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剣と魔法と何でも屋  作者: リース
第二章 リフィレス王国編
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第48話 完成

 昨夜も早々にベッドへ入った私達は窓から差し込む朝日で目を覚ました。身支度を整えて広間へ向かうとハンナさんが朝食の用意をしている。

「あっ、皆様おはようございます。昨夜はよくお休みになれましたか?」

「おはようございます。ぐっすりと眠れました」

「それは何よりです。すぐに朝食の支度が出来ますのでお掛けになってお待ちください」

 ハンナさんは一礼すると広間を出て行った。入れ違いにブルノさんが入って来て私達の向かいへ座る。

「既にお揃いでしたか。今朝はお早いのですね」

「はい。昨夜早く寝た分今日は早く目が覚めました」

「そうでしたか。本日はポンプというものが見られるのですよね。一体どのような物なのか今から楽しみです」

 少しするとハンナさんが料理を持ってきた。ブルノさんと私たちは談笑しながら食事をとり、食べ終えるとすぐに広場へ行くことにした。


「皆様、本日もよろしくお願いします」

 私たちが広場へ行くと今日もゴフルさん達は作業を始めていた。昨日作った部品を建物から広場へと運び出している。

「こちらこそよろしくお願いします。鉄管を待つ間にほかの部品を組み立てようと思うので、協力していただけますか」

 金属製の部品も鉄管以外は既に出来ている。

「結衣お姉ちゃん、今日も遊んでー」

 私とゴフルさんが話していると子供達が走ってきた。結衣が苦笑を浮かべる。

「結衣様、行ってらっしゃいませ」

「あはは……可愛いから良いんだけどね。それじゃあ行ってくるよ」

 結衣は微笑むシルヴィに見送られながら子供たちに引っ張られていった。

「すみません。毎日子供達の世話をお願いしてしまって……」

 ゴフルさんは申し訳なさそうにしている。

「いえ、結衣は子供が好きですからお気になさらないで下さい」

「そう言っていただけると助かります。ところでこれから組み上げるのですよね。私達は何をすればよろしいですか?」

「私とシルヴィの指示に従って部品を組み上げて欲しいのです。力仕事で申し訳ございませんがお願いできますか」

「勿論です。そんな事でしたらお任せ下さい」

 ゴフルさんが呼びかけると村の人達が集まってきた。

「ありがとうございます。シルヴィ、ポンプ本体の指示をお願いしてもいいかな?」

「ええ、こちらの図面通りで良いのですよね」

 シルヴィが私の書いた図面を取り出す。

「うん。鉄管を取り付けるところまでお願い」

「わかりました。すみません、何人か手を貸していただけませんか?」

 シルヴィは頷くと早速作業に取り掛かった。

「では、後の方は私とお願いします」

「はい。まずは何から始めればよろしいですか」

 私もゴフルさんと共に作業を始める。私が作るのはポンプの動力部だ。動作を確認しながら歯車を組み合わせていく。そして三時間程かかってようやく完成した。


「お疲れ様でした。それにしても不思議な機械ですね。随分と大きくなりましたが、横についている取っ手を回すのですか?」

 ゴフルさんが不思議そうに私の作った機械を眺めている。

「ええ、これを回すことでそこの穴から水が出てくるようになります」

「何とも信じ難い話ですが、完成が楽しみです」

「麗奈様、こちらも完成しました」

 私達が話しているとシルヴィが歩いてきた。

「ご苦労様。後は鉄管を待つだけだね」

 後は鉄管を待つだけとなった私達は結衣を呼んで少し早い昼食をとることにした。


「おや皆様、もう作業は終わったのですか?」

 私たちが広間へ入るとブルノさんが机の上に本を広げていた。

「とりあえず今組み上げられるところまでは終わりました。後は鉄管が出来るのを待つだけです」

「そうでしたか。午前中はお手伝いすることができずに申し訳ございませんでした。午後からは私も協力させていただきますので」

 そう言いながらブルノさんは本を片付ける。

「ありがとうございます。お気になさらないでください」

 

