雪の女王の脳内 その17
縁が太くて黒い、地方の中学生みたいな眼鏡をかけて走り回るリムルル。
もはやアラレちゃんにしか見えないッス。
《そういえば、どことなく走り方もアラレちゃんに似てますね》
走りながら「キーン」とか言い出したらもう確信犯だな。
ミヤコは、なにも無い桜色の雪原でいきなりズッコけて眼鏡を失くしていた。
「メガネ!メガネ!」
目がくらんだみたいにパニックになって、明後日の空中を手探りしてるミヤコ。
《横山やすし?》
てか、お前は普段、裸眼族だろ。メガネが外れたくらいでなぜパ二くる?
もしかしてミヤコって、吉本の伝統でも継承しようとしてるのか?
レナは、誰よりも行儀よく、【桜雪樹】の枝下に敷かれたマットのうえでチョコンと正座待機している。
なんてええ子なんだろう。
模範生徒だな、レナは。
だが、よく見ると、レナのメガネのレンズ表面には、スライムの姿が浮かび上がっていた。
スライムの干物の映像が。
スライムへの思念波が強すぎて、
メガネのレンズにレナの脳内イメージが念写されている!!!?
《奇跡体験アンビリバボー》
ビートたけしの声マネ、ご苦労様です。
さすがのレナも食いしん坊キャラになるぐらいだからみんなの空腹は限界だろう。
異魔神ポケットからドラえもんみたいにポイポイッと食材を取り出して、調理にかかる事にする。
レナは俺から手渡されたスライムの干物を、どら焼き感覚でハムハムと食べていた。
みんなが雪遊びに興じているなか、現実世界で磨いた料理のスキルでちゃっちゃっと何品かの野外料理を作っていく。
ちゃんとした設備も無いから、簡単なバーベキュー料理だ。
リトさんだけがずっと隣で手伝ってくれていた。
《ほかのみんなは雪に気をとられてお子ちゃまですね》
まぁ、桜色の雪にテンションが上がるのは分かるけどな。
花見よろしく、みんなで雪見しながらランチタイム。
そういえば、もう何年も集団でお花見をしたことなんて無かった。
新鮮な感覚だ。
《マサムネさんはプロの引きこもりでしたからね》
なんだよ、《《プロの引きこもり》》って。
『プロフェッショナル 仕事の流儀』の密着取材受けたろか?
食事を終えると、これまた縮小しておいたテントを異魔神ポケットから取り出す。
みんなでそれを組み立てて、就寝の準備に入った。
今日はここで一泊して、体力を回復してから明日出発だ。
こんなにポカポカした安全地帯は、ここから先はもう望めないからな。
ニャンコ大先生は腹いっぱい食べ過ぎて、ヘソ天のポーズで雪原にぶっ倒れていた。
…………猫だ。
どっからどう見ても猫だ。
俺も、その横にぶっ倒れてみた。
雪の上に寝っ転がっているはずなのに、背中からポカポカと温かくなってくる。
上空からは、今もふわふわとした桜色の雪が舞い降りてきていた。
いつの間にか、リトさんも俺の横に寝っ転がっている。
パーティーみんなが、並んで寝転がって上空を見上げていた。
世界中の雪が、こんなにポカポカ温かったら、誰も凍死しなくて済むのにな。
そんな事をぼんやりと考えているうちにウトウトとしてきた。
意識が夢の暗渠へと滑り落ちていく。
ズンッ!!!!!!!
腹の底から響き渡るような衝撃を感じた。
夢のなかの出来事と、区別がつかなかった。
ズンッ!!!!!!!
再びの衝撃。
プールの水底から、無理やり引きずりあげられたみたいに意識が覚醒する。




