舞台へ
いつもより少しだけ長い春休みはあっという間に過ぎていった
入学式
みきちゃんの言っていた乙女ゲームの舞台に立った
高校は通っていた中学の隣にある
叡智くんの所みたいに中高一貫ではないから高校からうちの学校に通う子もいる
新入生が間違えて中学の校門にたどり着いてしまうことが多いのか所々に案内板を持った先生が立っている
「おーい、鈴野―」
もう少しで校門に着くというとき、後ろから声をかけられてた
「おはよ、永井くん」
中学の学ランと違い、高校のブレザーを着た永井くんが走ってきた
「おっはよー、ってか鈴野、お前迷ったのか?」
「迷ってないよ?」
「鈴野は家こっちじゃないだろ?この道は通らないはずだぜ?」
「あぁ、引っ越したから」
「あぁ、なるほ・・・はっ?」
立ち止まった永井くんを置いて歩き続ける
見えてきた校門には知らない先生たちが立っている
少し、スカート短くしすぎたかな?なんてちょっと不安になりながら、校門を通ったが特に注意はされなかった
永井くんがネクタイで注意を受けている声を聞きながら昇降口に向かう
クラス発表の紙の前にはたくさんの新入生が群がっている
背の低い私が後ろから見えるわけもなく、後ろで待機していると永井くんが隣に立った
「なんで引っ越したんだ?鈴野ん家は一軒家だろ、別に引越す必要なんて。・・・どこに引っ越したんだよ」
学校内の情報には詳しい永井くんだが、これは知らなかったらしい
まっ、当然かな?
学校の友達には誰にも言ってないし
「んー、ほら、駅の目の前にできたマンションあるでしょ」
「おぉー広告入ってたわ、すげぇ、高いよな」
広告をチェックする男子高校生・・・いるんだ
「うん、高いよ、見晴らし最高」
「いや俺が言いたいのは値段の方でっ!・・・もういいや、そこに引っ越したのか」
「うん」
「鈴野ん家、中流家庭じゃなかったか?」
「そう、思ってたんだけどね」
ごく普通の家だと思ったんだけど、よく考えれば2人も幼稚園から私立に通わせ続けてられる経済力は中流の上だよね
それで終わればよかったんだけど
「うちのお父さん、大学のときに友達と企業して成功してたみたいなんだよね。でも家業継ぐからって一旦はメンバーから抜けたらしいよ。結局、家業は継がずに普通にサラリーマンしてたらどんどん出世しちゃってその友達の会社と仕事で会っちゃってね、『戻ってこいよ』なんて言われてそっちの重役についてた、みたいな?」
「それ知らなかったのかよ」
呆れたように永井くんが言う
「うちのお父さん、性格悪いから」
「それで済む話か?前に住んでた家も高級住宅地だったよな。なんで気付かなかったんだよ」
「んー元々ママの実家が小金持ちで不動産やってたから違和感なくて?」
「あーそうかい。それでなんで引っ越したんだよ」
さらっとまた聞かれた
さらりと答えようか
「汚くなっちゃったから」