それから暫くして、私達が丁度昼食を食べ終えた頃ゴフルさんがやって来た。

「おや、お食事中でしたか。大変失礼いたしました」

 私達の前に置かれている食器を見てゴフルさんは頭を下げる。

「あ、いえ。今食べ終えたところです。えっと、鉄管が完成したのですか?」

「はい。丁度今広場へ運んでもらっています」

「わかりました。すぐに行きます」

「よろしくお願いします」

 ゴフルさんは一礼すると広間から出て行った。


「お待たせしました」

私達が準備を終えて広場へ向かうと既に鉄管が並べられていた。横には同じだけの鉄の棒も置かれている。

「おう、嬢ちゃん。随分と待たせちまったが、これで良いんだよな?」

「はい、ありがとうございます」

「それで、どうやってこいつらを繋げるんだい?」

 男性は興味津々といった様子で尋ねた。

「えっと、それではまず鉄管を一列に並べていただけますか」

「ん? ああ……。おい手伝ってくれ」

 男性は首を傾げながら村の人達と鉄管を並べていく。

「これで良いのか?」

「はい。後はお任せください」

「麗奈、どうやって繋げるの?」

 結衣も頭に疑問符を浮かべている。

「うん。圧接だよ」

「圧接!? そんな簡単にできるの?」

『我が魔力に内包されしものよ、我が意に従え』

 私が左手を前に突き出して詠唱すると一列に並べられた鉄管が浮き上がった。

『炎を司る聖霊よ、我が手に熱を宿せ』

 右手の指先に魔力を集中させる。

「結衣様、圧接とはなんですか?」

「うーん……なんて言えばいいのかな? 金属を思い切り押さえつけてくっつけることなんだけど……」

 鉄管の接合部に右手の人差し指を近付けると一瞬にして鉄が赤熱した。鉄管を左右から押さえつけるように魔力の流れを変え、そのまま全ての接合部を同様に溶接していく。

『解放せよ』

 全ての箇所を溶接し終えた後、鉄管を包んでいた魔力を解放させた。鉄管は鈍い音を立てて地面に落ちる。

「おおっ! こいつぁたまげた!」

 一本に繋がった鉄管を見て男性が驚きの声をあげた。

「これが圧接ですか……」

 シルヴィも感心した様子で地面に落ちた鉄管を見ている。

「後はこっちの棒だね」

 鉄管と同様に鉄の棒も溶接する。五十メートルを超える鉄管と鉄の棒が完成した。

「もうすぐポンプが完成するのですね」

 ゴフルさんは待ちきれないといった様子だ。

「はい。先ほど作ったものをこの鉄管と鉄の棒で繋げれば完成です」

『我が魔力に内包されしものよ、我が意に従え』

 再び従魔の魔法を使い鉄管の中に棒を通した。そして鉄の棒で動力部と汲み上げ部を繋ぐ。

「後はこれを井戸の中へ入れるだけです。シルヴィ、土壁と従地の魔法で井筒を作ってくれないかな」

「ええ、お任せください」

『土壁』

『大地の精よ、我が意に従え!』

 シルヴィが詠唱すると井戸の周りに綺麗な井筒が作られた。そこにゆっくりとポンプを下ろしていく。

「もう少しだけ狭く」

「これくらいでしょうか?」

 井筒の大きさを微調整し、その上にポンプの動力部をゆっくりとのせた。

「おお……完成ですか……?」

 ゴフルさんが恐る恐る尋ねる。

「はい。完成です!」

 私がそう言うと、一瞬間を置いて歓声があがった。

「お、おい! 嬢ちゃん、早く使って見せてくれよ!」

 男性が好奇心に目を輝かせている。

「それではゴフルさん、お願いできますか?」

 私がそういうとゴフルさんは一瞬悩んだ後、首を横に振った。

「いえ、ここはブルノさんにお願いしましょう」

 ゴフルさんに名前を呼ばれたブルノさんは驚愕の表情を浮かべる。

「いや、これは私よりゴフル村長、あなたが最初に試すべきだ」

