第二回:言葉の翼と、世界からのエール
プロフリンクから他の作品も読めます
深夜二時の静寂の中、美智子の部屋だけが小さな灯りに包まれていた。
スマホの画面上で、文字がさらさらと紡がれていく。Feloが提示したのは、単なる大根の紹介文ではなかった。
「緋色大根に含まれるアントシアニンの含有量は、一般的な赤大根の約三倍。そして、この標高と寒暖差があるからこそ生まれる独自の糖度……」
「……えっ?」
美智子は思わず声を上げた。自分が「美味しい」とだけ信じてきた大根の秘密が、科学的な根拠を伴って説明されている。Feloは、日本国内の農学論文だけでなく、イタリアやフランスの「伝統野菜のブランディング」に関する成功事例まで瞬時に引き出し、それを日本語で美智子に伝えていた。
「すごい……。私、自分の大根のこと、半分も分かってなかったんだわ」
美智子の指が、夢中で画面をなぞる。
次に彼女が試したのは、本に書いてあった「マインドマップ」という機能だった。
ボタンを一つ押すと、画面いっぱいに蜘蛛の巣のような図が広がった。
中心には「緋色大根」。
そこから「土壌の歴史」「栄養価」「シェフへの提案」「村の未来」という枝が伸びている。
ぐちゃぐちゃだった美智子の頭の中が、まるで晴れ渡った冬の空のように、一点の曇りもなく整理されていく。
「これなら、話せる。私が伝えなきゃいけないのは、ただの野菜の味じゃない。この土地で続いてきた命のバトンなんだ」
美智子は、Feloに向かってさらに問いかけた。
「でも、東京のシェフたちは忙しいはずです。どうすれば、彼らの足を止めるようなスライドになりますか?」
Feloからの返答は、優しく、かつ挑戦的だった。
『美智子さんの「土に汚れた手」を一枚目の写真にしましょう。それが、どんなデータよりも雄弁に、誠実さを物語ります。デザインは、Canvaという道具を使えば、この温もりをそのまま形にできますよ』




