第八十一話 友達
朝になり目を覚ますミル。
目を擦りあくびをするミル。
とても気分よく目を覚ませてたようだった。
「ふぁ~むにゃ…」
「あ… ミルおはよう。エヘヘ…」
「…!」
向かいのベットから声がする。体はビクりとする。まだ慣れてないからか、ルルからの挨拶にミルは驚いていた。
「お… おはよう。ルル…」
「…エヘヘ。やっぱり嬉しいなぁ」
「…何が?」
「…うん。こうして、朝からミルに名前で呼んでもらえるのが、私はすごく嬉しい!」
「…! そ、そんなの当たり前だから...。私とルルは… 友達、なんだから...ね?」
「うん。照れてるミルも可愛いよ~」
「…ルル、からかうのなら友達の件はやっぱり保留するから」
「…え」
「…冗談。けど、正直それはとても嫌だからやめて。私は対等な関係が良いの。可愛いとか言って私を照れさせるのは… 言って良いけど、さすがに控えて…」
「…けど、ミルは可愛いって言われるのすきでしょ? それに、本当に私はミルが可愛いと思っているから言うんだよ?」
「…! だからって! …口にする事を控えてって…言ってるの。胸の中で言ってなさい!」
「…う~ん。けど、分かったよ… ミルが困るのなら… 言わないようにする」
「…本当に?」
「私を信じて」
「…!」
ドキリとした感覚が胸にする。ルルを見ているとミルは心が暖かくなる。
目が覚めて、昨日考えてた不安が吹き飛ぶほど、ルルとの時間はミルにとって心地よいモノに変っていく。
心を閉ざしていた分、ミルは少しずつルルに心を許していく。
「…なに?」
ルルがミルの顔を見てニコッと笑う。
「ううん… やっぱり良いなぁって」
「…また、可愛いって思ったでしょ?」
「正解! 正解! 大正解!」
呆れたように、ミルは「はぁ...」とため息を吐く。
こんなに正解!と言われて、嬉しくなる自分がルルに心を開いているのが嬉しくも、今後うまくやれるのか不安に感じてもいた。
「…そうだ。今日は、一緒に反省文を書きましょう」
「あ… 反省文。そうだね。書かないと…だよね」
ルルは先ほどの元気さが消え、ベットに座る。
「…書きたくない?」
「…。ミルは、書くの… 反省文?」
「書かないとここから出られないでしょ?」
「…そうだね。けど、出てからミルはどうしたい。出た先に何がある? 友達は私だけ、ここにいる私がいれば良いと思わない…」
ルルはミルの肩を掴み背中に手を回そうとする。
「他の誰かなんて必要ない。私がミルの友達だから...。ねぇミル、怖がらないで私を受け入れて…」
「…ルル?」
「あ…。ごめん…」
ハッとしたルルはミルから手を離し距離を置く。
「こ、これは違う。…私はミルが好きだよ。可愛いし、同じだって言ってくれるミルが大好きだから。これが... 私の病気。自分でも時々、心にもない言葉が出て抑えられなくなる…。怖がらせたかったわけじゃない…だからごめんミル」
自分のベットに座り頭を抱えるルル。
「…けど、友達だって言ってくれて嬉しいんだミル。私は今とても心地良いんだ…。だから、心にもない言葉が出て…抑えられなくなる」
「ごめん… さすがに怖い」
「そう…だよね。じゃあ友達は無しに…」
「ううん。友達はやめない。ルルがどんなに気持ち悪いヤツでも私はあなたの友達だから」
「キモ…!? え、気持ち悪い… 酷いよミル。」
「事実だから。自分勝手、わがまま… けど、それがルル、あなた自身だって私はもう知っている。短い付き合いでも、これだけしつこいあなたと友達になれるの私くらいだから...」
「…いや、私友達多いよ? ミルは知らないと思うけど… この屋敷の子とはほとんど友達…」
「へぁ?」
ミルは驚いていた。
「コホン… そ、それがな、なに? そんなあなたが自身の弱みを教えてくれて… すぅ~はぁ…。私は少しも嫌だと思ってない。勝手に諦めないで」
「…でも、だからってミルを怖がらせることもあるかもだし…」
「私達、どういう存在か忘れてない? 吸血鬼の眷属…。確かに私とあなたはビクターさんから病気判定された問題児だけど、普通でないなんて日常。むしろ楽しみまないと… そう言葉にして私を引っ張っていくのがあなただと思ってた…」
「…すごいねミルの中の私は、そんなにミルは私に何を期待していたんだ…」
「ルル、違う信頼! 私もあなたみたいに... 今にも暴れる心の隙間を抑えるのに必死。だから! 今からもう一度、はじめ直し友達を!」
