獣王襲来 【亜人種強制収容所編】 その4
どんなトップアスリートも、比べられるのが恥ずかしくて逃げ出したくなるような、圧倒的な肉体美だった。
異様なまでに筋骨隆々の男。
パンパンに膨れ上がった上半身の筋肉。二の腕。肩まわり。バキバキに割れた腹筋。
だが、ボディービルダー的なイメージとも違う。
なにより、その男の身体には、びっしりと黄金の体毛が生えている。
毛深いとか、そんな程度の体毛じゃない。
完全なる獣人族の毛だった。
光り輝く、黄金の毛並み。
ネコ科の、顔立ち。
が、うちのロゼッタみたいな愛らしいものじゃない。
猛獣。
ライオンのような顔立ちをしてる。
腕を組み、圧倒的な風格を漂わせながら佇んでいる。
ふと気になったのは、頭の上に、奇妙な帽子みたいな、ある種の茸みたいな形状のヘルメットをつけているところ。
黄金のライオン獣人がスッと目を開く。
銀色の瞳だった。
銀月を思わせる美しい双眸。
「あぁあああああ……………
あぁあああああ……………」
猫娘ロゼッタが、今まで聴いたことも無いくらいに動揺した、悲痛な声を漏らしていた。
振り返ると、ロゼッタの顔は蒼白になっている。
そのほっそりした身体を頼りなげに震わせて。
「そんな……………嘘だニャ……………
嘘だニャ!!!!!」
…………なにをそんなに動揺してる?
たしかに、とてつもない潜在パワーを感じる、過去最強クラスの相手かも知れないけれど。
「亜人種の王…………レオニダス。
誇り高き戦闘民族の王が…………
伝説のレオニダス王が…………
卑劣で薄汚いチュエルブに加担するなんて、あり得ないニャ!!!!!」
《たしかに……………。人間たちに弾圧されてきた歴史をもつ亜人種たちの王が、悪辣な人類の急先鋒たるチュエルブに加担して、秘石を狙う理由なんてありませんね》
そのとき、ピンときた。
ライオン型獣人である亜人種の王、その頭のうえに被さった帽子のような不自然な物体。
「なんらかの………洗脳をうけている?
マインドコントロールってヤツか?
あの頭にかぶさった帽子みたいなモノから、妙な気配を感じる。
思念波のような………。邪悪な精神活動を」
《あの奇怪なヘルメット、
ある種の、菌類のようですね……………。
宿主を支配するタイプの寄生生物かも知れません》
…………菌類?
てことは、《《キノコ》》って事か?
宿主を支配するキノコ……………
気味が悪いな、そりゃ。
キノコって事はギリ食えんのかな?
《リムルルの悪食でも移ったんですか?》
カシャ……………カシャ……………カシャ……………
威風堂々と佇んでいる獣王レオニダスの周囲に、6体の生体カプセルが集まってきた。
ぶしゅぉおっ!!!!!!
さっきと同じように開く生体カプセル。
内部から、6匹の獣人が現れる。
亜人種の王レオニダスに比べると、ずいぶんとシュッとした体形の獣人族たちだった。
獣王レオニダスがプロレスの世界王者なら、
ほかの6匹は10代の水泳選手って感じの体つき。
ほっそりと引き締まっているけど、キッチリ筋肉がのっているような。
そして、全員が処女雪みたいな純白の毛並みをしている。
レオニダスが百獣の王ライオンなら、
ほかの6匹は犬か、狼みたいな風貌だった。
《あの真っ白いワンコちゃんたち………
イケメン犬系男子たちも侮れませんよ。
一体一体が、強力なエネルギーを内包しています》
獣人族、亜人種のエリート戦士ってところか。
その犬系獣人たちの頭の上や後頭部のあたりにも、レオニダスの頭にあるのと同じような物体がへばりついていた。
キノコ状の寄生生物たち…………。
「ずいぶんとまぁ、えげつないやり方をしてくるな。
目的のためなら何でもありかよ?えぇ?」
《チュエルブがやりそうな手口ではありますが》
組んでいた腕をほどいて、プロレスラーみたいな構えにはいる獣王。
はっきりと俺だけを視認している。
ターゲットは、この俺のみのようだ。
次の瞬間、蜃気楼みたいに獣王レオニダスの姿が景色のなかに滲んで
フッと消えていた。
てっ……………た……………………
三歳のくらいの女の子が
裸足で敷石のうえに足をついたときくらいの、
微かな音がした。
その方向に、獣王レオニダスの巨体が出現していた。
もうすでに俺の間合いのなかに入っている。
尋常じゃない踏み込みの速さ。
そして、音もたてずにこの巨体を高速移動させる敏捷性。
神スピード力。
「…………さすが、ネコ科」
ズギャッ!!!!!!!!!!
ラリアットのような、右の剛腕で暗黒闘気のガードごとブチ抜かれていた。
ゴッ……………
ガッ……………
ざざざざざざざざ……………
航空機の墜落事故みたいな凄まじい勢いで、
俺は数百メートル先まで遮蔽物をぶっ飛ばしながら吹き飛ばされた。
《……………純粋な格闘戦闘力だけなら、アークノーガ以上》




