獣王襲来 【亜人種強制収容所編】 その3
明らかに異質なオーラを漂わせた
漆黒の爆撃機が飛来してくる。
【眠】 【獣】
という奇妙な漢字の二文字が、白く達筆な字体で装甲に刻まれている。
ひときわ巨大で、禍々しい空気を纏ったその爆撃機の底が開く。
無数の黒い指が、お互いに絡み合い組み合わさった状態から、
ザワザワと蠢きながら開くように、
爆撃機の底部に穴が開いた。
奇怪な花の開花みたいな絵ヅラ。
じゅぽっ……………ん
そこから何かが射出された。
一瞬、秘石もろとも爆砕する覚悟で、大規模な空爆を仕掛けてきたのかと思った。
……………が、
ゴバッ!!!!!!
射出された何かは、地面にそのまま着弾していた。
後方から続く漆黒の爆撃機の編隊が、
さらに6個の射出物を俺たちのいる地点の周囲へ次々と落としていった。
それぞれが、地面に着弾して轟音をたてる。
得体の知れない物体を7つ投下した、チュエルブの異形の空軍部隊たち。
そのまま、気持ち悪いぐらい整った隊列を維持したまま上空から撤退していく。
「妙なモン落としていきやがって……………
どうせロクな贈り物じゃねえだろうが……………」
《マサムネさんの戦闘力がどれほど圧倒的なのか、チュエルブの軍部も学習したようですね。
ただ、《《投下》》するだけの任務のためにあれだけの大編隊。
ものすごい警戒度合いです》
いや、俺、チュエルブに警戒されるような大それた事したっけ?
《認知症の大魔王とか、一番タチが悪いですよ》
誰が世界征服した事を忘れて【侵略おかわり】しちゃうボケ老人大魔王ですか?
《ご注意ください。
さっき感じた異様な超エネルギーの発生元が、あそこにいます。
あの落下物の元に》
なるほど……………。
特殊部隊かなんか送り込んできて、キッチリ無傷で《《アレ》》を回収しに来たってわけか。
「また………性懲りも無くちょっかいをかけてきて。
パプリカが不戦の誓いを立てているからってどこまで甘く見るつもりなの?
帰国したら国王を通じて厳重抗議してもらわなきゃ…………厚顔無恥のチュエルブ相手じゃ効果ないけどね」
リトさんがプンプン怒っている。
…………異世界にも【遺憾砲】ってあるんですね。
《ヘタレなパプリカ王の【遺憾砲】じゃ効果無いですよ、そりゃ》
落下地点に小規模なクレーターを穿ったもの。
それは、昆虫の蛹みたいな質感をした、奇妙なカプセルだった。
蛹みたいにも見えるし、干し肉みたいな素材にも見える。
SF映画に出てくるような、長期冷凍睡眠用のカプセル、
それを、干し肉状の生体素材を使って再現したような、異様な物体
のぞき窓の部分だけガラスみたいな透明な材質のモノがつかわれていて、
そこから内部にいる者の姿が微かに見えている。
かしゃ、かしゃ、かしゃ……………
物体が着弾した落下地点から奇妙な音がしてきたかと思うと、
その、サラミ肉みたいな素材をしたカプセルから、
蜘蛛の足のような無数の節足が生え出てきていた。
それだけでも鳥肌モンの光景だったけど、さらにその蜘蛛の脚を使って生体カプセルがこちらに歩いてくる。
カシャン…………カシャン……………カシャン……………カシャン……………
みんなで怖気が震っているところに、どんどんと接近。
ズンッ!!!!!!
俺たちから15メートルくらいの距離で、ソイツは急停止した。
生体カプセルが地面に接地すると、蜘蛛の脚がシュルシュルとサラミ肉状のボディーのなかに収納されていく。
プ……………シュバァ!!!!!!
物凄い勢いで、カプセルの内部から真っ白い蒸気が排出された。
スモークみたいにあたりを包み込んで、視線を覆い隠す。
…………小林幸子でも出てくんのか?おい。
《紅白仕様のスーパー小林幸子かも知れませんね》
生体カプセルが内側から開いて、どこか異国の斬新な肉料理か何かのようにその場でバラけていく……………
中にいたモノが、カプセルの中からさらに溢れ出た追加の蒸気の向こう側に佇んでいた。
逞しい体躯のフォルムが、スモークの遮蔽越しでも伝わってくる。




