雪の女王の脳内 その22
いや、ちょっと待てよ。
―――根本的な疑問が頭をよぎる。
黒死病って、たしか菌だろ?
なんで菌が人間の形状をしてんだよ。
《どうやらあの黒い母船、
マサムネさんの【チートコード入力】と同系統の能力があるようですね》
俺の裏コードと同じチカラ……………?
《ウイルスや細菌といった存在を、擬人化したり兵器化したりする能力です》
なんだ、その厄介な能力?
《敵もマサムネさんに対してずっとそう思ってますよ》
エスメラルダの方へと、重々しく足を踏み出し前進を始める黒死病。
その巨体は王者の風格。威厳たっぷりだ。
《8000万以上もの人命を奪った史上最悪の伝染病……………
ほかのウイルス・細菌とは別格というわけですか》
俺は、さらに二枚、三枚と魔法障壁を投擲してエスメラルダと黒死病のヤツとの間に分厚いバリケードを形成した。
………………が
っしゃん
がしゃん!
っがしゃん!!!
平静に。安穏に。
まるで最初からそこに壁なんか存在しないかのように、何事も無く魔法障壁をブチ抜いてくる。
涼しい顔で魔法障壁にぶつかり、そのまま半透明の壁を顔面でぶち破る。
《巡航ミサイルの直撃を受けてもビクともしないマサムネさんの魔法障壁を、顔面でブチ抜いてくるなんて》
サイヤ人化した石崎くんか、てめえは。
「ひぃいいいやぁああああああああ!!!!!」
泣きべそをかきながらジタバタして逃げ惑うエスメラルダ。
それなりに百戦錬磨だから、黒死病がとんでもないバケモノだって事は皮膚感覚で分かるのだろう。
12層ほど張り巡らした魔法障壁の最後の一枚まで、ついにブチ抜かれる。
陰険な笑みを顔いっぱいに貼り付けた黒死病
「ぎにににに」
奇怪な笑い声をあげた。
「に”ゃぁあああああああああああああ!!!!!!」
腰を抜かした姿勢で、尻を引きずって後ずさり、エスメラルダは変な悲鳴をあげる。
《海賊王の娘の断末魔がネコ?》
「姉タンを………………イジメるな」
瞬間移動としか思えない速力で、
ロリっ娘 魔神皇帝が黒死病の目の前に出現していた。
その瞳は、その愛らしい見た目とはあまりにもそぐわない、純度の高い殺意を満々と湛えていた。
暗黒魔界の蹂躙者の瞳。
両手で握った【超次元ハンマー】を、すでに背中に隠れるぐらい背後に捩じり込んでいる。
ホームラン競争で、場外ホームランをかっ飛ばす直前のメジャーリーガーみたいな態勢。
………………ごっ………………ぎゃっ!!!!!!
グラナゴスは黒死病を、横殴りにぶん殴った。
俺のいる上空にまでハンマースイングの旋風が届いてきた。
ぺっしゃんこになったゴキブリみたいにひしゃげ、
真横にぶっ飛んでいく黒死病の巨体。
しゅっ………………んっ
巨体が吹っ飛んでいった先に、すでにハンマースイングの態勢を整えたグラナゴスが再出現していた。瞬間移動としか思えない……………
いや。その通りなのだった。
アイツが戦っている最中に無詠唱の転移術式を乱発して、空間距離を自在に縮めたり遠ざけたりして来るチート野郎だったって事を思い出した。
《ゲームセンターの格闘ゲームコーナーだったら出禁になるレベルの《《あれ》》ですね。》
ごぎゃっ!!!!!!!
今後は、反対方向にぶっ飛ばされる黒死病
ずぎゃっ!!!!!!!
どぎゃっ!!!!!!!
べぎょんっ!!!!!!!
ぶん殴っては回り込み、
またぶん殴っては回り込み、
その行程が、10往復も繰り返された。
ようやく、ハンマースイングの無限ループから解放したやったかと思いきや
ずぎゅっ………………!!!!!!!!!!
吹き飛んでいく黒死病に向かって、額から発射されるトドメの怪光線を浴びせた。
「バカヤロッ!!」
思わず冷や汗が出た。
大陸ごと消し飛ばしかねない魔神皇帝の超怪光線だ。
ずがっ!!!!!!!
大爆発が起こった。
心臓内の広大な空間に爆風が広がっていく。




