第二回:言葉の翼と、世界からのエール2
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「私の、この手が……?」
美智子は、節くれ立った自分の左手を見つめた。恥ずかしいと思っていた「農家の手」。それが、最高のデザインの一部になるなんて、考えもしなかった。
翌朝、美智子は畑へ向かった。
いつもとは違う。右手に大根、左手にスマホ。
朝日を浴びる大根の鮮やかな赤。土から引き抜いた瞬間に立ち上る、命の匂い。彼女はそれらを、スマホのカメラで次々と収めていった。
「お父さん、おじいちゃん。私、なんだかすごいことになりそうだよ」
空に向かって呟くと、不思議と体の重みが消えていた。
かつては、新しいことを始めるのが怖かった。失敗して笑われるのが嫌だった。
でも今は、手の中に「Felo」という心強い相棒がいる。分からないことがあれば、いつでも聞ける。世界中の知恵を、自分の味方にできる。
家に戻り、美智子はFeloが整理してくれた構成案を、そのままデザインツール「Canva」に読み込ませた。
すると、どうだろう。
Feloが選んでくれた言葉と、美智子が撮った写真が溶け合い、まるで都会のデパートに並んでいるポスターのような、洗練された、けれど温かいスライドが次々と出来上がっていく。
画面に映る、自分の「手」の写真。
その背景には、Feloが提案したキャッチコピーが躍っていた。
『三百年の土が育てた、奇跡の赤。あなたのひと皿に、物語を。』
「……できた」
震える手で、美智子は娘にメッセージを送った。
『プレゼンの準備、できたよ。オンライン会議っていうの、予約してくれる?』
返信はすぐに来た。
『お母さん、すごい! シェフも楽しみにしてるよ!』
美智子は、縁側に座って深く息を吸った。
冷たい風が頬をなでる。だが、その胸の奥には、かつてないほどの熱い灯がともっていた。
しかし、運命はさらなる試練を彼女に用意していた。
オンライン会議の当日、美智子の前に現れたのは、東京の若き天才と謳われる、冷徹な目をしたエグゼクティブ・シェフだったのだ。




