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電話


「玲に許可なくメアド教えるのは良くないでしょー」


ゆっくりとした口調で永井くんが言った

「永井くん?」

新たな参戦者に驚いたというより、永井くんに驚いたようで、姫野さんが小さい声でそうつぶやくのを聞いた

愛美はそれに気付かなかったのか、わざとスルーしたのか

「じゃ今、七澤にメール送って許可もらってよ」

焦ったように早口で言った


これには永井くんの隣で聞いていた木下くんが反論した

「病院にいるやつにすぐに返信しろって言ってのかよ!寝ている玲の邪魔になるとか考えないのか!」


こんなに熱血な性格じゃないと思ってたんだけど


木下くんの目の前で玲が倒れたから、やっぱり思いは強いのかな



木下くんの言葉で小さい声で話していたクラスメイトたちも廊下を通る人たちも静かになった


そんな場面で姫野さんは


舞台でスポットライトをあびているかのように


話し出した


「そうだよね、ごめんね、愛美ちゃん。私がいけなかったんだ」

当然、みんなが注目する


「玲が学校に来たら謝るね。本当にごめんね。愛美ちゃんは私のために言ってくれただけなんだ。永井くんたちもごめんね」

きれいにまとめようとする姫野さんに

永井くんが突っ込む

「・・・俺、名前言ったけ?」


A組によく行くから、話しかけたことあるんだと思ってたけど?

姫野さんは目を見開き、驚くと

「えっと、よくA組に来るから聞いたことあって」

としどろもどろに答えた


「ふーん」

どうでもよさけに永井くんが納得したフリをする



「おーい、お前ら、授業始まるぞ。ほら、教室もどれよー」

次の授業担当の先生が現れ、姫野さんたちはA組に帰っていった


私もゆきちゃんも急いで席に戻った



授業中

「鈴野、」

隣の席の木下くんが一枚の紙を渡してきた


「?」

不思議に思いながら、受け取り紙を開くと


走り書きでアドレスが書かれていた


下には小さく



『玲の』



と書かれてある






私は玲くんのアドレスを知らない


だけど携帯番号は知っている




男子たちによって知らない女子にアドレスをバラされることの多い玲くんはよくアドレスを変える



幼馴染の私も女子に聞かれることが多かった


教えないと私の立場も悪くなるし

本人に許可貰ってからね、と言っても納得してくれない子が多い


だから、自宅の番号なら知ってるよと言うようになった

部活の連絡で必要だからとか言って


いきなり、電話する勇気のある子はいないようで

中学では聞かれることはなくなった



愛美は知らなかったみたいだけど





木下くんはその話を知っていた


気を使って教えてくれようとしたのだろう



でも



私はその紙に

「許可もらってないからいいよ。ありがとう」

と書いて、木下くんに返した



携帯を買ってもらってすぐの頃は玲くんのアドレスは登録してあったんだけど


何度もアドレス変更のお知らせをメールで送ってもらって登録しなおすのが面倒で


電話すればいいよね?という話になって


玲くんのアドレスは登録しなくなった



私はアドレスを変えていないから用があればそのつど新しいアドレスで玲くんから連絡がくるし


問題なかった






入院の話は、永井くんから聞いた


それを自分で聞いたかのように話しただけ





姫野さんと同じで私もあれから玲くんと会っていないし


連絡も取り合っていない



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