第八十二話 ノイズ
反省部屋の中、少女達は仲を深めていた。
これからあの二人の少女は田和いもない話や、互いの好き嫌いを話していく。そんな光景が頭に浮かぶほどに幸せに心が酷く揺れる。
なぜか、僕の心は… 酷く残酷に、許してほしいほどに... この先を見てはいたくなかった。
目の前の光景から眼を背けようとも、記憶の中での僕に自由はなかった。
なぜ、僕は、僕の、…。
幸せになれないのだろうか…。
暖かな気持ちになりはする。だけど、同時に。いや、それ以上に冷めた気持ちになっていく。
同情に近いようで、僕は自分のことばかりをこの場で考えてしまっている。
なんとも最悪だ…。最悪な気分が…心地よいと思っているようだ…。
ナンデ…。何でなんだ。
ワカラナイ…。嬉しいのに、苦しい。その苦しさが... 今の僕には心地良いなんて…。
おかしい、おかしい。
今だけであってほしい。
「そうだミル…」
突如、ルルの言葉でハッとする。
自身の役目を思い出す。
「うん?」
ミルはルルの声に反応して返事をする。
「原初様がそろそろ帰って来るらしいよ…」
「…え。嘘。それはホント?! あなたどこでその事を!?」
「ミル、声が大きい…。シーだよ?」
ミルは咄嗟に口を覆う。
「…ビクターさんの部屋にあった手紙を読んだんだ。宛先もバラバラだったけど、一つだけ知っている匂いがして…つい。そしたら原初様が書いた手紙だったんだ。『友達との仕事を終えたからそろそろ帰る』って書いてたんだ」
「…どうしよう。嬉しすぎて胸が痛い。心臓が破裂しそう…」
「私もだよミル。…やっと会えるから...。前会ったのも三年前だったし…。あ、ミルがここに来た日だったね」
「…はぁはぁ」
「興奮しているね。私もだけど…」
「だって…。だってだって! こんなに嬉しい事は無いから」
「…うん。けど、少し妬けちゃうなぁ。私はミルと友達になれたことの方が今は嬉しいのに…」
「あ、そ、それは…。もちろん! あなたと…その、友達になれたことはとても嬉しいことで... けど、原初様に会える事も嬉しいことだから...。う~ん、どっちも嬉しいことなの… 私にとっては!?」
「…ふ、フフハハハ! やっぱりミルは面白いね。そうだよねぇ。ミルはそういうところも可愛いんだね。ごめん、少しからかいすぎたみたいだね…。私も今ミルに出会えた事や、原初様にまた、会える事もどっちも嬉しいことだよ…。ホントに…嬉しいよ」
ルルは、どこか下向きに笑っていた。
ミルの顔は熱くなる。照れいた。
「…だから、可愛いてそう何度も言わないで!」
「照れちゃうから?」
「照れ…!? …う~ん。そうよ!」
「…! おー、正直者だねミル」
「…え~と。だから、今度私の事を可愛いって言ったら私もあなたの事を可愛いと言うから!」
「ん? それに何の意味が?」
「…ふん、少しは私の身の苦しみを味わって貰うから...」
「へぇ~。ンー。じゃあミルは可愛いね」
「なっ?! ンー! ルルも可愛い!!」
「うん、ありがとうミル!」
「なっ、何で平気そうに出来るの!?」
「だって…。私は可愛いと私が思うから! 言われても嬉しいからだよ!」ドーン!
