不思議
「遅い」
と言った
頬をふくらませて
「ちょっとでしょ」
と言い返す
「待つのは嫌いだ」
「そこはさ、『全然待ってないよ』とか『待ってる間も楽しい』とか言うんじゃないの?」
「実際に待った。それになんだ、『待ってる間も楽しい』って、Mか」
今にも舌打ちしそうな顔で彼...玲くんが言った
「『君を待ってる時間は楽しい』だよ!Mじゃないよ!後は・・・ほら!『遅いから何かあったのかと心配した』とか!」
「学校で何を心配しろってんだよ。・・・もう少し小さい声で喋れ」
放課後に図書室を利用する生徒なんてほとんどいないが司書もいるので一応小さい声で喋るように言われた
「はーい」
素直に返事をすると玲くんの隣に座った
ふざけるのはやめて
「退院、おめでとう」
と彼が今日一日で聞き飽きたフレーズを言う
「あぁ」
どうでもよさげに返事をする玲くん
こういう対応には慣れっこですよ
「検査だって?」
「大げさなんだよ」
「頭打ったんだし、当然じゃない?」
「それにしたって、入院期間が長い」
「確かに、ね。玲くんを閉じ込めたかった理由でもあったり?」
玲くんの家はお金持ちだから
「あぁ、家のやつらが百合の身辺調査をしていたからな」
なんてこと本当にあるんだね
「・・・姫野さんのこと名前で呼んでるんだね」
「勘違いするなよ。あいつが名前で呼ばないとうるさいんだ」
私が嫉妬したと思ったのかちょっと嬉しそうな玲くん
「ふーん...身辺調査、何がわかったの?」
「あいつの親が海外出張をしていて百合は今1人暮らしだ」
そこはさ、『姫野』って言いなおしてほしいな
「知ってる」
「・・・木下が言っていたが百合とやりあったらしいな」
今度は嬉しさを隠そうともしない玲くん
むっとして
「ちょっと聞かれただけ。それで?それだけじゃないんでしょ?」
先を促した
「あぁ、・・・百合のこの学校に来る以前のことがわからなかったんだ」
「転校前の高校や出身中学ぐらい高校側が把握してるんじゃないの?」
「いや、学校の書類には書いてなかった。それだけじゃなく、親が海外出張とは言うもののどこにいるのかもわからない。連絡先も載っていない」
「それっておかしいよね?先生たち疑問に思わなかったの?」
「思わなかったみたいだな。今回の件で百合に聞くように言ったんだが、教師たちはまだ聞いていないんだ」
「どうして?」
「忘れるんだと。どの教師に言っても、だ」
忘れる
教師が?
「後、百合の親を近所の誰もが見たことがないと言っている。・・・いつ引越してきたのか聞いても誰もわからないと答えるそうだ」
「・・・どういうことだと思う?」
「ありえない話だが、百合はこの学校に来た日にココに現れたと考えるしかないな」
姫野さんは
私とも
みきちゃんとも
違うの?
「そんなの」
「信じられないが・・・他には考えられない。以前、百合にパスポートを持っているのか聞いたが、持っていないと答えた。つまり海外に住んでいたという線はないな。英語の授業もついてこれていないし」
「待って、A組でしょ?どうして」
「別にB組よりA組が賢いわけじゃないだろ」
入学前の試験で学年順位40位以内の者がA、B組に割り振られる
割り振り方法は知らないが、学年2位がB組にいるのだからA組の生徒の方が賢いというわけではない
でも
「転校してきてA組に入るくらいだよ?相応の学力がないと」
「うちは私立だからな。欠員がでたから募集をかけたはずだ」
「えーとC組の大浜さんだよね?卓球の推薦で入ったけどお父さんが亡くなったからって地元に帰ったっていう。・・・欠員がでたからって、すぐに募集をかけるのも変な話だよね、せめて新学期から入れるように募集するよね」
整理するために意味もなく大浜さんの話をしてしまった
そんな私に呆れることなく玲くんが教えてくれた
「そこも都合よくなってて、な。校長たちに聞いてもわからなかった」
都合よく
誰の都合?
「わからないの?」
「『そういわれればおかしいな』ばかりだ」
この世界は
ヒロインに都合よくできてるの?
「玲くん」
なんだというようにみてくる玲くんに
「永井くんが言ってたんだけどね、・・・みきちゃんに何を言い当てられの?」
玲くんは聞かれると思っていたのか
少し目をふせると
答えた
「俺の異母弟だ」




