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2011/04/02 アップデートと時間経過


「うぉ…まじゅ…」

座って闘いの高揚感と僅かな火照りを楽しんでいたがそれでも人間腹は空く。幸い俺にはあのニンジャが落とした兵糧丸があったのでとりあえず取り出して食べてみた。

その結果、雑多な穀物ベースの餅的な何かにコレまた雑多な味の…何と言うか薬臭い様な、薬草的な何かの味やら血なのか肉なのかわからん様な妙な臭気と味に苦しんだ。

今更ながら水がないの気がついたがとりあえずそれは今重要では…無くはないが、すぐに解決できるので明日に持ち越しだ。

…そう、どうやらついさっきこのトンチキ謎SFプレートにアップデートが入ったのだ。追加されたのは日付表示とメモ、そしてパーティー機能と言うモノだ。まじで益々ゲームめいてきたが常に夕焼けの様な状態の空から時刻を推察するのは不可能なので日付機能はありがたい、ついでにメモも日記帳の様に使うことにした。

とりあえず今までの事をそれらしく書きまとめ数学の勉強をする。

敵の気配も彼女が起きる気配もないのだしょうがないだろう。時間潰しもあるし、この騒動が終わった後にお勉強できないのでどこにも行けませんとかは笑えない、それに戦闘という非日常がコレから日常となっていくのだろうが、こういう普通の事も当たり前に行えないと自分自身がどうなってしまうかわからない、当たり前を当たり前に、普通のことを普通にすると言うのは生きていく上で重要なのだ。

「なんてね、それっぽく書いてるだけだしー」

日記も独り言よりは健全かなという理由でつけているだけだ。今回のことで痛感したがどうにも自分は寂しがりな様で人を避けたいと思いながらも関わりたいとも思ってしまっている。クソ自己矛盾野郎だが…まぁ、必死こいて友達作ろうとしてたのも俺自身が孤独を嫌っていたからなのだろう。…それはそれで良いのだが、このクソ女(仮定)と一緒に行動するのはちょっとどうかなぁと思う。それもこれもこいつが起きてから考えるとしよう。

「…そういえばlv5になった時振り分け点が入ってたな」

ステータスを開く。

『コウタリジンキチ lv5

肉体性能 100+40

精神性能 100+40

特殊性能 150+40


振り分け点50


総計470+50

防護値70/70

精神値70/70

経験値0/100


自我兵装ソウルアーマー

変則変形斧鉈『X −cution』

-変形鉈

-変形斧

等価値変換術『X −change』

-等価変換 消費 0〜X

 -EX 経験変換 消費 瀕死の敵対者

-性能変換 消費 経験値or性能値

-圧縮変換 消費 10


拾得物 

教科書(数学)

兵糧丸×4

折りたたみナイフ

』

さて、どうしようかな、順当に行けば近接アタッカーである俺が伸ばすべきなのは身体性能一択なんだが…精神値の枯渇による痛みや戦闘続行の難しさ、変換術の有効性を確かめた今精神性能や特殊性能も悪くはない様に見える。それに特殊性能は200とかキリのいい数字にした時何かありそうな気がするんだよねぇー?

『肉体性能 100+60

精神性能 100+60

特殊性能 150+50


総計520

防護値80/80

精神値80/80

経験値0/100


自我兵装

ソウルアーマー

変換術

-new拡張能力『イレカエ』

消費1 指定した物体と自身にのみ適用可能、自身と任意物体の位置関係を瞬時に入れ替える。』


ビンゴである。しかもなかなか使えそうで使えないタイプだが使いこなせれば有用なモノだ。意図的に自分の体から離せば消えてしまうのが自我兵装の性質何で自我兵装と自分を入れ替えるのは難しいだろうが投げた石やそこらじゅうにある椅子や机と自分の位置を入れ替えることができれば目眩しや死角からの奇襲に役立つ。問題はイレカエ時のエネルギーや体勢だが…ま、どうにかなるだろう。

