18
右頬に真っ赤な紅葉を貼りつけて窓の外を覘く総司。
ゾンビとなったエルフたちは庭を何も気がつかないようにあるものは草木の手入れ、あるものは城門の警備とまるでなにげない日常を過ごすように。
「拘束性はないのか。それとも命令を出せる限度があるのか」
総司はちらりと視線のむきをかえる。そこには場内の地図を囲うエレアノーラたちの姿があった。
「本当にわかるんでしょうかね」
地図とのにらめっこに参加していなかったグリズベアがぼそりと呟く。総司は頬に着いた紅葉をさすりながら、鼻で笑う。
「知ってると言うならそれに乗っかるしかないだろ。正直、王様見つからなかったらこの城ごとぶっ壊せばいい」
外のゾンビどもを眺めている総司は大きなあくびをかます。余裕なのか何も考えない愚者なのか。それはグリズベアでは計り知れなかった。
「大丈夫。もうそろそろ動くぜ」
総司が椅子から立ち上がるのと同時にエレアノールたちも立ちあがった。
「隠し通路の場所は確認できた。後はそこを探索、所定の時間にアルと合流するのが目的。いいわね。うごくわよ」
エレアノールの声で一斉に動くメイドたち。
「さてはて、では綺麗に王女様が恰好をつけたわけですしこの嫌われ者が先陣を切りますかな」
すっと立ち上がり、総司は部屋に唯一存在する出入り口の扉まで歩み寄る。総司は左腕を手に掲げる。にこりと口許を釣り上げる。その表情に全員が嫌な気配を感じずにはいられなかった。
「準備はいいか」
『It's to the extent it's rather late. My master(むしろ遅いぐらいですよ。我が主)』
「おお。それはわるいな」
アストレアが光輝き、分離された左手は大剣に姿を変えた。それを大きく振りかぶると大きな大きな扉を弾き飛ばす。
「ぐぎゃ」
「ごおぉぶ」
弾き飛ばされた扉は部屋の前に集まっていたゾンビを巻き込みながら通路の端に激突した。
「なな、なにをしてんのよ」
慌てるエレアノール。
それはそうだろう。いくら扉前のゾンビを倒したとしたところでその音に反応してゾンビが更に集まる。逃げている立場で居場所をばらしているのだ。慌てるなという方が無理な話だ。
「さて姫様。お急ぎだ。後戻りできねえぞ」
「そ、そんなのわかってるけどなによこれ!」
「おれは長引くの嫌いだ。イエスかノーかでこたえろ」
「・・・」
エレアノールは唾をのみこむ。
まただ。
目の前に迫る危機的現状が児戯の様に感じる恐怖。自分はもう死んでいるのではないかと錯覚させるほどの殺意。
鎌を振り上げた死神が試すかのようにこちらを見て笑ってる。
エレアノールは首にかかる鎌に恐怖しもう一度大きく唾を飲み込む。つま先は冷たくなり膝は茶を沸かす勢いで震えて・・・その顔は笑っていた。
「覚悟は・・・できてるわ」
総司はそれを見て、にっこりと笑みを浮かべた。
「俺はつかえるもんは全部使うぞ。たとえ屍でも」
「そんなのはとうの前に知っていることだわ」
「俺は正義の味方じゃない。足手まといになったら平気で捨ててくぞ」
「その覚悟はできてるっての」
総司はそうかとアストレアを握りなおす。
「じゃあ、城探検にでるとしますかね」




