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Servant×Survival  作者: 長門葵
出会いと真実
18/28

17

 ゾンビと化したエルフたちから逃走する総司達は食堂に戻ってきていた。

「あの優男はうまくやってんだろうな」

 グリズベアは悪態をつきつつも額に浮かぶ汗をぬぐいながら、あたりを見回す。どうやら、近場に人らしい人(この場合はエルフが正しいだろうが)はおらず、一旦の平穏に息を吐き出す。

「しかし、頭。作戦といっても、演習場に人数を集めろだなんて、なんか算段でもあるんですかい?」

 いま現在、食堂にいるのは総司、エレアノール、グリズベア、それと途中で拾ったメイド数名がいる。その全員がグリズベアの質問に視線を一点に集める。

「算段というほどのものじゃねえが、勝算ならある」

 鼻をほじりながら気の抜けた声でそう答える。疑心の眼差しが助けたメイドたちより向けられる。しかし、それにたいしても総司は「そんな見つめんなよ、照れるじゃねぇか」とおどけて笑った。エレアノールもメイドたちほどではないが不安を隠せなかった。信頼していた隣国の王でありこの国たっての英雄であるスウォンが殺され、忠義を誓った兵ともどもゾンビとされた。そして、なにより

(・・・父様)

 スウォンとともにいたであろうガルシルドの安否がわからないことにより一層の不安が募っていく。そんな中、目の前の男は現状に何一切の緊張感を感じさせない。それはエレアノールの不安と怒りをじりじりと膨らませていく。

「そう、焦るな姫様」

 鼻くそを小指で飛ばしながら、総司は落ち着いた声で話す。

「あの王がのうのうと殺されるとも思わねぇ。それにあの御付のおっさんも見当たらん。どこかに隠れてる可能性が高い。きっと生きてるだろうから心配すんなや」

 総司はエレアノールの頭をぽんぽんと軽く撫でると近くの窓から外の様子を眺める。なんだか子供扱いされているようなその態度に唸って抗議するエレアノールを無視して外を蠢くゾンビたちを注視する。

「バイオ○ザードを体験する日がくるとはな」

ため息をこぼすと総司はメイドに視線を向ける。

「おい、あんた」

「は、はい!」

「メイド長はどこにいるかわかるか」

「あ、あの、ちょっと」

いきなりの質問に困惑するメイドに少し唸って考えこむ。グリズベアが急かすように睨みを効かせるが、逆効果に彼女は余計に縮みこんでしまった。

「やめろ」

「いて」

 総司はグリズベアの頭にゲンコツを入れる。

「お前の強面で睨みつけられたら、みんなションベン漏らしちまうだろうが」

「そ、そんなことしません!」

 メイドは顔を真っ赤にして抗議の声を上げる。総司は悪かった悪かったと笑いながら謝罪の言葉を口にする。

「じゃあ、質問の続きだ。この城に隠し通路なんかはあるか」

「わ、わかりません。知っていてもあなたのような下等種に教えはしません」

「てめぇ、頭に向かってなんて口を」

「ひっ」

「よせ」

 今にでも噛みつきそうなグリズベアの顔面を平手打ちで黙らす総司。だがとめた本人は感情を感じさせない笑顔で座り込みメイドに目線をあわせる。

「悪かったな。ションベン垂れてる下っ端メイドごときにそんな秘密を聞いた俺がバカだった」

「なっ!」

「間違ってないだろ。実際、大切なことは知らされてないんだろ?」

 フルフルと震えるメイド。周りの二人のメイドはあわあわと総司とそのメイドの顔を何回も見直す。そりゃあもう首が疲れないのかという勢いだ。

 総司は内心にやりとほくそ笑んだ。

 少し年上に狙いをつけて悪態をついたが、どうやらいい獲物が釣れたらしい。

「そりゃ仕方ない。下等種と馬鹿にしといてわりにはそいつらに睨まれただけで黙り込んでしまう小心者だもんな」

 口火を切った銃のように早口で責め立てる。

「おいおい。返す言葉も見つからねえのか上等種さまよ。下を見る前に自分のボキャのなさを恥じるべきじゃねぇのか。下等下等言ってると馬鹿に見えるぜ。ここの下っ端は言葉もろくに習わせてもらえないのか」

「あなたは何さまですか」

 肩を震わすメイド。総司は嘲笑をうかべる。

「は、何さま?てめぇは自分の言葉を忘れたのか。下等種様だ。自分で吐いた言葉にも責任が持てないとはこれまた下等種にも劣る記憶力をお持ちの様で。そりゃ、こんな忘れん坊に何か教えるなんて無駄だわな」


 ぱん!


 乾いた音が部屋に広がる。

 怒られていたメイドではなくエレアノールの手が総司の頬を叩いていた。これには総司も驚くように目を丸くする。

「あんた・・・いい加減にしなさい」

「ひ、ひめさ―

 今度はエレアノールが壁にしていた机を蹴飛ばす。姫様なんて呼ばれるのにはふさわしくないぐらい見事な蹴りだった。

「あなたたちもいい加減にしなさい!いまは非常事態なのよ!王国のピンチなの。種なんてものを気にする暇があるのなら、今すぐ知ってることを話しなさい!」

「・・・」

「返事は!」

「か、畏まりました」

 唖然と口を広げていたメイドたちはエレアノールの叱咤で動き出す。

「大丈夫ですか兄貴」

 額に紅葉を作った総司を心配そうにするグリズベア。総司は怒号を飛ばすエレアノールを見ながら、頬をさする。

「ちょっと考えていたのとは少し違うが結果オーライってやつかな」

「さ、さいですか?」

「・・・」

「・・・」

「女ってのはこわいなー」

「へい」

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