…じゃあ次は…


「起きてるんだろ、久世。」

「…起きてねぇし、目が開いただけだし。」

それを起きたと人は言うと思うんだ。


今の久世の姿は前側がビリビリに破けた服とはいえない何かを握りしめて俺のブレザーを羽織り下着も丸出しで蹲っている状態だ。

うっすらと割れた腹筋やよくよく見れば鍛えられた腕、スキンケアの結果なのか細かな傷は目立たないがそれでも彼女には戦闘者として鍛えられた痕跡がある。

「…流石に俺も上半身裸で歩き回りたくはないな、モンスターどもからのドロップを期待するしかないだろう。」

「そんなのはどうでもいいの、問題は何であんたはこっち襲ってこない訳、一応殺そうとしてんのよ?こっちは!」

羞恥をあまり感じないのか下着があるからセーフなのか、なんにせよ服はどうでもいいらしい、眼福ではあるが防御や体温調節に難があるのは事実なので見つけ次第着せよう。

「その答えは簡単だ。人手が欲しい、この広大な魔境をどうにか攻略するには確実に使える人手がいる。」

それに俺も好き好んで殺しをしたいとは思わない、少なくとも人間である限り嫌悪はするしこちらへの害意がある限り殺意を持って応対するが…

「それにお前も気が抜けているだろう。…戦う時間は終わりって訳、ぼちぼち建設的な事も考えないとねぇー」

「…わかってないと思うけどその口調の移り変わり不気味よ、オンオフがはっきりしてるのは助かるけどね…ハァ〜」

おっと、そうだった。というか不気味とかいうな陽キャっぽいノリのためにせっかく作った口調なのに、いや、この場合は移り変わるのがキモいだけでチャラ男風の方に統一すれば…

「それに…あんた。元の口調の方がいいんじゃない?カッコいいわよ。」

「よし、今度から断定系で話す系男子になる。」

「…やっぱいいわ、どっちでも。」

くっ、何故だ!目の前の美少女が一瞬乙女っぽくなったのに!何の選択肢を間違えてフラグを折ったんだぁ!俺ぇ!


結局俺のブレザーの前を閉じた半痴女スタイルで彼女は諦め混じりにため息をついた。

ナイフを返そうかというとそこまで情けをかけられる筋合いはないし、戦って勝ち取ったモノを対価なしに返してもらおうなんて呑気な頭はしていないからいいとつっかえされる。確かにそうだと納得はするが大丈夫ではないだろう。ひとまず襲いかかってこないこと、必要な時以外互いに干渉しない事を条件として飲ませて無理やり懐に押し込んだ。

するとやはりバカを見る様な目を向けてくるが…俺より弱いんだから持っとけというと不機嫌そうに唇を尖らせるのであった。


少しの間俺も目を瞑り、壁に寄りかかっているといつの間にやら横に来た久世がぽつりとこぼす。

「んで、なんだってそんなこと言い出す訳、此のガッコそれなりに人いるでしょ?」

…攻略のことか、と思い当たるがいかんせん話してから間が空きすぎだろ…まぁしゃべるがね。

「うむ、それは事実でこの学校はただでさえ子供の人口が多いベッドタウンのさらに人口密集地にある中学校、学区内の子ども全てを引き受ける公立学校の為今季も8だか10クラスある。だが…そこから生き残るのはかなり甘く見積もって1割以下、戦えるのはその更に1割以下、違うか?」

「…」

そう、この魔境に取り込まれた人数が多くても魔境に立ち向かえる様な人材がどれほどいるか、これが問題なのだ。よくある創作物の様に都合よく勇者めいた奴らがいればいいが俺の元いたグループはそういう感じじゃないし、今時妙な正義感で暴走する様なやつは小学校低学年で卒業するか心折れて根暗オタクになるかどっか別の暮らしやすいとこに移る。希少な生き残りも中身は点数稼ぎに奔走するカスでしかもそのために他人を陥れる事も厭わない様なやつらばかり、戦うなんてもってのほかな自己保身の塊ばかりだ。

そういう事もあって彼女の様に性格が最悪最低の外道(要経過観察)だろうが『戦える』というのはとても重要なのだ。

「ま、そういう訳だ。よろしくはしたくないし攻略途中で死んでくれて構わないが戦ってくれ、俺の目的のためにな。」

「ひどいわね、ま、けどいいわ利用されてあげようじゃないの。」

おっと何故か好感触、なに、貶されて喜ぶ系女子?真性の変態か何かか?

「何考えてるか知らないけど違うわよ、要は生き残ってればいい訳でしょ?」

…ああ、まぁそうか、何故彼女が安心しているのか理解できた。そして俺も自分で言っていることの普通さに驚いた。

なにせ今の状況では物資を探すのも生きるのも何をするにしても魔境に適応する必要がある。どんな形でも彼女はこの世界で生きていられる精神性と力がある。彼女にとって俺の頼み事はそのまま生存という極々当たり前の話になる訳だ。

それならば安心だ。俺は自我兵装を担ぎ歩き出す。

「出来れば仲間を作るといい、俺は…どうにも人が苦手らしい、つい最近置き去りにされたばかりであまりいい状態ではないんだ。」

それに戦うなんて非日常を楽しめている俺に他の普通の人間がついてこれるとも思わない、客観的に狂人な俺に仲間は作れないし要らないが、彼女ならばうまくやるだろう。

「ふーん、ここで仲間になってくれなんて言わないあたり好きよ。」

「す、好きとか言うなよ…」

無駄に艶のある声でそんなことを宣う中学2年生…うっ、エロい…ちょっと悶々としたが俺は視界内の壁のカケラと自分の位置を入れ替えて教室から去ることにした。


…きっと、後悔はしない、彼女は死んでも心が痛まない、彼女には何か理由があって、それに自分を掛けられるだけの意味があった。

だけど俺にとってのそれはそこらのゴミとおなじようにみえた。

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