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2011/04/02 調子に乗ってはいけません


「ふんふんふーん」

「ごぎゃ!」「ぐぎゃぎゃ!!」

うすら禿げた緑頭、見慣れた醜悪な顔を鼻歌混じりに蹴り飛ばし、その勢いで吹っ飛んだ頭を見てちょっとビビりながら2匹目3匹目も首を吹っ飛ばして、落ちた教科書やらオニギリやらを回収してはまた教室の開いた内窓から石ころと俺を入れ替えることで退出する。

時間は午前11時あの超中学生級の忍者ビッチガールが世に放たれて4時間、一体世の中はどんな混沌の中に有るのだろうと思い馳せつつゴブを狩る。

「おっと、家庭科の教科書か…これで揃ったか?」

ステータスを開く。


『肉体性能 100+60

精神性能 100+60

特殊性能 150+50


総計520

防護値80/80

精神値79/80

経験値54/100


自我兵装(ソウルアーマー)

変則変形斧鉈『X −cution』

-変形鉈

-変形斧

等価値変換術『X −change』

-等価変換 消費 0〜X

 -拡張能力 『イレカエ』 消費 1

 -EX 経験変換 消費 瀕死の敵対者

-性能変換 消費 経験値or性能値

-圧縮変換 消費 10


拾得物 

教科書(数学)×5

new教科書(英語)×3

new教科書(国語)×3

new教科書(生物)×2

new教科書(物理)×2

new教科書(地学)×3

new教科書(社会)×2

new教科書(地理)×2

new教科書(現社)×4

new教科書(技術)×2

new教科書(家庭)

new教科書(保健)×3

兵糧丸×4

newオニギリ×15

newペンケース

』

ンゴゴゴゴゴ…見づらいンゴ、不要なモンを圧縮して…整理して…っと。

『拾得物

教科書(全教科一冊)

new圧縮無地ノート(現在2100頁)

兵糧丸×4

オニギリ×14

ペンケース

』

ふぅ…精神値が10減ったが拾得物のページが長すぎて俺の心を折りにかかっていたのに比べれば安い安い、それで…54匹か、まぁまぁぶっ殺したな、んで教科書はコンプ、これで勉強も捗る。ついでにステータスのメモ欄が揮発性メモリなのかもしれないので無地のノートに変換された教科書達もナイス、だが…

「飯ばっかだなぁ。」

ゴブリンがいなくなり跡形も無く消えるせいで俺が惨殺死体を量産した様に見える廊下でまだ水が出る蛇口から水を啜りオニギリを齧る。

どうやら魔境は取り込んだ世界に元からあった物を参照して出る品物を決めているらしい…と言うのもステータス画面の『お得な魔境情報』とか言うふざけたポップで見かけた胡散臭い話だが、体感的にもそんな感じがしてきた。

「これがスーパーとかだったらなぁ…」

きっと食い物と飲み物がたくさん落ちるんだろう。いや、まだ希望を捨てては行けない、全体参照ではどう考えても教科書と文房具とその他学生が持っていそうな物で埋め尽くされているだろうが、場所による偏りもあるかもしれない、そう思って俺は一回の給食室へと向かっていた。

現在俺がいるのはこの学校校舎の4階、屋上を抜いた最上階で体育館とのつながりはない、教室一つ一つが独立した世界として成り立っているために正規の出入り口から出れば妙な次元を移動させられた挙句目的地もクソもないランダムな個室へと飛ばされる(byステータス画面)ので俺はイレカエが無ければ壁をいちいち破壊して出なければ下の階へ降りることすらままならない、が、しかしだ。何故魔境の空間に連続性がないのか、俺は残念なことに理解していた。そう、給食室へと向かっていたのは過去の話だ。今俺はこの『階層』で戦い続けレベルを上げることを強いられている。

不必要に強力な力を求めている訳ではない、必要が故にやっている。

「はぁー、人生がクソゲーなんて思ったことなかったけどねぇ〜、間違いなくこれはクソゲですわw」

下の階層に一瞬入って生き残れたのは実に幸運だった。居たのは少なくとも数匹のホブゴブリン、つまり…俺があの死闘を繰り広げたゴブリン忍者と同程度かそれ以上の強さを持つと思われる魔物の群れだ。

「いや、まぁ設計的には間違ってねぇんだよ、上が弱くて下が強い、探索型RPGにおける迷宮の鉄則だよ、うん、それはいいんだよ…だけどね、4階建ての建物の一番上が弱くて下が一番強いのはダメなんよ、マジで!」

所々穴が空いてしまったワイシャツの痛々しさと、そこから覗く体が無事だった事の安堵、そして苛立ちのままゴブリン君達を殲滅してしまった挙句蛇口をぺろぺろしている無様さに笑けてくる。振り返りたくもないが、反省しなければ人は学習しない物、死の物狂いだったのもあってか得た情報は少ないが…初撃は目眩しとあわよくば一撃必殺の自我兵装による術行使だったのだろう。身を焼く様な火球が飛んできた。続いて確実に音速は越えていた剣戟、正確無比な矢弾の嵐、一瞬でも迷っていれば今頃体の風通しがだいぶ良くなっていただろう。

