獣王襲来 【亜人種強制収容所編】 その2
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しばらく続いていた平穏な馬車の旅。
のんびりゆったりと、田舎道をたどる旅路。
その安穏とした空気を断ち切ったのは、
まるっきり天変地異みたいなスケールでの異変だった。
日本晴れ。雲一つない、快晴の青空が広がっていた上空。
何一つ太陽光を遮るものなんて無いはずの空が、薄暗くなっていく。
雨怨 雨怨 雨怨 雨怨 雨怨…………………………
愚誤誤誤誤誤誤誤醐醐醐醐醐醐醐醐醐醐醐醐醐醐醐醐醐醐醐……………
聴いているだけで背筋が冷たくなってくるような不吉な重低音を轟かせて、
とんでもない数の航空機が空を埋め尽くしていた。
一匹につき10メートルもある蝗の大群が、
綺麗に縦の隊列を組みながら、空を進撃しているみたいに…………
まるで、世界大戦でも幕開けして、どこかの邪悪な国家が侵略戦争でもおっぱじめたみたいな禍々しい風景。
「なんなんだよ…………おい」
馬車の窓から乗り出して、薄暗くなった空を見上げ、思わずつぶやく。
空を覆い尽くす航空機、
そのなかの一機だった。
ぐにゅり
その装甲の一部に切れ目が入ったかと思うと、
人間みたいに、《《目を開いた》》。
航空機のなかに埋め込まれた巨大な目は、
ぎょろぎょろと黒目を動かしてあたりを観察したかと思うと、
俺たちの方に視線を凝固させた。
ねちゃぁああああああああ……………
空を覆い尽くした膨大な数の航空機たち、
そのすべての体表に口が開いた。
歯、唇、舌、
巨大でグロテスクな人間の口。
ひゃはああああああああははははははははははははは……………
げらげらげらげらげらげらげらげげげげげげげげ……………
うひょひょひょひょひょひょひょほひょほよひ……………
空を埋め尽くしている無数の航空機のすべてが、口を開いて俺たちのことを嘲り笑っている。
地獄の底で夢に見る、最低に奇怪な悪夢みたいな光景。
俺たちは馬車から降りて、この終末じみた狂気の空を見上げている。
「チュエルブ軍の生体兵器……………」
リトさんがつぶやく。
上空を覆い尽くす『生きた航空機』たち。
そのパーツのすべてが、《《生きた素材》》で出来た異形の兵器。
航空機でありながら血の通った皮膚で出来ている体表に、
チュエルブの特徴的な軍旗が刺青として刻まれている。
「でも、どうやって短期間であんな膨大な数の生体兵器を量産できたの…………?」
リトさんは、自らの口からこぼれ出た疑問に身を震わせた。
俺は思わず苦笑しながら
「あれ、明らかに俺たちのほうをガンガンに意識しているよな?」
勇者がうなずく。
「無数の関門……………人間にはとても手を出せない聖域を突破して集められた6個の秘石。
どうやら、本格的に秘石の回収にかかってきたみたいだね。
…………野蛮な、テロ支援国家どもが」
いつも穏やかで公平な勇者が、珍しく言葉尻に嫌悪感を滲ませていた。
《何かが来ます…………とてつもない存在の密度と超エネルギーを有した、何かが……………》




