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剣と魔法と何でも屋  作者: リース
第二章 リフィレス王国編
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第47話 製作

 翌朝、私達は朝食を済ませた後、図面を持って広場で待っているゴフルさんのもとへ行くことにした。

「ところで、昨夜図面を見せていただいた限りでは、そのポンプというものは水を地下から押し上げるのですよね?」

 広場へ向かう途中、シルヴィが顎に手を当てて尋ねる。

「そうだよ」

 私が頷くとシルヴィは首を傾げた。

「その場合、井戸の奥から地上までの水ですから、相当な量の水を持ちあげる必要がありますよね。そんなことが可能なのでしょうか?」

 シルヴィの疑問はもっともだ。細いパイプを使うとしても持ちあげる水の重さは百キロを超えることになる。常人では到底不可能だろう。

「その点は心配ないよ。もう一つの図面はまだ見て無かった? とりあえず重さについては大丈夫だよ」

「そうですか。それなら良いのですが……」

 シルヴィは何処か腑に落ちない様子だ。

「おはようございます」

 私達が広場へ行くとゴフルさんと村の人達が待っていた。

「おはようございます。お待たせして申し訳ございません」

「いえ、本日はよろしくお願いします」

「はい。図面を書いて来たので、目を通していただけますか」

 結衣が図面の束をゴフルさんへ渡す。

「おお! これは凄そうですね。――何が何やらさっぱりですが」

 図面を見たゴフルさんが驚嘆している。

「一番後ろの一枚を見ていただけますか」

 ゴフルさんが図面の束をめくる。

「これですね。これは……筒ですか? あといくつか小さなものも書かれていますが……」

「はい。その紙に書かれている物を鉄で作っていただきたいのです」

「村長、ちょっと貸してくれねえか?」

 ゴフルさんの後ろに居た男性が図面を受け取った。それを見て困ったような表情を浮かべる。

「嬢ちゃん、俺たちにこれを作るのは無理だぜ……。こっちの小っせえ奴は何とかなるけどよ、この鉄管五十メートル以上あるじゃねえか。こんな長え物は無理だ。短えやつを繋げるなら何とかできねえこともねえが、一本と書いてあるじゃねえか。こんなのは到底作れそうにねえ」

 男性は私へ図面を見せながら鉄管の箇所を指さす。

「はい。それについては短い物をいくつも作っていただければ結構です」

 私がそう言うと男性は怪訝な表情を浮かべた。

「短え物って、結局繋げるんじゃねえのか?」

「ええ、短い物を作っていただければ、繋げるのは私達がします」

 鉄を繋げる方法については昨夜リニアスから教わっている。

「嬢ちゃん達なら綺麗に繋げられるってのか……分かった。それなら何とかなるだろう。鉄棒も同じ様に作ればいいんだな」

 男性は納得いかない様子で頷いた。

「よろしくお願いします。ゴフルさん、後の部品には出来る限り乾燥した木材で水に強い物を使っていただけませんか」

「なるほど……それでしたら家を修復するのに使う木があります。それで作りましょう」

「ありがとうございます。どれくらいかかりそうですか」

 私が尋ねるとゴフルさんは先程の男性を見た。

「なんせこれだけの鉄管だ。皆で作っても三日はかかるぜ」

「後の部品については村の者で協力すれば明日にでも出来ると思います」

「分かりました。よろしくお願いします。私達にも手伝えることがあれば言ってください」

 それから急激に村の中が慌ただしくなった。ゴフルさんや男性が言っていた通り、村の人達が総出で作業に取り掛かっている。私達も遊んでいるわけにはいかず、村の人達の様子を見ていると結衣が女性に呼ばれ子供達の面倒見を頼まれた。泣き喚く子に悪戦苦闘しながら子供と遊んでいる。私とシルヴィも部品作りを手伝っているとあっという間に辺りは暗くなっていた。


「今日はこれくらいにしておきましょう。暗くなってきましたし、続きは明日ということで」

 ゴフルさんの合図で村の人達が作業を止める。後半はぐったりとしていた結衣が安堵の表情を浮かべた。私達はゴフルさんに挨拶をしてから結衣のもとへ向かう。

「お疲れ様。結衣」

「あ、ありがとう。本当に疲れたよ……」

 子供達と別れた結衣が溜め息をこぼした。


 私達がブルノさんの家へ戻り広間へ入ると既に夕食の用意がされていた。ブルノさんは既に座っている。

「皆様、お疲れ様でした。本日は私用で手伝うことが出来ず、申し訳ございませんでした」

 ブルノさんが座るように促してくれる。

「いえ、お気になさらないでください」

 私達が座るとハンナさんが料理を運んできてくれた。

「それにしても結衣様は大人気でしたね」

 スープに口をつけながらシルヴィが笑う。

「あはは……。皆ちょっと元気すぎたかな」

「そんなことがありましたか。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。クノム村の子供達は元気が取り得でして」

 ブルノさんは謝罪しながらも口元には笑みが浮かんでいる。

「いえ、元気なのは良いことですから」

「そう言っていただけると有り難いです」

 それから暫く談笑しながら夕食を食べ、食後少し休んでからお風呂へ入った。今日一日で疲れていた私達はそのまま部屋へ戻りベッドへ入る。

「やはり結衣様はお疲れだったようですね」

「ふふ、この様子だと明日も大変かな」

 ベッドへ入ってすぐに聞こえてきた結衣の寝息を子守唄にして私達は目を閉じた。


 翌日、私達がブルノさんと広場へ向かうと、既に村の人達は作業を始めていた。

「あっ、結衣お姉ちゃんだ!」

 結衣の姿を見つけた子供たちが駆け寄ってくる。

「あはは……それじゃあ行ってくるね」

 結衣は苦笑を浮かべながら子供たちに連れていかれた。

「本当に大人気ですね……」

 ブルノさんも思わず苦笑している。

「ゴフルさん、おはようございます」

 村の人達と木材を切っていたゴフルさんに声をかける。

「おお、皆様おはようございます。今日はブルノさんもご一緒なのですね」

「ああ、昨日はすまなかった。今日は私も手伝える。何でも言ってくれ」

「ありがとうございます。しかしブルノさんにこのような力仕事をお願いするわけにはいきません。今、私が此処にかかりっきりなので、向こうで作業をしている人の様子を見ていただけますか」

「おお、そんなことで良いなら任せてくれ」

 ブルノさんは頷くとすぐに歩いて行った。その後、私とシルヴィも昨日と同様に部品の作製を手伝い、夕方頃には木製の部品がすべて完成した。


「皆ご苦労様。後は鉄管が完成するのを待つだけです。今日はゆっくりと休んでください」

 ゴフルさんが村の人達を労い、皆は帰っていった。結衣も相変わらず疲れた様子で歩いて来る。

「お疲れ様」

 結衣は何も言わず目で疲れを訴えかけると私に抱きついてきた。

「今日は一段とお疲れのようですね」

 私に身体を預け完全に脱力しきっている結衣の様子を見てシルヴィが笑う。

「わ、笑い事じゃないよ。本当に疲れたんだから……。と結衣は言いたそうだよ?」

 私が代弁すると結衣が頷いた。

「ふふふ、すみません」

 それでも笑うシルヴィを見て結衣は頬を膨らませる。

「とりあえず戻ろうか」

 相変わらず脱力している結衣をおんぶして、私達はブルノさんの家に戻ることにした。

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