12
訓練所から場所はかわり、シンビに報酬の受け渡しとして兵士用の食堂につれてこられた総司陣営。
そこで一心不乱にご飯をかきこむ総司のテーブルはまたもや不審な空気が流れていた。
「・・・」
「・・・」
そのテーブルには次々と運ばれてくる料理をかきこむ総司、体に似合わずびくびくとしながらご飯を摘むグリズベア、サルゾ、マックの三人、そして包帯ぐるぐる巻きのアルフィードが貧乏ゆすりでテーブルをものすごい勢いで揺らして鎮座していた。
「おい、お前。うっとうしい」
「・・・文句を言うなら違う席に行け」
「先に座っていたのは俺らだ。空気読むのはおまえだろ」
「私だってこんなには居たくはない!・・・シンビ様に言われなければ一刻も早く出ていくわ!」
「じゃあ、少しは静かにしろ」
「貴様・・・!」
「なんだ包帯ぐるぐる巻き。そのけがでまたやんのかぁ」
二人がまた火花を散らす。
こんな状況になった原因は、少し離れたところでエレアノールと場に合わない雰囲気を漂わせ紅茶をすすっていた。
―数分前―
食堂にたどり着くと細身ながら筋肉質な体をさらす男たちが数名でものすごい勢いで料理を作っては運んで、中央のテーブルには多くの料理が並べられ、そこだけ王族のパーティーにも負けない豪華さを創り出していた。
「姫様の手助けならびに数々の非礼のお詫びとしてこちらも全力をもってやらせていただきます」
シンビは一礼するとそのテーブルに総司たちを案内する。
「美味そうだな~」
「どれも見たことねぇような高級食材だらけだぜ」
「俺、今日死んでもいいかもしれん」
「じゅるり」
総司とグリズベアの三人組がそれぞれ目の前の光景に感想を漏らす。
しかし、その輝いた目もすぐに嫌そうにゆがむ。
「・・・なんでてめえがここにいんだよ!」
グリズベアがどなりつけた相手は鼻をふんっと鳴らし、そっぽを向く。
「この無礼者には皆様の話し相手になっていただきます。未熟者ではありますがよろしくお願いします」
そこには有無を言わさない一輪の笑みが咲いていた。
その結果が現状である。
総司とアルフィードが何度もいがみ合い、それを腫物に触れるような様子で見守る三人組。なんともにぎやかな席である。
「ふ~くったくった」
そんな食事も総司が満足すると同時に狩猟を告げた。
「その体のどこにそんなに入るのだ」
アルフィードも驚きの声を漏らす。
総司の前には山盛り盛られた皿が何列も出来上がり、厨房では料理をしていた男たちが息も絶え絶えで座り込んでいた。
食後の茶をすする総司は何かお思いついたようにアルフィードに視線を向ける。
「そういやさ、隣国の王様とかいったか。えーっと・・・」
「スウォンさまのことか」
「そうそう。そのすなんちゃらさんがさっき来てたけど、そもそも王国ってここ以外にもあんの?」
「ふん!これだから下等種は・・・」
「アルフィード?」
「ひっ!」
シンビの一声でひきつった声を一回あげてから、ごまかすように咳払いをする。
「そもそも、この大陸セルバルゼは三つの大国の力で治められている。一つが我が国エリスマグナだ。すべてに秀でているこの大陸一の大国だ。その次がスウォン様の治められるマクス王国。スウォン様のお考えでけしてほめられたものではないが多くの多種族が住居し、海にも隣接してることも理由となり貿易が盛んで経済の玄関とも呼ばれている大国だ。隣国と言いながらも大森林を挟んでいるためあまり交流があるともいえなかったが、わが王とスウォン様が幼いころからの親友ということもあり、今ではよくこうして会談が設けられている。そして、最後の一つが西の山岳地帯にある学術国家ホウボウだ。この大国は魔法の研究が一任された研究者たちが住まう都市であり、通称『偏屈の集いし国』だ。あまり言いたくはないが我々には理解できない言動をする方が多くいることから有名な国だ。しかし、実績は素晴らしいもので、それを認められてか多種族も参加する大規模な研究発表の場となる学術研究会が開催されるのも毎度ホウボウである。聞いているのか下等種!」
説明が終わるころには総司は船をこいでいた。説明を求められてこれである。これは怒っていいものだろう。さすがのシンビも止めにははいらなかった。
「聞いてたからそうかっかすんなよ。禿るぞ」
「お前・・・どこまでも私を侮辱するつもりか!」
「そう怒るなって。悪かったよ。しかし、獣族の国の在り方とは結構違うんだな」
「そういえば、お前は獣のところにいたんだったか」
「まぁな」
ぐだーとテーブルにつっぷす総司。そのまま、寝てしまいそうな感じで物思いにふける総司を珍しいものを見るようにアルフィードが見つめる。
「・・・なんだよ。そんな見つめんなよ。俺にそっちの気はねぇぞ」
「!!そんなのではないは!ただ・・・」
がばっと立ち上がったが言葉を詰まらせ、すぐに腰を下ろす。
「ただ、お前があまりにも強者には見えなくてな」
「そりゃそうだろ。俺はただの凡人だからな」
「それはどういう意味-」
「緊急!緊急!」
アルフィードのセリフは食堂に急いで駆け込んできた兵士の声でとぎれた。
「魔女軍が攻めてきました!」
その突然の知らせに周りは呆然とするのだった。




