階段
姫野さんとのあの騒動からさらに数日後、玲くんが学校に登校してきた
宣言通り、姫野さんは玲くんに謝った、らしい
玲くんに群がる男友達の輪に声をかけて教室で謝るものだから、ちょっとした見世物になった、らしい
午前中、学年中が玲くんの復活で大騒ぎしていたものの、午後になれば騒ぎもおさまり、ごく普通の日常に戻った
「この人、かっこよくない?」
ゆきちゃんが椅子の上にひろげた雑誌を指差し、言った
放課後、珍しく真っ直ぐ帰ることなく教室前の廊下でゆきちゃんとのおしゃべりを楽しむ
「んー?どっち?」
ひろげた女性のファッション誌のページには男性が何人か載っている
女性の1ヶ月の着まわし術を男性と恋に落ち、付き合うまでのラブストーリーとともに紹介している
男性は2人、登場していた
2人並んでいるページをゆきちゃんは指差したのでどちらかわからない
「この人。えー、と名前は」
2人並んでいる男性の片方を今度はきちんと指すとゆきちゃんはページの隅に彼の名前が書いてないかと探し始めた
ゆきちゃんはかっこいい人が大好き、だ
『イケメンは観賞用』とよく言っている
また、ゆきちゃん、応援する人ができたなぁなんて考えていると
ポケットに入っている携帯が振動した
マナーモードにしたままだった
とうとう、雑誌を持ち上げ探し始めたゆきちゃんを尻目に携帯を取り出し、操作した
知らないアドレスからメールが届いていた
『屋上前』
と、ただそれだけ
「あった!藍くんだって!」
ゆきちゃんは目当ての彼の名前を見つけ出し、興奮したように言った
「愛くん?」
「藍って字のあいくんだよ!ほら、ふりがながふってある!」
ゆきちゃんは雑誌の隅に小さく書かれてある彼の名前を丁寧に指差した
「ほんとだ。変わってるね」
「読者に覚えてもらうためだよ!インパクトは大切だもんね」
そう言うとゆきちゃんは携帯で彼の名前を検索し始めた
私はもう一度、雑誌に載るゆきちゃんおすすめの彼を見た
この目、誰かに似てる?
「・・・好きになった?」
「うん!顔かっこいいし!・・・藍くん、うちらの一個下だ!かわいい!」
「年下なんだ、まだ中学生?」
「みたい!なんか、CMとかにもちょいちょい出てるぽっいよ」
「んー」
だから、見たことあるのかなぁ
ガラッ
ゆきより1つ前の出席番号の子が教室から出てきた
「あっ、やばっ。ごめん、私そろそろ行かないと」
それを見たゆきが焦ったように言った
「時間だね」
「うん」
今週は担任の先生との簡単な面接がある
出席番号順に行われているその面接を私は別の日に既に終えていた
「じゃ、私も帰ろーと」
待つ生徒のためにと、先生が何脚か廊下に置いてくれた椅子から立ち上がった
「一緒に待ってくれてありがとね」
「いいよ、全然。また明日ね」
「うん」
ゆきちゃんと別れた私は図書室へと向かった
階段を上りきると、図書室の前に着いた
でも、用があるのは図書室ではない
今上ってきた階段をさらに上ることはできない
可動式黒板や椅子が並べられ、封鎖されているからだ
この階段の先は屋上だ
当たり前だが、屋上へは出ることができない
柵も何もついていない危険な場所だからだ
私は図書室の隣の司書室に人がいないことを確認すると
静かに椅子や可動式黒板を動かし、通りぬけた
もちろん、動かしたものは元に戻した
彼の言っていた
『屋上前』
はこの階段を上った踊り場のことだ
階段を上りきると
司書室からは見えない位置に彼は座っていた
「お待たせ」
語尾にハートがつきそうな勢いで言ってみた
呆れた顔で
彼は