 ブルノさんがそう言うと、ゴフルさんは再び首を横に振った。

「いえ、こちらの方々を呼んできていただいたのはブルノさんです。ここはブルノさん以外ありません」

 ゴフルさんの言葉に村の人達も賛同する。

「そこまで言われては断ることもできんな。麗奈さん、これはどのように使えばよいのでしょうか?」

 ブルノさんは少し恥ずかしそうにしながら井戸の横へ来ると私に尋ねた。

「横についている取っ手を回してください。最初は少し時間がかかりますが、暫く回していただければ水が出るはずです」

 ブルノさんは取っ手に手をかける。

「それを回してください」

 ブルノさんは頷くとゆっくりと回し始めた。

「最初は軽いと感じましたが、少しずつ重くなってくるのですね」

「大人の力で回せないことはないと思いますが、子供の力では厳しいと思います」

 それから暫くブルノさんが取っ手を回し続けていると少しだけ水が出た。そして次の瞬間勢いよく水が出始めた。

「おお! これは……」

 周りから先程をはるかに超える歓声が沸き起こる。

「信じられません。まさか本当に井戸が出来るとは……」

 ブルノさんの目にはうっすらと涙が浮かんでいる。

「麗奈、やったね!」

「うん。ありがとう」

「皆様、本当にありがとうございます! なんとお礼を申し上げてよいのか……」

 ゴフルさんは私の手を取り何度も感謝の言葉を述べる。

「いえ、お役にたてて何よりです」

「おお、そういえば大切なことを忘れるところでした! 皆様に報酬をお支払いしなくてはなりませんね。私の家まで来ていただけますか」

 私たちはゴフルさんに続いて広場のすぐ近くにある石造りの家へ向かう。家に入ると机とソファがあるだけの小さな部屋に案内された。

「どうぞお座りください」

 ゴフルさんは私達にソファへ座るよう促すと、紙とペンを持って向かい側に腰を下ろした。

「まずはこちらが五十ケリルです」

 ゴフルさんから小さな革袋を受け取る。

「ありがとうございます」

「そしてこちらが鉄鉱石の契約書になります」

 ゴフルさんはそう言いながら紙にペンを走らせる。

「待ってください」

 ゴフルさんが差し出した紙を見て私は驚いた。

「鉄鉱石が一割ではなく、二割になっています」

 私が尋ねるとゴフルさんは頷いた。

「はい。あれほどのものを作っていただきながら、さすがに一割では申し訳ございません。昨日村の者で話し合って決めました。どうか受け取ってください」

「いえ、当初の約束と異なります。受け取るわけには……」

「そんなことを仰らずに……。受け取っていただかないと困ります。ぜひともお受け取りください」

 ゴフルさんはそういうと深く頭を下げた。おそらくこのままいくら断っても無駄だろう。

「わかりました。有り難くいただきます」

「おお、受け取っていただけますか! ありがとうございます」

 ゴフルさんからペンを受け取り契約書の下に名前を書いた。

「さすがに今すぐ持ち帰っていただくわけにもいきませんから、必要になった際に言っていただければ、お運びいたします。いつでも遠慮なく仰ってください」

「何から何までありがとうございます」

 どうやって持ち帰ろうか悩んでいたのでこの申し出はとても有り難かった。


 翌朝、リフランへ帰ろうとする私達を村の人達が総出で見送ってくれた。

「皆様、本当にありがとうございました」

「嬢ちゃん達、また来てくれよ」

「結衣お姉ちゃん、また遊んでねー」

 村の人達に何度も挨拶をし、用意してもらった馬車へ乗り込む。馬車はゆっくりと動き出し、村の人達の声が小さくなっていった。

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