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剣と魔法と何でも屋  作者: リース
第一章
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第5話 何でも屋開業準備3

 家のリフォームが始まってから十日が経った。オフィスも外から見てわかるくらい形になってきている。

 放課後、いつものように廊下で待ち合わせた私達は何でも屋に必要な物を買うため駅前に来ている。

「まずは何を買うの?」

「えっと……文房具類だよ」

 私はメモを見ながら応える。

「それなら文房具屋さんだね」

「うん、特に変わったものは必要ないし、このお店でそろうと思うよ」

 私達は駅前のそれほど大きくない文房具屋へと入る。ペンや定規など適当に必要になりそうなものをカゴヘ放りこんでいく。

「ねえ、麗奈。定規とか持ってるんじゃないの?」

「ああ、それはそうだけど……ほら、折角だから新しいのが良いなって思って」

 新しくお店を始めるのだから道具も全部新しい方が気分が良いよね。

「まあ、なんとなくわかる気がする」

「でしょ?」

 

 文房具を買い揃えた後、私の家へ一度戻り、荷物を置く。

「そういえば結衣はどんな椅子が良いと思う?」

  港の近くにある輸入家具専門へと向かうタクシーの中で、私は結衣に聞いた。

「椅子か~、やっぱり革張りが良いんじゃないかな」

「あ、結衣もそう思う? 私も革が良いかなって思ってたの」

「うん。お洒落だし、それになんだか雰囲気があって良いと思うよ」

「それじゃあ、椅子は革で決定だね」

「そうだね。まあ、もっと良いのがお店にあれば別だけどね」

「それもそっか」

 

 タクシーに乗ること二十分。家具屋へ着いた私達は、店員さんに案内されて店内を見て回る。

「あっ、結衣見て。あれなんかいいんじゃないかな?」

「どれ?」

「ほら、あの椅子。言ってたみたいに革張りだし、それに座り心地もよさそうじゃない?」

「イメージにぴったりだね。座ってみようよ」

 私は途中で見かけた、黒革のデスクチェアに腰をかける。

「うん、やっぱり座り心地も良い感じ」

「それじゃあこれにする?」

「うん、これに決定!」

 

 その後も机や本棚等を見て回り、オフィスに置く家具を買いそろえた。今日買った物は全部、リフォームが完了する日に配達してもらうことにした。

「もうこんな時間だね~」

「さすがに、これから帰って作るのも面倒だし、どこかで食べて帰ろう」

「それが良いね」

 家具屋さんでゆっくりと見ていたため、店を出たときには随分と遅くなっていた。私達は途中で夕食をとってから家へと戻った。

「ただいま」

「ただいま……ふわぁ~」

 結衣があくびをしている。放課後もずっと出かけていたし眠たいよね。私も今日は疲れていたので、二人で簡単にシャワーを浴びて寝ることにした。

 

 

 四日後、ついにリフォームが終わる日だ。朝食を済ませた私達は、部屋で明日から開業する何でも屋について話していた。

「ねえ結衣、どうすればいいかな?」

「ん、何が?」

「ほら、何でも屋だけどお客さん来てくれるかな~って」

「さすがに、最初のうちは少ないと思うけれど、だんだん増えてくるんじゃないかな?」

「そうだといいけれど……」

「とりあえず、何でも屋の事を知ってもらわないと始まらないね」

「どうするのが良いかな?」

「やっぱり広告が良いと思うよ」

「広告か~、よし、それじゃあ早速作ろう」

「オッケー、それじゃあまずはお店の名前だね。何にする?」

 そう言って結衣はパソコンの電源をつける。

「ああ、それならもう考えてあるよ。ラクスなんてどうかな?」

「ラクス……響きは悪くないけれどどういう意味なの?」

「ラテン語で湖っていう意味だよ。お互いの名字から水瀬の水と涼海の海を合わせて水海にしたんだけど……」

「なるほど……良いんじゃないかな」

「えへへ、それじゃあラクスに決定ね」

 早速結衣がお店の名前を打ち込む。

 

「後は料金だけどどうする?」

「うーん……依頼内容にもよるし、依頼時に相談で。あと、お金以外でも可って書いておいて」

「ちょっと待ってね……よし、出来た! これでどうかな?」

 結衣がパソコンのディスプレイをこちらに向ける。

「おーっ! さすが結衣だね。完璧じゃない?」

「そうかな? ありがとう」

「それじゃあ、とりあえず三百枚程印刷してくれる?」

「三百枚か~、結構かかりそうだね」

「それじゃあ、その間にリフォームの様子でも見に行こうよ。お昼前に終わると言ってたし、もうすぐ終わるかも」

 

「おお、ちょうど今お呼びしに行こうと思っていたところです」

 私達が階段を下りようとすると、木観さんも階段を上ってきていた。

「ということは、終わったんですか?」

「はい、お待たせいたしました」

「結衣、早速見に行こう!」

「うん!」

 