「…え? 友達をし直すの?」
「うん」
「…は、ハハハ!? なにそれ。おかしいの。ハハハハハハ!」
「…笑いすぎ」
「だって… 友達をし直すなんて聞いたこと無いから... はぁ、腹痛い...くふ、ふふ」
「…殴るよ?」
「暴力反対。いいよ。友達をし直そう。けど、ミルは私と最後まで友達でいてくれる?」
「…当たり前だから。友達は永遠だって今の内言っておく。私があなたの最後の友達だとしても、最後まで残ってあげる」
「…はぁ。ミルも大概重いなぁ…」
「軽いよりは良いでしょ?」
「う~ん… そうだね。じゃあまた握手する?」
「握手もする。そしてお互いに胸を貸すように、ハグし合いましょう」
「ハグは必要?」
「さっき、あなたがしようとしたことを追加してあげたの。ほら、さっきみたいに背中に手を回して?」
「…はいはい」
握手をした後、互いの背中に手を回す。
「…ミル」
「なに?」
「…ありがとう」
「…ふふ」
「…」
長い時間だったような、あっという間だった気もした二人。
胸が熱く、互いの体温が重なるような時間を過ごした。
コンコンと扉を叩く音がするまで。
「…! 朝食が来たんだ」
「…う~ん、もう少しこのまま…」
「離れて! 見られるの恥ずかしいでしょ!?」
「私は平気…!」
「…あ! 足を絡ませないで…! あ、転ぶ…」
ゴン! 鈍い音が部屋に響く。
『わ、わわわ!? 大丈夫ですか?! 開けますね?』
「待って―!」
そういう間もなく、扉は開く。
「ごはんを持ってきたけど… 何の音? へ?」
ルルがミルを押し倒している様子を目撃する別の少女。
「わ、わわわ! ◼️◼️ちゃんとルルちゃんのご、ごはんここに置いていくから... そ、その。女の子同士で... そういうのは良くないよ… い、いや、失礼しました~!?」
部屋に入ってきたのはミルの元同部屋だったララという少女だった。
朝ごはんを部屋に置いていき、ダッシュで去っていく少女。
「待ってララ! 誤解―!」
「あぁ… ごめんミル変な噂が出るかも」
「あぁァァァ…。…ルルのせいだ。おまえなんて嫌いだ…」
「…本当にごめん」
「プイ…」
お盆に乗った血の入った小瓶を一つ取るミル。
「…ゴクリ」
震える手、伝わってくる感情は恐怖だった。
ミルは血が怖い、それだけしか分からない。
「…はぁ、はぁ」
小瓶を開け、勢いよく口に含む。
「…うっ! ゲホゲホ!」
だけど、ミルは血を吐き出し床を汚す。
「…はぁはぁ」
「あーもったいない」
ルルは床を紙で拭く。
「…ミル。血が飲めないの?」
「…うん」
「そうか…。飲めるようになるといいね」
「…。それより、ルル。その紙どこから?」
「ん? あー反省文用の紙がちょうど机の上にあったから」
「…はぁ、ビクターさんに新しいのを貰ってこないと…」
「必要ないよ。ほら? こんなに紙はある」
ルルは机の引き出しを開けると大量の紙があった。
「その紙はどうしたの?」
「私が反省文を書かなかった分が溜まっていく内に…引き出しいっぱいになってました… てへ?」
「…紙があるなら良いけど、ルルは反省文書け… いい加減、書いて外に出よう」
「…えぇ。お風呂やトイレの時に出られるから不自由は無いし…」
「そうだとしても、私のやり直しに付き合って」
「…やり直し?」
「…まだ少し怖いけど、友達をあなたみたいに作りたいから。一人じゃ怖いから...一緒に来てほしいの…」
「…。そうなんだ。分かった。うん、一緒にミルの友達を作りに付き合あってあげる。けど、ミルの一番の友達は私だけにして?」
「そんなことより、ごはん食べて反省文書こう?」
「…は~い」
ルルは血の入った小瓶を取り小瓶の中の液体を飲み干す。
「…まさか私が反省文を書く日が来るなんて…」
「ふざけたこと言ってないで、書きなさい」
「…は~い」
二人は自身の机に向かい反省文を書き始める。
「ねぇ、ミル」
「なに? もう書き終えてたの?」
「大好きだよ」
「…! ばっ! バカ!」
「ふふふ」
「そんなの… 私も、ルルが―」
小さく「好き」と聞こえないように言う。
「…ありがとう」
晴れた空、陽光射す部屋に二人は過ごした。思い出の中であろうとこの出会いをミルは忘れることはないのだろう。
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