雪の女王の脳内 その21
どしゅんっ!!!!!!!!!
【病魔】の母船から、棺桶のような、卵殻のような、独特の形状をした漆黒の物体が射出された。
3メートルほどの大きさのそれが、心臓内の大空間の底に突き刺さる。
なぜか、ゾクゾクと悪寒が走った。
とんでもなく禍々しい気配がその棺のような卵のような物体から漏れ出ている。
「なんだ?これ~」
エスメラルダが調子にのって、ピンク色の雪原に突き刺さったその漆黒の物体へと歩み寄っていく。
ミヤコのご先祖シールドの庇護下を独断で勝手に離れて、その棺状の物体をゲシゲシと足の裏で蹴りつける。
「脱出ポッドか?これ。
マサムネに勝てないからってあの船の操縦者が逃げ出したんか~?」
その物体の内部から漏れ出てくるドス黒くて禍々しい気配が、さらに高まっていく。
「バカが!!!!!
離れろーーーーーーー!!!!!!」
………………ずきゅっ!!!!!!
細く、黒いレーザービームが物体の内部から伸びて、エスメラルダの心臓を撃ち抜いていた。
背中から血を噴きながら後方に吹き飛んでいくエスメラルダ。
瞬間、すべてがスローモーションに感じられる。
さらに、追撃のレーザービームが物体の内部から二条、三条と立て続けに伸びてきた。
ぐったりとしながら雪原に崩れ落ちようとしているエスメラルダに襲いかかる。
俺は、盾みたいな形状に加工した魔法障壁を全力で投擲した。
エスメラルダと黒棺の間の空間へと。
これ以上、追撃を許さないためにだ。
ソニックブームを発生させながら、
極超音速で目的地に向かう魔法のシールド。
が魔法障壁を落とすのが、一瞬遅かった。
追撃のレーザービームはエスメラルダの身体に突き刺さる………………
背筋が凍った刹那。
………………ぎゅんっ!!!!!
黒色のレーザービームの指向が急激に捻じ曲がり、
エスメラルダの身体を避けて通った。
エスメラルダの身体が、回復魔法のライトグリーンの輝きに包まれている。
そして、そのライトグリーンの輝きは、同時に強固なビームシールドの性質も併せ持っていた。
半透明の盾として、エスメラルダを守り、保護している。同時に、ダメージを回復させながら。
「新技…………
【救護防禦壁】」
エスメラルダを保護していたのは、リトさんだった。
両手をエスメラルダの方に向けて、全力で魔法力を解き放っている。
《回復と防御を同時に成し遂げる魔法ですか。凄い技ですね》
RPGでそんなコマンドがあったら、それだけでチート級の魔法だ。
「リトさん、スゲーーーーーー!!!!!!」
思わず感嘆の言葉が出た。
リトさんは少し恥ずかしそうに笑って。
「私だって、マサムネの陰に隠れてずっと遊んでいたわけじゃないんだから!!!!」
《大阪桐蔭高校野球部のベンチメンバーみたいなもので、
絶対的エース マサムネさんの陰に隠れていても、みんな非常に優秀なのですね。うちのパーティーは》
喩えがマニアックすぎる!!!!!
高校野球ファンにしかピンと来ない喩えやめて!!!!?
うちのパーティーが実は全員、優秀なのは認めるけどな。
「あぁ~!!!!死ぬかと思ったぁーーーーー!!!!」
リトさんの展開する【救護防禦壁】のなかで、エスメラルダがガバッと身を起こした。
その胸元の傷が完全に塞がっている。
てか、胸を隠せ。いろんなものがモロ見えやぞ。
《モロ師岡》
ピンク色の雪原に突き刺さった黒い物体。
棺のような卵殻のような不思議な形状のそれが、
………………めきょんっ
奇妙な音をたてながら開いた。
物体の内部から現われたのは、
昆虫の要素と人間の要素を半分ぶつ併せ持ったような、真っ黒い大男だった。
割れた物体の真ん中、
心臓の底の雪原の上に、静かに佇んでいる。
敵の情報を解析していたSIRI姉が珍しく緊張した声で
「………………黒死病」
………………なに?
「あれは、人類史のなかで最大の被害をもたらした史上最悪の疫病。
8000万人以上の人命を奪った未曾有の伝染病
【黒死病】
……………それがモンスター化した怪物です」