「おおー!」

 思わず声をあげる。リビングに新しく出来た扉を開けると綺麗なオフィスが完成していた。

「それでは簡単に説明させていただきますね」

「あ、はい。お願いします」

「まず、こちらが照明のスイッチになります。そして横のパネルが床暖房です」

 木観さんが、それぞれの箇所を説明していく。

「以上になります。何か質問等はございますでしょうか?」

「いえ、特にありません」

「そうですか。それではこちらの書類の方に記入をお願いします」

 私は木観さんから受け取った書類に記入する。

「ありがとうございます。それでは私どもはこれで失礼させていただきます。この度はありがとうございました。また、何かございましたらよろしくお願いいたします」

「こちらこそありがとうございました」

 

 木観さん達が帰った後、昼食を済ませた私達は、駅前のお店に仕事用のスーツを買いに行くことにした。お店までの道で印刷したばかりの広告を投函していく。

「そういえば今日、家具が届くんじゃなかったっけ? 家に居なくて大丈夫かな?」

「夕方に届くはずだからそれまでに帰れば問題ないよ」

 

 丁度三百枚を配り終えたあたりで目当ての服屋さんへと着いた。店員さんにサイズを測ってもらい、三着ずつ買った。

 スーツを持って家へと帰る途中、私の携帯が鳴った。携帯の画面を見ると陽香ちゃんからだ。

 

「はい、涼海です」

「あ、もしもし涼海さん、木観だよ。これから遊びに行っても良いかな? リフォーム終わったんでしょ?」

「良いけれど、これから家具とか届くからあまり遊べないかも」

「ああ、それなら私も手伝うよ。それじゃあ今から行くね」

 

「誰か来るの?」

「うん、陽香ちゃんが遊びに来るって」

「あ、そうなんだ。それなら急いで帰らないとね」

 

 私達が家に帰って少しすると陽香ちゃんが遊びに来た。

「やっほー。涼海さん、水瀬さん、遊びに来たよ」

「こんにちは、陽香ちゃん」

「こんにちは」

「リフォーム終わったんだよね。良かったら見せてくれないかな?」

「もちろんいいよ」

 私は出来たばかりのオフィスに陽香ちゃんを案内する。

「うわー、広いね~」

「まだ何もないからね~」

「それでも、十畳以上あるんじゃない?」

「うん、十二畳あるよ」

「私の部屋の倍以上か~」

「まあ、オフィスだしね」

「そういえば木観さんの家はあのお店?」

「ううん、家はあの近くに別にあるよ」

「そうだったんだ。てっきりあそこがお家かと思ってたよ」

「それにしても、今回は陽香ちゃんの所に頼んでよかったよ」

「ありがとう。でもどうして?」

「陽香ちゃんのお父さんが優しかったし、色々と丁寧にしてくれたしね」

 他のお店を知らないから比べられないけれど、それでも親切なお店だと思う。

「ふふ、お父さんに伝えておくね。きっと喜ぶよ」

 

ピンポーン

 

 私達が陽香ちゃんと話しているとチャイムが鳴った。窓から見るとトラックがとまっている。

「家具が届いたみたい。結衣、部屋で置く場所の指示お願いできる?」

「任せて」

「あ、私も手伝うね」

 

「こんにちは。家具をお届けにまいりました」

「はい、そこの部屋へ入れてください。配置は中に居る人に聞いていただければ分かると思うので」

「分かりました。何から運びましょうか?」

「とりあえず机からお願いします」

 家具の量が結構あるからか男性が三人きていたので、運び込むのに思っていた程時間はかからなかった。

「ありがとうございました」

 最後に私が受領書に捺印すると配送業者の方達は帰って行った。

 

 その後、暫く三人で家具の位置をずらしたり、この前買った物を整理したりと、何でも屋の準備をしていると二時間程経っていた。

「一応これでオッケーかな」

「結構かかったね~」

「陽香ちゃんありがとう。手伝ってくれて助かったよ」

「私も楽しかったから気にしないで。それにしても、高そうな家具ばかりだね……」

「まあ、折角だしね。あ、良かったらご飯食べていかない? 手伝ってくれたし、遠慮はしなくていいよ」

「うーん、ならお言葉に甘えようかな」

「えっと、何が良いかな? ピザでも取ろうかなって思っていたんだけど……」

「良いと思うよ。私もピザは好きだし」

「それなら良かった。それじゃあ早速注文するね」

 オフィスに置いた新しい電話機を使って注文する。注文してから二十分程でピザが届いた。

 

 食後、かなり遅くなっていたから、少し休むと陽香ちゃんは帰った。私達はお風呂に入ってから二人でベッドに入っている。

「明日から楽しみだね」

「うん、お客さん……来てくれると良いね」

「初日から来るとは思っていないけれど、それでも期待しちゃうな~」

「そうだね、広告も入れたから……もしかしたら来てくれるかも……しれないね……」

 結衣の声が今にも寝そうになっている。

「明日からがんばろうね」

 結衣からは返事の代わりに寝息が返ってきた。

「おやすみ、結衣」

 そう言って私も目を閉じた。


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