自信の差なのか、ルルは立ち上がり胸に手を当てポーズを決める。
「な、なんだと…」
「だから、ミルも自信や自覚持ちなって、ね?」
「…が、頑張りま、マ、まマ…す」
「うん、よろしい」
なんとも和やかな光景だ。
そう感じてはいる。が僕の胸の中で重く引っ張られるような気持ちがある。
コンコンと弱々しく部屋の扉を叩く音が聞こえる。
「朝食の…か、回収にき、来ました…」
音の主は朝食を持ってきてた女の子だった。
「…あ、あの! いや、えっと…ん。邪魔だったら…そのご、ごごご、ごめんなさ…イ」
なぜかおどおどとしている様子にミルは朝の事を思い出す。
誤解とはいえ何か弁明が必要ではあると判断する。
「…あわわ!?」
ミルが立ち上がり、少女の元に近づくと慌て始める。
「…おい」
「あ…◼️◼️ちゃん!? あ…あの! 今朝の事はなにも見てません…誰にも言ってません! だから怖いことしないで… く、ください」
すっかり怯えた様子で地面に座り込みミルを見上げる少女。寒くもないのに体を震わせて顔を見なくても分かるほどに… とても怯えている。
「ち! あ、違う…。怒っているんじゃない。あれは誤解だと…そう説明したくて…怖がらせたい訳じゃない…」
ミルも怖がっていた。話す事を、目を合わせることを、ドクドクン!と何度も鳴る心臓の音。落ち着こうと。
今までの行動は、そんな自分を隠すような行動であったと思えた…。本当のミルは余裕なんて無い、弱い、見た目同様の子供だと思われたくない。そんな気がした…。
「へ? ご、ごかい?!」
「なぜおまえが驚く………」
「あ、いや、だっ、だって。そういう恋もあるって… ルルちゃんが..」
二人の視線はルルに移る。
「…」
バツが悪いのか視線を泳がせた後、顔を二人から反らすルル。
驚きと険しい顔でルルの方に振り向くミル。
「ねえ、それはどんな気持ちなのか… 聞いても良いミル?」
「…軽く距離を置きたい気持ちだ…馬鹿ルルが! おまえのせいか!? 誤解されたのはおまえが吹き込んだ馬鹿な話のせいか!?」
「…はい。多分、私が前にその子に話したと思います… 覚えてませんが… その子そう言うのならそうなのだと思います…」
「え、へ?! ルルちゃんと◼️◼️ちゃんは恋人さんじゃないの?」
「違う!!!」と反射的に否定するミル。
「ルルとは… ただの友達だ」
「え? ◼️◼️ちゃんに友達!? えールルちゃん、すごいすごい◼️◼️ちゃんと友達になれたなんて! 他の子にも教えてあげないと。あ、その前に朝食の瓶を返してください」
少女の持ってきてたお盆に瓶を置くミル。ゆっくりと立ち上がる少女。
「そうだ、◼️◼️ちゃん。モモちゃんあの日の事をそんなに怒ってないよ…。むしろやり過ぎたかもってずっと気にしていつも◼️◼️ちゃんの事を心配しているの…。だから早く仲直りできると良いね。今日の当番も本当はモモちゃんだったのに…私が変わりに来たんだから...何で会わないんだろうね」
「ララだっけ? 名前」
「…え。覚えて貰ってなかったんだ…同じ部屋だったのに」
「ごめん…」
「じゃあ私とも友達になったら許してあげる! あとモモちゃんとも!」
「わ、分かった…。ララとも友達だ」
「で、でもモモちゃんとは直接話して友達になってほしいの。早く元気なモモちゃんに戻ってほしいから」
「…それは難しいな。けど、友達の頼みなら分かった…。私からも...ここを出た後になりそうだが約束しよう」
「うん、約束だよ! ミルちゃん!」
その時、ノイズの一つが消えた。
ララゆっくりと扉を閉じて部屋を出ていく。
また、二人は部屋に残される。
「魔法みたいだ、ルルと友達になってから… 私は変わっていく。前の私だったらこんな嬉しい気持ちになれなかった」
「…違うよミル。私のおかげじゃない。ミルが変わったんじゃない。ミルはミルのままだよ」
「モモちゃんとも仲直りは出来るかな。あれは一方的に私が悪いって分かっていたのに… 怖がらせて私から遠ざけようとした…」
「だから約束したんだよねミルは、その事から逃げないために」
「…」
「自信を持ちなって、ミルは知っているはずだよ?」
「何を…?」
「私が友達だって。私がミルの初めてだってね!」
「………。は~~」
深くため息を吐き。
「ありがとう」と伝えるミル。
ミルが瞬きをした瞬間景色が変わる。
目の前には以前会ったモモと言う名前の女の子が立っていた。
…ここは、どこかの部屋だろうか。先程までいた反省部屋ではないと分かる。
けど、なぜかこの部屋でモモと言う名前の少女とミルは二人でいるのだろうか…。
ミルを見て少女は話す。
「ここなら二人で話せる」
「…モモ、私もモモと話したい思っていた…」
「…ララから何か言われたんでしょ? ララはルルや◼️◼️の事を気にしている…。おまけに私の事も…」
「…」
沈黙が続く。
読んでいただきありがとうございます。
ミルの元同部屋の子達の名前はモモとララですね。
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