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第三回:画面越しの対峙、そして「知恵」の融合

オンライン会議当日。美智子は、一番小ぎれいなブラウスを着て、居間の座卓に置いたタブレットの前に座っていた。


画面の向こう側に現れたのは、都内でいくつもの星付きレストランをプロデュースする新進気鋭のシェフ、古賀こがだった。


「初めまして。お時間は十五分でよろしいでしょうか。次の会議が詰まっておりまして」


古賀の言葉は鋭く、無駄がない。都会のビルの一角、洗練されたオフィスに座る彼の背後には、最新の厨房機器が見える。


美智子は一瞬、その冷徹な空気に圧倒されそうになった。手元の指先が小さく震える。


(大丈夫。私には、Feloと一緒に作った『翼』があるんだから)


美智子は深く息を吸い、マウスをクリックした。画面に、Canvaで作成した一枚目のスライドが映し出される。


泥にまみれ、節くれ立った美智子の左手が、画面いっぱいに広がった。


古賀の動きが、ぴたりと止まった。


「……私の手です。この手で、三十年間、緋色大根と向き合ってきました」


美智子の声は、最初は小さかったが、次第に熱を帯びていった。


彼女は、Feloが提案してくれた構成通りにプレゼンを進めた。単なる「美味しい」という感情論ではない。


Feloが世界中の論文から探し出してくれた、標高の高い冷涼な土地だけが生む「抗酸化物質」の数値。そして、今ヨーロッパのトップシェフたちが熱視線を送っている「伝統野菜の復興」という世界的トレンド。


「現在、パリの三つ星レストランでは、均一な工業製品ではなく、土地の個性が宿る『不揃いな奇跡』が求められています。私の大根は、まさにその答えです」


古賀の表情が変わった。冷ややかだった瞳に、プロとしての「熱」が灯り始める。

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