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Servant×Survival  作者: 長門葵
出会いと真実
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自由は語るものではない。勝ち取るものだ

             - Vフォー・ヴェンデッタ -

 アルフィードと総司が決闘を行った訓練所で、多くのエルフとゾンビと化した死体たちがごった返していた。

 乱戦。

 その言葉でしか形容できないように入れ乱れる戦場で一段階も二段階も激しく動き回る影が二つ。シンビとヘルバである。


「あはは、なまったんじゃないかシンビ。見た目どおり年をくったのかい!」


「盲目しましたかヘルバ。あなたより私のほうが1体多く屠ってますよ」


「じゃあ~これで相子だ」


 ヘルバは杖のような細身の剣と義足だった部分に刀の刃を差し込んだ二刀でゾンビの中を縦横無尽に駆け回り、次々と首を落としていく。


 シンビは最小限の動きで訓練所の中心から、銃の形をした魔道具で次々とゾンビの額に風穴を作っていく。

 軽口をたたきあいながらゾンビを動かぬ屍へと変えていく姿に兵士たちも勇気付けられ、奮起している。しかし、どうあろうとエルフ。肉弾戦は得意としないところだ。リミットが壊れ、肉体の限界を超えた力で迫るゾンビに兵隊たちは押し負ける。シンビとヘルバがフォローに回るものの、ゾンビの数は増え、それに比例し味方の数は減っていく一方。その結果、百は居ただろう兵隊が30人程度まで減ってしまった。


「ジリ貧ですね」


「そうだな。老骨には辛い運動だ」


 常に動き回る二人は肩を上下させていた。

 一時間以上の戦闘にさすがの二人にも疲労が見え始めた。しかし、二人の顔には辛さ、苦しさの欠片は一片もあらず、愉悦にゆがむ口元が煌く。


「こんな|戦闘≪遊び≫はいつ以来だろうね」


「ご主人様に仕える前・・・奴隷国家に喧嘩を売って以来でしょうか」


「ああ、あれは楽しかったな。万を超える兵隊と」


「万を超える兵器が私たち二人を殺そうと躍起でした」


 懐かしむようにはにかむ二人。

 シンビとヘルバは革命家だった。エルフでありながら奴隷を認めず、貴族王族と平民貧民との間にあった貧富の差に憤りを感じて数十名だけで成り立つ革命団を結成した。

 百名からなる軍隊を二人だけつぶしたという伝説を作り上げた二人はいつの間にか、その美貌と強さで『壊滅の女神』と称されるようになっていた。

 そして、革命軍が消えることとなる『最後の聖戦』と呼ばれた戦があった。

 相手は今は亡き奴隷国家。

 奴隷も含め、一万を超える魔道具で武装した兵士たち。

 結果は見えていた。革命軍も無謀なことをする。そういった世間の声をはいとも簡単に裏切られ、革命軍が勝利した。しかも、兵士として駆り出されていた奴隷を誰一人殺さずに。

 これが聖戦と称される理由だ。

 しかし、勝利と引き換えに革命軍は全員死亡。革命軍は崩壊したということになっていた。

 だが、これの話はガルシルドが意図的に世間に流したうわさであった。

 瀕死となった革命軍の生き残りは奴隷国家の王を打つと死に場所を決めたかのように皆が戦場に無防備に寝転がった。


「俺たちはやったんだな」

「ああ、世界をひっくり返してやった」

「シンビさん、ヘルバさん、ありがとう」


 そんな仲間たちの最後の言葉を聴きながら、息を止める瞬間を空を見上げながら待った。

 

「へへ、見ろよ。私たちの戦いにお天道様もにっこりだ」


「そうですね・・・ヘルバ。きっと、数年後には私たちは吟遊詩人に謡われる英雄ですよ」


「おう、それはいいな」

「俺らが英雄か。むず痒いな」

「えへへ」


 もう思い残すことはない。

 革命は成し遂げた。

 皆が満足して笑う。


「馬鹿者が!」


 いきなり響く怒号。

 驚き跳ね上がる革命家たち。声の方を見ると大剣を背負う男が仁王立ちで革命家たちを見下ろしていた。これが若きガルシルドだ。


「おいおい、ここでラスボスかよ」


「あ~最後くらいは平穏に終わらせたかったな」


 苦笑と文句をこぼしながら、ぼろぼろの体を起こし武器を構える革命家たち。そんな革命家たちを見て、歯を見せて笑顔をみせるガルシルド。


「なんだ、まだ元気じゃないか」


 嫌味と捕らえたシンビは空砲を空に向かって放ち。ヘルバはそれに応えるように彷徨をあげる。


「私たちにも・・・|意地≪プライド≫があんだ」


「そうです。舐められて、はいそうですかと済ませられるほど育ちもよくないのですよ」


 ヘルバとシンビは先頭に立ち、殺意をむき出しにする。すでに瀕死だったものたちだ。立つのもやっとである。しかし、気力だけで目の前の獅子の喉元を食い破ろうと牙をむき出しにする。


「そうだ。それでいい!がはは」


いきなり笑い始めるガルシルドに拍子抜けする革命家たち。ガルシルドは両手を広げ、大声をあげて呼びかける。


「こんなところで満足して死ぬなぞもったいない。お前たちの牙はまだ健在だ。ならば!」


「・・・ならば」


 シンビが聞きなおし言葉の先を促すと、ガルシルドは少年のような笑みを浮かべた。


「俺の元で革命を続けよ。今度はこんなちっぽけな国だけではない。大陸すべてを巻き込んでだ」


 戦場で唐突にスカウトされた革命軍は王国直属先鋭部隊となり、三種族での大戦で別の名を世界中に広げることとなった。

 今、戦場となった訓練所で生き残ったエルフの中の半数は元革命軍だった者たちだ。シンビとヘルバがすれ違うたびに「恩をまだ返せてない」「俺らの革命はまだ終わってねぇよな」と笑みを見せながら奮迅する。


「そうだ、あん時から私らの革命はまだ続いてる」


「はい。主にまだあの青空をみせられてません」


 シンビとヘルバはほんの一瞬目を合わせ、そして、また小さく笑う。


「死ぬんじゃねぇぞお前ら!私らのしぶとさはこんなもんじゃねぇだろ」


「「「おお!」」」


 ヘルバの声に呼応して元革命家たちは力を振り絞る。

 そんな姿を一体のリザードマンが卑下の笑みを浮かべ、見つめるのだった。


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