雪の女王の脳内 その36
黒い雪の女王の唇が、ほんの微かに俺に触れた瞬間、
………………ずぎゃっ!!!!!!
雪上車みたいな形態に変形したミヤコのご先祖シールドが、
黒い雪の女王を真横から轢き飛ばしていた。
「させないもん!!!」
別人のように目が座ったミヤコが鼻息荒くそう言い放った。
「いぃいいいいいい!!!!?」
のりまき博士みたいなマヌケ面になってる俺。
超強力バリアーが全開状態のご先祖シールド。それに、思いっきり轢き飛ばされたんだから堪ったもんじゃない。
黒い雪の女王は物凄い勢いで吹っ飛んでいった。
………………ミヤコって、その気になったら攻撃力もハンパないんじゃねえの?
本当は『攻撃力に極振り』女子なんじゃねえの?
ミヤコは、目が座ったまま俺の方を見つめてきて
「ミヤコはマサムネの貞操帯だから」
……………まさか、それ本気で言ってたのか?
政治家の選挙公約くらいに軽く考えていたんスけど。
《ミヤコの場合はチェ・ゲバラの政治信条くらいガチですよ》
チェ・ゲバラ級の決意で貞操帯宣言って、なにソレ?
なぜか、原初神竜に乗って駆け付けてきたリトさんの目も座っている。
「マサムネって癌腫にまでモテたいわけ?
オンナだったら何でもいいわけ?」
真紅の地獄稲妻をパリパリと帯電させながらリトさんがジメジメした口調でつぶやいている。
氷雪地獄に雷撃まで追加するのは止めて!!!!!
《ちょうどいい。嫉妬のパワーで身体を覆った氷を溶かしてもらえばいいじゃないですか》
嫉妬パワーの平和利用?
《女性の嫉妬パワーをコントロールできるとか思うなよ。
いつか焼き尽くされて白い灰になっぞ?》
どっちですか?
自前の暗黒闘気で、身体を覆った黒い氷を蒸発させる。
しかし今のはヤバかった。
口づけなんてされていたら、魂魄の領域まで凍結されていたかも知れない。
癌腫の核=黒い雪の女王は、何事も無かったみたいにピンピンした様子で戦線に復帰してきた。
指先で唇に触れながら艶笑している。
《キスのことで頭がいっぱい》
なにそれ、発情期?
しかし、どうしたもんか。
発情期の痴女みたいな表情でこちらを見てる黒い雪の女王を眺めながら頭を悩ます。
癌腫とはいえ、あれは雪の女王の細胞の一部。
むやみやたらに攻撃したら女王の脳細胞そのものを傷つけてしまうかも知れない。
ズ………………ゴゴゴゴゴゴ………………
思案していたとき、すぐ横にいた原初神竜上のレナが、
とてつもない暗黒闘気を全身から解き放っていた。
レナの心臓のなかの大魔王細胞が禍々しく赤く輝いている。
「いや、あの、レナたんはなにをしているのかな?」
無表情のまま、感情を表に出さないレナ。
だが、次の瞬間。
ズドウッ!!!!!!!
両手から、大魔王の暗黒闘気を手加減抜きの全力で撃ちだしていた。
狙いはもちろん黒い雪の女王。
小さい町なら一撃で消し飛びそうなくらいの超威力のエネルギー砲だった。
《無表情だったけど、レナが内心、一番ジェラってたんですね》
なんスか、《《ジェラってた》》って!!!?
極大の暗黒闘気砲が、黒い雪の女王を飲み込んで、そのままドーム状の大爆発が起こした。
雪の女王の脳細胞ごと消し飛ばしそうなほどの大規模爆発だった。
あーもう、知~らね。
俺は白い灰になって、シラケながら茫然とたたずむ。
《だから女子の嫉妬パワーを舐めるなってあれほど言ったでしょうが》
最初、平和利用しようとか言ってませんでしたか!!!?
グラナゴスは腰を抜かしてガタガタ震えながらレナを怯えた目つきで見上げていた。
《暗黒魔界でマサムネさんにイジメ抜かれたせいで【大魔王属性】恐怖症になってるんですね。
マサムネさんがグラちゃんにあんなことやこんなことをしてさんざんイジメ抜いたせいで》
流し読みの読者がここだけ見たら幼女を調教したド変態みたいに誤解されるでしょうが!!!!
心臓の大魔王細胞から真っ赤な閃光をほとばしらせて、
レナがさらに強力な暗黒闘気弾を発射しようとしている。
ナメック星を消し飛ばそうとしているメガネっ娘のフリーザさんみたいな絵ヅラ。
無表情のままご乱心するのやめて!!!!?
なんとか羽交い絞めにして、レナの凶行を食い止めた。
「あの…………レナさん。
怒ってるときくらい、もうちょっと素直に感情を現わそうゼ?」
「……………怒って………ない」
無表情でささやくレナ。
メガネの奥の瞳で、真っすぐにこちらを見つめてくる。
火山が噴火したみたいに爆裂してる雪の女王の脳内。
いや、言ってる事とやってる事が違いすぎる!!!!!




