レナの誕生日 スライム遊園地 その24
ぷるるるん♪
頼りなく車体をぷにぷに揺らしながら、スライムのジェットコースターがスタートする。
そのまま、半透明なレールのうえを時折ぷよんぷよんとバウンドしながら、
際限なくどこまでも急坂を上っていく。
なんか、
たまに車体がレールから外れて飛び跳ねている気がするんですが……………
これ目の錯覚だよね!!!?
《いえ、目の錯覚ではありません。
スライムのサービス精神です》
永遠に昇り続けるんじゃないか?ってぐらいにどこまでも急坂を這いあがっていくスライム車体。
もう、あたりの景色は遙かな眼下になっている。
脇腹とか、足の隙間を吹き抜けていく風。
肌が、超高い場所でむき出しになっている感覚。
東京タワーのてっぺんで、パンツ一丁になって寝そべってるみたいだ。
《どんな喩えですか?》
このエスパーニャ島の最高峰の山脈がくっきりと見えている。
俺たちの船が停泊してる港町なんて、海岸にへばり付いたほんのちっぽけなシミくらいにしか見えない。
た、た、た、高--------!!!!!!!
もうこの時点で気を失いかけているんだけど、
スライムの車体はぷよんぷよんとレールの上を軽くバウンドしながらまだまだ昇っていく。
だからレールの上でちょっと跳ねるな!!!!!
正規品の仕様を守れ!!!!!!
《風船太郎リスペクト系》
スライムに乗ってる感触が楽しいか、レナはほんのちょっと頬を上気させながらぷるぷる震える乗り心地に没入している様子。
そして、ついに最高到達点にたどり着いたコースターの車体。
あまりにも高すぎて、すぐ上を翼竜の群れが通り過ぎていった。
この位置から見ると、まるでコースターのレールが途中で切れているように見える。
俺たちの向かう先で、レールがふっつりと消失しているように。
急激な下り坂になっているという事なんだろうけど、
相手がスライムなだけに、普通にバグが起こってコースが途中で途切れているという可能性もなくはないのだ。
そして、なにより、もとより、根本的に、根源的に……………
最高到達点まで車体が至って、平行になった一瞬。
そっと、真下を見下ろしてみたときだった…………
ぷるるる~ん
ぷる~ん
このべらぼうに巨大なスライムジェットコースターそのものが、
微妙に右に左にぷるぷると揺れている事に気づいた。
真上から見ると、スライム製の鉄骨自体がフニャフニャと波打っている。
こ、こ、こ、怖-----------
衝撃的な事実に気づいてしまった次の瞬間……………
ほとんど真下に墜落するくらいの感覚で、
車体は急坂を落ちていった。
150メートルの高さから地上2メートルの地面スレスレまで真っ逆さまに下り落ちる、このジェットコースター最大の目玉ポイントだった。
あまりの風圧に、史上最大のブチャイク顔になる俺とレナ。
「あんぎゃぁあああああああああああ…………」
そのとてつもない急落下は、序の口に過ぎなかった。
ねじれたり、
波打ったり、
逆さまになったり、
何も見えない真っ暗闇のトンネルに突入したり、
大空高く舞い上がったり
地下深くめり込んだり
とにかくあの手この手の責め苦を浴び続けて、ようやくジェットコースターは元の位置に帰還した。
チーーーーーーーーン
完全に昇天している俺。
俺が絶叫しっ放しの間も、一言も声を上げずに無表情だったレナ。
恐ろしくて声も出せなかったに違いない。
さすがのレナも、今回はさぞかしヘコんでいるだろうと思って横を見たら、
キラキラキラキラ……………
レナは、クリスマスプレゼントでも受け取った直後みたいに瞳を煌めかせ、頬っぺたを上気させていた。
「……………え?」
レナは、降り場に到着したにも関わらず、車体から降りようとしない。
「……………もう一回」
「えぇぇえええええええ!!!!?」
《レナはジェットコースターに病みつきになっちゃったみたいですね》
必死に車体から脱出しようとする俺。
レナは、そんな俺を悲哀に満ちた眼差しで見つめて
「…………レナの隣……………嫌?」
だからヤメロ!!!!その悲しい瞳!!!!!
《2周目がスタートです》