この様子だと外の魔物はもう一段どころか二、三段上の力を持つことは容易に想像できる。

「あぁー、生き返った。」

だがしかし水がない、少なくとも今のところドロップはないし、このままではゴブ共の生き血かそこらの死体の血を啜るハメになる。残念なことに俺に吸血鬼の才能は無いらしく。血が美味しそうに見えたりはしないし飲めば普通に腹を下したり、妙な病気になって死ぬだけだ。

「勘弁してほしいぜ…」

…ランダム転移と書いてはあるが、部屋同士の連続性がないと言う以外の共通項を俺が知らないだけでおそらくこの『第一層』とでも言うべき空間の集合体なのだろう。このゲームめいた現状から察するに魔境そのものとこのステータスを与えた人物は別人、ついでに言えばこの魔境にルールを付与したのもまた別の人物だろう。情報が少ない以上先入観を作ってしまうだけかもしれないが、明らかに別々の意匠が組み込まれている以上そう考えるのが妥当だろう。


座り込んで少し休憩する。

相変わらずステータスのポップは毒にも薬にもならないが役に立つだろう情報を垂れ流し、今更ながら俺を置いていった奴らが何をしているのか気になり、そのあとすぐに俺が置き去りにしていった奴らのことを考える。

「ッチ…っはぁー」

最悪だ。全くもって最低だ。コウタリジンキチと言う個人が持つ衝動が肯定される世界に変容した今を、受け入れ歓喜する自分がいるのが嫌だ。

人間らしい思考の隅で常に戦うために、生き抜くために勉強するときよりも高速で展開される知識や情報が大嫌いだ。俺は少し目を瞑って少しでも人らしくあろうと思考をやめた。





『人吉、あんたは人に優しくしなさい、そして自分も大切に出来る人になりなさい。』

母親はそう言って、結局使命と言う名の死の運命を受け入れた。

『神足を名乗る以上、負けるのだけは許さん、俺に与えられる全てを、今おまえに叩き込む。』

父親はそう言って、母を失った悲しみを隠し厳しく、だが誠実に俺と向き合い、最後は俺を守って死んだ。

『やぁ、人吉くん、大丈夫…じゃないよね、ごめんね。』

『うぅ…姉さん、義兄さん…どうして…』

『じんきち、つらいの?とっちゃもかっちゃもなんでないてるん?』

俺に残されていたのは幸せだった思い出と叔父と叔母以外誰も来ない親の葬式の寂しさだった。

その時、決意した。俺はあんな風に死なないと、ご立派な主義主張なんかどうでもいい、兎に角寂しくなんかなりたくない、1人に、たった1人になって広くなった家に残されるなんてもう嫌だ。

『人吉、あんたは1人じゃない、今日から私たちの家族だよ!』

今の母さんは…父さんは…今の俺の一番大事な人達だ。だから…そう。





「帰らないと」

獣の吐息で目覚めた俺は目の前のゴブリンと位置を入れ替え一回転する様に鉈を振るった。

「ふーっ、1時間ってとこか。」

ステータスで時刻を確認全滅させてからきっかり1時間でこいつらは再設置される様だ。


やっぱり、このおかしくなっちまった世界には3つのルールがそれを司るなんかがいる。

その3者はそれぞれ『魔境』、『探索者』『システム』に分けられる。

『魔境』はまさに人外魔境そのもの、人が人として生きる事を許さない禁足地にして暴力のみが全てを支配する獣の世界だ。

そこに取り込まれた『探索者』を支援する謎の存在、これはおそらく人類に味方しているのではなく『魔境』の敵であるだけであり、与えられる自我兵装や性能は個々人の素質による物でそこに気遣いはない、全人類が同程度のステータスから出発してれば話は別だが明らかにこの存在は魔境を滅ぼす手駒として手近な生き物を先兵へと作り替えているだけ、極めて合理的な獣の否定者だ。

そして最後にこのポップやドロップ、ランダム転移や階層構造など魔境と探索者のバランスをとっている存在、こいつの考え方は極めて不明瞭だが、一つわかっているのは好意的な物ではないということ、どちらかと言えばこちらを試すかの様な感じがする。あくまでも調停者気取りで魔境とも探索者とも相容れない、そんな何かだ。

「だがまぁ、なんにしろ…」

こいつらには経験値になってもらう。

「『これより戦闘(Execute)を実行する(Execution )』!」

前と違って掛け声に合わせて某ライダーのベルトめいた声が鉈から聴こえ少しビビったのは内緒だ。

コウタリジンキチ lv7

『肉体性能 100+80

精神性能 100+80

特殊性能 150+70


総計580

防護値90/90

精神値80/90

経験値70/300


自我兵装(ソウルアーマー)

変則変形斧鉈『X −cution』

-変形鉈

-変形斧

等価値変換術『X −change』

-等価変換 消費 0〜X

 -拡張能力 『イレカエ』 消費 1

 -EX 経験変換 消費 瀕死の敵対者

-性能変換 消費 経験値or性能値

-圧縮変換 消費 10


拡張自我(アイデンティティ)

new『死の宣告』

-自ら定めた言霊により宣言を聞いた相手に自分との戦いを強制し自身を僅かに強化する

設定言霊『戦闘を実行する』


拾得物

教科書(全教科一冊)

圧縮無地ノート(現在29,700頁)

兵糧丸×4

オニギリ×38

ペンケース

new制服(男子)×3

new制服(女子)×2

new体操着

newスク水

new水筒

new小鬼殺し

new小鬼の一欠片

』

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