姿。
「ふふ、試作品と言え、さすが軍の最新パワードアーマーです、マカロフ如きは何ともありませんね」
男の声が響く。
「感謝しますよ、マヌケな演技に引っかかってくれて」
一斉に逃げ出そうとする猿たちに男は右手を伸ばす。その二の腕ににゅっと銃口が出現し―
ドパパパパー!
激しい銃撃に猿たちが派手に吹っ飛ぶ。




